みのる選:2022年度
俳句 | 作者 |
茶の花や利休自刃の供養塔 | かかし |
凩やカリオンの音の遥かより | 豊実 |
凩に旅の地酒を酌む夜かな | みづき |
店先に茶の花咲かせ宇治の茶舗 | はく子 |
尼寺の垣根めぐらすお茶の花 | みづき |
茶の花やここにも家があった筈 | うつぎ |
凩や着地の鴉勇み足 | かかし |
凩や夕日呑み込む河口かな | 素秀 |
凩や微動だにせぬ関門橋 | せいじ |
山門を潜れば左右にお茶の花 | こすもす |
凩や攫はれさうに稚児一人 | うつぎ |
凩に鞭のやうなる柳の枝 | あひる |
大寺へと続く茶の花垣の道 | はく子 |
凩に足場の揺れのただならず | みづき |
凩と回転ドアを潜りけり | 満天 |
茶の花や宇治十帖をめぐりては | 満天 |
凩や童話のごとく襟を詰め | 明日香 |
凩や路面電車の駅に佇つ | 豊実 |
木枯しの谷底を行く一両車 | うつぎ |
木枯に泳ぐボールを打つテニス | ぽんこ |
茶の花の谷戸に残れる昼の月 | 宏虎 |
俳句 | 作者 |
芋の葉を乱れ打ちして通り雨 | 素秀 |
芋の葉に隠れて並ぶ無縁墓 | 素秀 |
芋の葉のそよぐほとりに道祖神 | もとこ |
尾ひれつく人の噂のうそ寒き | もとこ |
御祈祷の順待つまでのうそ寒し | 豊実 |
掴みたる箸より逃ぐる子芋かな | ぽんこ |
理科室の人体模型うそ寒し | 豊実 |
文字薄れ読めぬ表札うそ寒し | 明日香 |
裏方に徹し皮むく芋煮会 | なつき |
うそ寒や耕作放棄増え続け | 明日香 |
芋の葉の風をいなして相打たず | せいじ |
子ら去にて空らの寝室うそ寒し | あひる |
八つ頭迷ふ刃の入れどころ | みづき |
あひまひにうつ相づちのうそ寒し | はく子 |
うそ寒し間分にのこりし手鑿跡 | かかし |
うそ寒し強権跋扈せる世界 | せいじ |
うそ寒や不審メールの絶ゆるなし | 満天 |
落ちさうで落ちぬ雨粒芋広葉 | 満天 |
子らたかり見て喝采や芋水車 | よう子 |
うそ寒や日暮の鐘の間遠より | わかば |
うそ寒や動く歩道を駆ける人 | かかし |
うそ寒し老いて身長縮むとは | 明日香 |
うそ寒し休耕田にブルドーザー | よう子 |
芋の葉の雨滴ころころ七変化 | こすもす |
うそ寒や真夜をつんざく救急車 | 豊実 |
消えさうに瞬く星やうそ寒し | 智恵子 |
職引きて自産自消の芋煮汁 | なつき |
俳句 | 作者 |
澄む水の底石に日のとどきけり | 満天 |
水澄むや砂舞ひ上がる外れ銛 | 隆松 |
神の島鎮めて湖水澄めりけり | はく子 |
奈良町のいづこも柿のたわわなる | みづき |
目潰しの朝日をはねて水澄める | 豊実 |
一と品はお裾分けなる柿膾 | わかば |
水澄むや老船頭の土地自慢 | たか子 |
社家町をめぐる神水澄めりけり | もとこ |
柿熟るる皇子落ち延びし峡深く | うつぎ |
青空に散りばめしごと山の柿 | あひる |
行く雲を湖面に映し水澄める | わかば |
洗ひ場の戸毎の水の澄みにけり | はく子 |
夕映をはじく山家の柿簾 | かかし |
古伊万里の鉢に山盛り柿サラダ | もとこ |
山峡に煙一筋柿たわわ | うつぎ |
生り放題落ち放題や山の柿 | うつぎ |
過疎村に残る大家の木守柿 | ぽんこ |
空の青引き寄せ水の澄みませり | 明日香 |
澄む川を遡りゆく流れ雲 | 隆松 |
茜雲散らして湖の澄めりけり | 素秀 |
山麓の里の棚田の水澄める | 満天 |
澄む川の水草隠れに稚魚の群 | ぽんこ |
澄む水にゆるり向き変ふ錦鯉 | 豊実 |
川底の岩泰然と水澄める | 明日香 |
兄まねてぼくと言ふ女児柿をもぐ | よう子 |
柿たわわなる大和路を巡拝す | 宏虎 |
