みのる選:2023年12月度
2023年12月29日 | |
古井戸に注連飾らるる旧家かな | 澄子 |
玻璃磨く吾を抱擁す冬日かな | むべ |
老い母の爪切りやるも年用意 | あひる |
煤逃げで混みし茶房へ我もまた | 澄子 |
胼薬念入りにぬりひと日終ふ | むべ |
黒点のごと鳥渡る高嶺晴 | なつき |
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2023年12月28日 | |
あるだけの布団を干して子らを待つ | ぽんこ |
門松の切つ先匂ふ老舗かな | もとこ |
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2023年12月27日 | |
哀歌めく犬の遠吠月冴ゆる | 素秀 |
残照の空に銀嶺浮かびけり | 山椒 |
儘ならぬ身重の嫁に鏑汁 | もとこ |
風邪に咳く厨の妻を案じけり | せいじ |
夫逝きし年の名残の古暦 | むべ |
うち揃ひ寒柝の音近づきぬ | やよい |
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2023年12月26日 | |
牛歩なる師走の街の車列かな | かえる |
マフラーに顔を埋めて人を待つ | 満天 |
水鳥に揉まれ揉まるる木々の影 | 康子 |
辛口の酒に舌焼く牡丹鍋 | 澄子 |
御手洗の縁に並びて寒雀 | ぽんこ |
家事済ませあとは寝るだけ玉子酒 | あひる |
菰巻かれ身をよじるやに臥龍松 | 康子 |
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2023年12月25日 | |
何もせぬ何もせぬとて年用意 | やよい |
鬼瓦べそかくごとく霜雫 | かかし |
聖夜星揚ぐ丘の上のミニチャペル | せいじ |
枯木立透けて落暉の地平線 | 素秀 |
また一つ本棚に増ゆ古日記 | 康子 |
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2023年12月24日 | |
立上がるお尻より落つ枯葉かな | かえる |
遠嶺々のふちほんのりと冬茜 | 明日香 |
着ぶくれてマトリョーシカのような君 | 山椒 |
朝日でて綺羅の霜敷くなぞへかな | もとこ |
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2023年12月23日 | |
悴みてしどろもどろになりし手話 | かえる |
柚子湯して黄色き湯気に浸りけり | うつぎ |
彼偲び尽きぬ逸話やおでん酒 | むべ |
吉良墓所の蝋涙凍てし朝かな | なつき |
偕老の役目分け合ひ年用意 | せいじ |
2023年12月22日 | |
胸元に柚子を抱きて長湯せり | やよい |
人垣に餅搗く人の杵高く | あひる |
散紅葉敷きつめてゐる駐車場 | なおこ |
クリスマスソング唄ひつ厨ごと | 康子 |
百歳の手塩の冬菜頂きぬ | きよえ |
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2023年12月21日 | |
幼な子の言ひ訳を聞く懐手 | みきお |
柚子風呂や大玉小玉犇めきて | 澄子 |
風意地悪追ひつ追はれつ落葉掃く | 康子 |
恙き一年を謝す柚子湯かな | 千鶴 |
外套の襟を立てればわれ怪人 | 素秀 |
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2023年12月20日 | |
過疎となり日曜菜園冬ざるるれ | せいじ |
暮早し門扉に掛かるお裾分け | 明日香 |
ぽんぽんと柚子投げくれし庭師かな | 澄子 |
すれ違ひ会釈でごめん年の暮 | 千鶴 |
サンタ帽被り鎮座す盲導犬 | 智恵子 |
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2023年12月19日 | |
観劇の半券が出し古日記 | なつき |
日記買ふまずは佳き日の予定書き | 康子 |
着膨れて墨糸絞る宮大工 | 素秀 |
頬さすり美肌うべなふ柚子湯かな | 康子 |
踊場の面積占むる聖樹かな | あひる |
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2023年12月18日 | |
犬小屋に飾るリースとサンタ帽 | 智恵子 |
銃声の遠くこだます冬の山 | 素秀 |
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2023年12月17日 | |
底冷えや地団駄踏みつ神事待つ | 明日香 |
折り紙の散らばるごとし紅葉坂 | 康子 |
手遊びの木彫りのお椀蕪汁 | 豊実 |
書込み欄広きを選び暦買ふ | たか子 |
冬木立深く貫く落暉かな | せいじ |
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2023年12月16日 | |
クリスマスツリー競演アーケード | たか子 |
聖歌弾き継げる空港ピアノかな | なつき |
2023年12月15日 | |
落葉屑払ひフリマの古書漁る | 澄子 |
青空と紅葉揉み合ふ水鏡 | 康子 |
団欒の窓辺に灯る聖樹かな | あひる |
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2023年12月14日 | |
存問の声二階から布団干し | そうけい |
四温晴まず外まはりから掃除 | 明日香 |
