みのる選:2019年度
俳句 | 作者 |
歓迎の驢馬の絶叫牧うらら | うつぎ |
枯蓮の浄土や日輪池に映ゆ | うつぎ |
枯蓮柵に萼を預けけり | うつぎ |
古民家の落葉時雨の大樹かな | 小袖 |
この実なに皆顔寄せて秋山路 | 小袖 |
自家野菜盛る麹蓋枯木宿 | せいじ |
軒高く積まれし年木絵柄めく | せいじ |
丹精の手作り野菜湯治宿 | たか子 |
つぶらなる驢馬の瞳に紅葉山 | たか子 |
石臼も鋤もアートや枯木宿 | 菜々 |
納め句座季語づくしなる農料理 | 菜々 |
百態の枯蓮ささへ合ふもあり | はく子 |
冬うらら驢馬の睫毛の長きこと | はく子 |
枯野原見渡す限り山襖 | ぽんこ |
枯蓮の池の日輪浄土見よ | ぽんこ |
冬囲菜畑の畝整然と | わかば |
何処からも見えてセコイア黄落す | わかば |
けんけんぱめく踏石や散紅葉 | こすもす |
一本の浮木に異夢や番鴨 | よう子 |
農園の迷路めくなり落葉道 | よし子 |
(杉・五兵衛農園 参加者 14名)
俳句 | 作者 |
渡月橋水かげろふす小春かな | 明日香 |
苔庭の起伏へ燦と紅葉影 | 明日香 |
苔庭へ日の斑踊らす風紅葉 | 明日香 |
去来墓這ひつくばつて詣でけり | 明日香 |
嵯峨野径屋敷紅葉が席巻す | 明日香 |
落柿舎のつくばひ埋む柿落葉 | 明日香 |
鵙高音去来の墓にぬかづけば | 菜々 |
小倉山かたかげりして薄紅葉 | 菜々 |
落柿舎に指折りをれば鵙高音 | 菜々 |
野々宮へ小春溢るる竹の径 | 菜々 |
祇王寺の紅葉に透きて空蒼し | うつぎ |
嵐峡の大堰小堰水の秋 | うつぎ |
藤の実の瓔珞と垂る寄せ仏 | うつぎ |
縁に座し小春の日差し目に眩し | 素秀 |
あだし野の露に濡れたる無縁仏 | 素秀 |
枯山に動くともなき雲の影 | もとこ |
落柿舎の茅葺屋根に柿の天 | もとこ |
薄紅葉祇王寺の庭一穢なし | よう子 |
尼寺の庭の一隅石蕗黄なり | よう子 |
からうじて去来と読めし碑身にぞ入む | よし子 |
踏みまどふ嵯峨野の径の落葉かな | よし子 |
落柿舎の蓑笠にさす冬日かな | 和子 |
天高く雲ひとつ揚げ小倉山 | 和子 |
竹春の小径を縫ひて車夫駈くる | たか子 |
(嵯峨野祇王寺、落柿舎 参加者 12名)
俳句 | 作者 |
竹林の何処ともなく添水打つ | うつぎ |
掬はれて馬穴狭しと源五郎 | うつぎ |
色変へぬ州浜の松の男ぶり | うつぎ |
太陽の塔を遥かに鳥渡る | うつぎ |
暦日の州浜の松や天高し | 菜々 |
曼珠沙華昼なほ暗き藪の道 | 菜々 |
風さやか州浜をまたぐ橋半ば | 菜々 |
薄もみぢ明りに園の径めぐる | はく子 |
竹林の秀のささゆれて小鳥来る | はく子 |
秋惜しむ音色を異に作り滝 | はく子 |
百幹に明るき日射す竹の春 | わかば |
喬木の奈落の小径昼の虫 | わかば |
泉石の水面へかざす薄紅葉 | わかば |
モノレール秋の中空行くごとし | たか子 |
しおからのへの字に不動杭頭 | たか子 |
蝉の殻幹のあんなに高きまで | なおこ |
庭園の小径を分かつ竹の春 | なおこ |
竹春の径ジョギングす部活女子 | もとこ |
列なして大樹に縋る蝉の殻 | もとこ |
行厨やもみづる藤の棚の下 | こすもす |
未草水の舞台に踊るごと | 小袖 |
要なす州浜の松の色変へず | ぽんこ |
滝四つ和して高鳴る渓涼し | 満天 |
(万博公園大阪日本民族館 参加者 13名)
俳句 | 作者 |
灯火親し子規の句集を繙けり | わかば |
里山の棚田一斉落し水 | わかば |
何処までも続く木道草紅葉 | わかば |
厨事済ませて灯火親しみぬ | わかば |
馬の背を行く人影や秋の雲 | わかば |
磊々を洗ふ水音や風は秋 | わかば |
見送りは此処まででよし彼岸花 | うつぎ |
産土の笛の音聞こゆ落し水 | うつぎ |
風を切るペダルに力湖の秋 | うつぎ |
灯火親し書架より抜きし唐詩選 | うつぎ |
秋燕標高千の方位盤 | うつぎ |
電線に音符並びす秋燕 | こすもす |
生まれ月そして一番好きな秋 | こすもす |
愛用のスマホで灯火親しみぬ | こすもす |
捨て舟に絡む河原の草紅葉 | こすもす |
どこまでも青海原や島の秋 | もとこ |
髪解けば潮の香にほふ残暑かな | もとこ |