澄む水を一閃したる鳥の影 | 素秀 |
俳句 | 作者 |
波うちて通路掃きゐる風の萩 | こすもす |
参拝の裳裾に触るる風の萩 | 満天 |
萩こぼる表参道石畳 | はく子 |
終戦日不戦の誓ひな忘れそ | 明日香 |
グアム知らず祖父も知らずや終戦日 | あひる |
写経いま萩咲く庭に目を休め | みづき |
心字池点描のごとこぼれ萩 | わかば |
蹲も筧も萩の屑まみれ | うつぎ |
紋幕の寺門潜れば萩の風 | せいじ |
空木箱出しては祖母の終戦日 | もとこ |
道しるべ隠さふ萩の花ざかり | 豊実 |
終戦日語る白寿の紙芝居 | かかし |
ウォーキング足を延ばして萩の道 | 隆松 |
終戦日知らぬといふ子インタビュー | よう子 |
結界を超えゆく風のこぼれ萩 | なつき |
萩の枝神籤重しと垂れにけり | ぽんこ |
幸せといふ老い母の終戦日 | せいじ |
すいとんがグルメともなり終戦日 | もとこ |
手に熱き夕刊届く終戦日 | みづき |
昼餉の箸置きて黙祷終戦日 | こすもす |
庭隅に吹き溜まりたる萩の塵 | うつぎ |
足早の法衣の裾に萩縺れ | よう子 |
抱き寄せて抱き寄せてまた萩括る | うつぎ |
こぼれ萩瓶の目高に小突かるる | うつぎ |
戦争は地獄と洩らす終戦日 | 智恵子 |
センターライン歩く鴉や終戦日 | なつき |
俳句 | 作者 |
古竈棚に大きな渋団扇 | たか子 |
盛夏でもダッシュ百段部活生 | かかし |
状差しの上段団扇の定位置に | 素秀 |
透きし絵は五重の塔や奈良団扇 | こすもす |
焼鳥の煤汚れせし渋団扇 | はく子 |
太陽の塔は真夏の雲背負ふ | よう子 |
寿司のシャリ煽ぐ年期の古団扇 | もとこ |
幼な日の寝しなの祖母の団扇風 | ぽんこ |
広島を思ふ真夏の空ま青 | わかば |
鉄骨のビル組み上がる盛夏かな | 豊実 |
ジーンズのからりと乾く盛夏かな | 明日香 |
裾たくり帯に団扇や辻回し | ふさこ |
入院のベッドに孫の手と団扇 | うつぎ |
団扇の手止まると見れば鼾かな | うつぎ |
夏旺ん大泣きの子を持て余す | 満天 |
源氏名の団扇を壁に京割烹 | もとこ |
夏盛ん掘り起こされし不発弾 | うつぎ |
ネックレス肌に張りつく盛夏かな | なつき |
北斎の怒涛の団扇よりの風 | あひる |
俳句 | 作者 |
黒南風に尖る明石の門波かな | 宏虎 |
羅漢様蟻登らせて笑まひけり | はく子 |
大物の玉虫曳きて蟻の兵 | うつぎ |
黒南風や昇龍めける磯馴松 | なつき |
黒南風にたじろぎもせぬ鬼瓦 | はく子 |
蟻の列水一擲に乱れけり | 明日香 |
黒南風や鬱々として沖暗し | わかば |
蟻のぼる国宝楼門大柱 | よし子 |
黒南風や砲台跡のある浜辺 | わかば |
餌の逃げて四分五裂す蟻の列 | せいじ |
正体のわからぬ程に蟻たかる | 明日香 |
黒南風に軍艦島のゆるぎなし | はく子 |
迷子めく動きや塀の上の蟻 | あひる |
蟻の列関守石に関はらず | はく子 |
手帚を逃れ蟻這ふ三和土かな | よう子 |
黒南風や淀の川波尖らせて | はく子 |
黒南風や不眠続きに呆けけり | もとこ |
廃線の鉄路を過ぎる蟻の道 | 智恵子 |
蟻の列尽きて獲物を遠巻きに | ぽんこ |
黒南風や岬の草の狂ほしく | 素秀 |
蟻の列軍靴の音思ひけり | うつぎ |
黒南風の町を馳せゆく救急車 | 満天 |
黒南風やスローペースとなる山路 | せいじ |
行き先のうやむやとなり蟻の列 | あひる |
黒南風を吸込む河馬の大あくび | 素秀 |
俳句 | 作者 |
大原女の茶屋に宿りし緑雨かな | 智恵子 |
茅屋根を洩るる緑雨の玉雫 | なつき |
緑雨なるセコイア並木艶増せる | 隆松 |