登校の声賑やかし秋の雲 | もとこ |
爽やかやシルバーヘアー靡かせて | もとこ |
六道の鐘が鳴る径草紅葉 | ぽんこ |
爽やかや山湖の風に身を委ね | ぽんこ |
逆立てる仁王の髪や秋暑し | ぽんこ |
鉄塔の高きをよぎる秋の雲 | せいじ |
せせらぎも葉擦れの音も秋の声 | せいじ |
老い二人灯火親しむ聖書かな | せいじ |
石舞台古墳際立て彼岸花 | 小袖 |
龍淵に潜む水面に蒼き風 | 素秀 |
(席題句会:袋回し 参加者10名)
俳句 | 作者 |
大断層絡みつきたる蔦涼し | こすもす |
滝音に会話消さるる昼餉かな | こすもす |
梅雨の滝山をも揺らすかと激つ | こすもす |
碧潭の貯水池覆ふ青楓 | こすもす |
存問のごと岨よぎる瑠璃蜥蜴 | こすもす |
睦まじく川鵜の潜るダム湖かな | こすもす |
深山道涼し樹間に湖光る | せいじ |
落ちてなほ怒涛逆巻く梅雨の滝 | せいじ |
滝しぶく大樹のかたへ苔の花 | せいじ |
木洩れ日に瀬波煌めく渓涼し | せいじ |
弓なりに反る堰堤に蔦茂る | せいじ |
木下闇潜りて登る岨の径 | わかば |
滝茶屋の百年といふ古びかな | わかば |
滝小径展け眼下に港町 | わかば |
ダム湖守る人と会釈す橋涼し | たか子 |
蝋涙も飛沫まみれや滝不動 | たか子 |
滝風に木五倍子の花の揺れやまず | はく子 |
劈ける滝音涼し風もまた | はく子 |
ゴンドラの行き交ふ峡の空涼し | ぽんこ |
滴りに常濡れの岨な滑りそ | ぽんこ |
滝の道先導するは瑠璃蜥蜴 | もとこ |
荒滝に憤怒の眼滝不動 | もとこ |
床板に音響くごと瀧見茶屋 | よう子 |
漣に風あるを知るダム涼し | よう子 |
(布引渓流の道 参加者9名)
俳句 | 作者 |
白滝のごとくに垂るる麝香藤 | ぽんこ |
全身に藤を纏ひし大樹かな | ぽんこ |
倒木の洞に根づきて著莪の花 | ぽんこ |
紫の藤泉水を染めにけり | ぽんこ |
藤房に虻の羽音の耐ゆるなし | わかば |
喬木の森の一隅著莪明り | わかば |
万葉碑訪ねつめぐる藤の園 | わかば |
小流れを覆ひ綾なす棚の藤 | わかば |
暗き森抜ければぱつと著莪明り | 明日香 |
降らずみにそよとも揺れぬ藤の黙 | 明日香 |
落椿苔の籬に穢となさず | 明日香 |
緑さす直哉旧居の格子窓 | せいじ |
万葉の苑生の藤を堪能す | せいじ |
藤纏ひ立往生のごと大樹 | せいじ |
若葉影池にせり出す大舞台 | はく子 |
惜春や直哉旧居の陶椅子に | はく子 |
行厨の万葉苑いま百千鳥 | はく子 |
飛火野に玉座の大樹若葉光 | 満天 |
喬木をのぼりつめたる懸り藤 | 満天 |
直哉邸書斎の窓に若葉光 | 満天 |
春惜しむ直哉旧居の庭に座し | もとこ |
遠足のざわめき過る禰宜の道 | もとこ |
神の杜そぞろ巡りて余花にあふ | もとこ |
麦の穂の万葉苑の風生まる | うつぎ |
蔀戸に射し込む庭の新樹光 | うつぎ |
古都めぐる下の禰宜道竹の秋 | よう子 |
藤幾多色香に酔ひつ巡りけり | よう子 |
一花揺れ百花の揺るる棚の藤 | 宏虎 |
新緑の古都に学生溢れけり | みきえ |
(萬葉植物園・直哉旧居 参加者17名)
俳句 | 作者 |
八重椿十余の塔を覆ひけり | たか子 |
青き踏む草の名問ひつうべなひつ | たか子 |
ぽんぽん舟来れば手をふる花堤 | たか子 |
奥宮にわが春愁をうべなはん | たか子 |
広庭に趣味の奇岩や春館 | たか子 |
四つ目垣はみだしたわわ花馬酔木 | たか子 |
異な虫の浮沈してをる春の池 | せいじ |
おどけ顔なる石人へ椿落つ | せいじ |
と見かう見して画架立つる花堤 | せいじ |
草萌に白亜のグリンチャペルかな | せいじ |
亡き夫に似し人の行く花堤 | きづな |
転舵して岸へ寄せたる花見船 | きづな |
草萌ゆる苑の小径に丁目石 | 菜々 |
八方に高層ビルや花堤 | 菜々 |
大川を楽ならしゆく花見舟 | はく子 |
青空へ舞ひ翔たんとす花こぶし | はく子 |
ゆつたりと影曳く鯉や水温む | わかば |
水亭の水面へなだれ雪柳 | わかば |
春陰の石は風神雷神と | 宏虎 |
囀の庭を逍遥吟行す | ぽんこ |
春光を背に画架立つる池塘かな | 満天 |
縁結びてふ橋渡る春日傘 | もとこ |
(太閤園、藤田邸跡公園 参加者12名)