大樹なき尼寺の庭花卯木 | なつき |
家事終へて安らぐ午后の緑雨かな | あひる |
川床の卓片されてより緑雨来る | もとこ |
卯の花の峠を越えて薬売 | 素秀 |
仔牛の眼瞬く牧の緑雨かな | なつき |
修道院緑雨の森に訪ねけり | あひる |
大水車回す卯の花腐しかな | 宏虎 |
顔上げて緑雨を受ける露天風呂 | 素秀 |
水路閣レンガに染みる緑雨かな | よう子 |
門川に卯の花散らす垣根かな | はく子 |
モデル振り向いて緑雨の渡月橋 | かかし |
本堂の広縁ぬらす緑雨かな | せいじ |
玻璃窓に灯籠歪む緑雨かな | よう子 |
白々と卯の花浮かぶ夕べかな | 満天 |
洛北の緑雨に聳ゆ鷹峯 | もとこ |
眼福と思ふ緑雨の山の宿 | ぽんこ |
そこここに卯の花白き山路かな | 明日香 |
緑雨やみ靄に隠るる峡の郷 | ふさこ |
塔頭の鎖樋落つ緑雨かな | わかば |
地境のうつぎに両家和みけり | あひる |
俳句 | 作者 |
三線の島唄ゆるり春深し | もとこ |
春深し園に散らばる豆画伯 | 智恵子 |
しゃぼん玉吹く表情の母似なる | よう子 |
犬小屋の主いぶかしむしゃぼん玉 | なつき |
夫と茶を汲みて二人や春深む | 更紗 |
四方の山色濃くなりて春深し | 満天 |
壊し屋は疲れ知らずよしゃぼん玉 | なつき |
遺りたるCT画像春深し | うつぎ |
春深し母の喃語に耳を寄せ | 更紗 |
二合飯余し二人の春更ける | 素秀 |
しゃぼん玉ぱくつく犬の鼻に爆ぜ | 智恵子 |
春深し欠伸噛みしめ法話聴く | ふさこ |
病窓のいびつな空や春深む | たか子 |
しゃぼん玉垣根を越えて隣より | うつぎ |
ママの留守の子守役なるしゃぼん玉 | こすもす |
春深むチェロの音朝のラジオより | はく子 |
幼な手を抜けて空へとシャボン玉 | みづき |
俳句 | 作者 |
食初めの子を睨みつけ桜鯛 | うつぎ |
糶台に尾を跳ねやまぬ桜鯛 | うつぎ |
霾やタクラマカンの砂かしら | よし子 |
海越えて黄砂日本の土となる | よう子 |
霾るや音はすれども機影見ず | 隆松 |
舟盛りに尾頭ぴくとさくら鯛 | やよい |
つちふりて大和三山なきごとし | 明日香 |
風葬の国を越えきし黄砂かな | 素秀 |
門出の子祝ふ大きな桜鯛 | かかし |
桜鯛跳ねて糶値をあげにけり | わかば |
右近像ま向く方より黄砂来る | よう子 |
ワイパーが黄砂の窓をくり抜きぬ | なつき |
模糊として沖の巨船や黄砂降る | わかば |
そんな目で見ないでをくれ桜鯛 | 隆松 |
桜鯛触れなば跳ねん魚の棚 | 明日香 |
石人の顔は哀しげ黄砂降る | うつぎ |
大渦にもまれて育ちし桜鯛 | 素秀 |
大阪城黄色に染めて黄砂来る | ぽんこ |
霾れる夕べの街のよそよそし | はく子 |
兜煮の目玉が睨む桜鯛 | 宏虎 |
紀ノ川の長き鉄橋黄砂降る | よう子 |
つちふるや砂漠の民を思ひけり | もとこ |
卒業を祝うてつつく桜鯛 | せいじ |
足早に下る尾根道霾晦 | 豊実 |
掲げるは優勝力士桜鯛 | 満天 |
俳句 | 作者 |
力込め二礼二拍手冴返る | うつぎ |
円空仏裂けたる木目冴返る | かかし |
父母眠る故郷の山の花辛夷 | かかし |
玻璃越しに星空見えて冴返る | こすもす |
長谷寺の登廊ことに冴返る | 明日香 |
花辛夷佇むごとし湖畔駅 | みづき |
食い渋る鮒はまだ底冴返る | 豊実 |
道連れは己が影だけ冴返る | うつぎ |
かのネオン一と文字点かず冴返る | 宏虎 |
シャッターに謝辞の貼紙冴返る | みづき |
公園に子らの声満ち花辛夷 | 隆松 |
冴え返る畳廊下の大書院 | やよい |
靴先の感覚失せて冴え返る | ぽんこ |
なほ続く籠りの日々や冴え返る | やよい |
学び舎に残る一灯冴返る | 満天 |
峡空へ祈る容や花辛夷 | 明日香 |
花辛夷いまも咲き継ぎ旧校舎 | なつき |
冴返る互ひの思ひすれ違ひ | もとこ |
休みては延ばす杖の歩花こぶし | やよい |
一穢なく晴れたる空へ花辛夷 | 素秀 |
冴返る突然に訃の知らせ来て | わかば |
片頬を夕日に染めし辛夷の芽 | うつぎ |
残雪と見紛ふ比良の花辛夷 | せいじ |
おみくじを結びしごとき幣辛夷 | せいじ |
俳句 | 作者 |
戸締まりの触れしもの皆底冷えて | みづき |
眠られぬ夜行列車や蜜柑食ぶ | わかば |
手触りで甘み見分くる蜜柑かな | 豊実 |
箱みかん六人家族だつた頃 | 明日香 |
底冷えの部屋に遺影の父母悼む | なつき |
日表の色の宜しきみかんもぐ | はく子 |
底冷えの夜明けの道をペダル漕ぐ | ぽんこ |
底冷えの鍵穴探るもどかしさ | たか子 |
底冷えの日や天国と長風呂に | 満天 |
底冷えの京の小路を人力車 | せいじ |
婦人部のバスツアーなる蜜柑狩 | よう子 |
痩せし夫底冷えを言ひ起き来たり | やよい |
みかん山生涯継がず父の逝く | やよい |
底冷や地団駄踏んでバスを待つ | うつぎ |
底冷えの闇に鴉の遠鳴きす | 素秀 |
焼き蜜柑安眠剤といひつべし | 智恵子 |
嫁してより此処がふるさと蜜柑剥く | ひのと |
里の灯の疎らとなりて底冷えす | こすもす |
血まみれの漁港の土間の底冷す | ひのと |
鈴生りの蜜柑畑に空真青 | かかし |
蜜柑三つ入れ鈍行の旅鞄 | うつぎ |
底冷えす廊下の奥の離れの間 | 豊実 |
花びらの形に蜜柑むきにけり | 素秀 |
底冷の待合席に大火鉢 | わかば |
山盛りに蜜柑積まれて無人店 | 明日香 |
底冷えの堂に髪立つ伐折羅像 | もとこ |
底冷えの禅の廊下や塵を見ず | 宏虎 |
団欒の昭和懐かし蜜柑むく | もとこ |
底冷えの闇にさぐりし鍵の穴 | こすもす |
湯ほてりのほっぺに蜜柑あてにけり | 小袖 |
俳句 | 作者 |
九条葱たつぷり入れて鍋うどん | わかば |
コロナ禍の故郷遠し冬銀河 | 満天 |
就農は五年目と葱くれにけり | 素秀 |
山盛りに葱ラーメンや農家カフェ | かかし |
庭師らの弁当に出す根深汁 | うつぎ |
藁屋根の散らばる谷戸の冬銀河 | 隆松 |
好物の葱焼き供へ夫偲ぶ | はく子 |
手作りの葱ぶら下げて友来たる | こすもす |
根深葱頭でてをるエコバッグ | なおこ |
風邪の吾に葱たつぷりの鍋料理 | せいじ |
書淫の目休ませてをる冬銀河 | 小袖 |
吾も星となる日のあらむ冬銀河 | よう子 |
葱なくて代用品の見つからず | うつぎ |
薬味とは思へぬほどに葱を乗せ | 明日香 |
下宿屋の小さき窓にも冬銀河 | せいじ |
葱きざむ夫の包丁リズム良し | もとこ |
掘りたての土付き葱のお裾わけ | 豊実 |
子には子のそれぞれの夢冬銀河 | もとこ |
冬銀河一つは夫の星ならむ | みづき |
カーテンは閉めずにをかむ冬銀河 | こすもす |
父のこと遠い記憶や冬銀河 | わかば |
点滅の飛機の紛るる冬銀河 | 素秀 |
水平線へ垂るる離島の冬銀河 | 素秀 |
愛犬の星はどのへん冬銀河 | ぽんこ |
大原の入り日に染まる葱畑 | みづき |
厄神道日向の葱の青々と | 宏虎 |
父母の星あひ寄り添へる冬銀河 | なつき |
冬銀河ジョバンニの旅思ひけり | もとこ |
冬銀河郷関出でて半世紀 | 小袖 |
指差して吾妹と仰ぐ冬銀河 | 智恵子 |
つつかけで夕餉の葱を庭に引く | なつき |
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