老い母にルーペを贈るクリスマス | せいじ |
呑気さを夫に褒められ日向ぼこ | あひる |
黄落し空の面積広がりぬ | もとこ |
空家なる実家に灯す聖樹かな | うつぎ |
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2023年12月13日 | |
青空に幾何模様なす枯木立 | 康子 |
日短遺品整理の逡巡と | むべ |
入日いま低く貫く枯木立 | 素秀 |
古暦腰張とせる茶寮かな | むべ |
思ひがけぬ芯の熱さよ蕪汁 | 素秀 |
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2023年12月12日 | |
枯芝にホースとぐろを巻き無聊 | 澄子 |
寝込む子の粥へ落とせる寒卵 | かえる |
ゴンドラの人着ぶくれて窓掃除 | やよい |
顔見世に華を添へたる舞妓衆 | 千鶴 |
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2023年12月11日 | |
加湿器の吐息間欠泉に似し | 素秀 |
街中が綺羅星となるクリスマス | 澄子 |
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2023年12月10日 | |
菰巻かれてんでに傾ぐ蘇轍かな | 康子 |
うたたねの膝に季寄せや日向ぼこ | もとこ |
聖夜劇ポニーテールに星揺れて | なつき |
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2023年12月09日 | |
静謐な池面へ紅葉散りやまず | せいじ |
小春日に伸ぶ職安の最後尾 | なつき |
太陽光パネル突き抜け末枯るる | 明日香 |
白障子閉めて独りを諾へり | うつぎ |
日記果つ佳き日の頁読み返し | 康子 |
2023年12月08日 | |
大枯木翳す千手に夕日射す | 康子 |
はふはふと梵字頂く大根焚 | もとこ |
小流れの奈落に見えて渓紅葉 | ぽんこ |
頂に小さき天守や紅葉山 | むべ |
な滑りそ紅葉散敷く参磴に | こすもす |
ふかふかに落葉をまとふ古墳山 | なつき |
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2023年12月07日 | |
黒ぼこを頭に乗せし霜柱 | 愛正 |
参道は降り坂なり紅葉山 | たか子 |
根上がりを隠し落葉の堆く | ぽんこ |
綿虫や迷ふて歩く京の辻 | たか子 |
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2023年12月06日 | |
瑠璃窓に聖樹またたく予約席 | 澄子 |
目に紅葉舌に懐石贅きわむ | たか子 |
下町の湯屋の賑はひ冬至風呂 | 智恵子 |
黄落が窓覗きくる会議かな | むべ |
背伸びして両手に余る蒲団干す | きよえ |
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2023年12月05日 | |
手袋の指差にクレーンの踊るやう | 素秀 |
矢のごとく新幹線や大枯田 | なつき |
落葉して現れし欅の力瘤 | むべ |
目潰しの日に万華鏡めく紅葉 | せいじ |
己が影覆ひつくして銀杏散る | はく子 |
天窓に居着き動かぬ冬の蝿 | 素秀 |
笹鳴や刻の失せたる丁目石 | うつぎ |
又一人喪中の知らせ星凍つる | 満天 |
旅人に振る舞ひ酒や里神楽 | もとこ |
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2023年12月04日 | |
水底の散紅葉へと日矢とどく | 明日香 |
交差点落葉蹴散らすつむじ風 | ぽんこ |
糊の香に猫の躊躇ふ白障子 | 素秀 |
吊るし柿良き色選りてお裾分け | みきえ |
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2023年12月03日 | |
三輪山へ天使の梯子片時雨 | 明日香 |
傾ぎ癖なほす師走のカレンダー | なつき |
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2023年12月02日 | |
夕刻の風が身を刺す師走かな | 澄子 |
鴨遊ぶ摩天楼ビル映る池 | はく子 |
2023年12月01日 | |
裾分の奇形大根に大笑ひ | こすもす |
藁苞に覗く深紅の寒牡丹 | 智恵子 |
白菜のお尻の並ぶ無人店 | 康子 |
剪定に迷ひて鳴らす空鋏 | 澄子 |
独り身のけふもあしたもおでんかな | たか子 |
夕日背に影絵のごとき枯木立 | 康子 |
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2023年11月30日 | |
石蕗に寄せ草履揃へるにじり口 | 智恵子 |
角曲がるまで見送りぬ寒風裡 | なつき |
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2023年11月29日 | |
三寒の風にも慣れて畑仕事 | 千鶴 |
手を繋ぎ孫とかけつこ冬ぬくし | 康子 |
下戸なるも酔ひし気分に牡丹鍋 | 澄子 |
雲あひにぽかりと現れし小春空 | 明日香 |
うたた寝の肩叩かれし炬燵かな | 素秀 |
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2023年11月28日 | |
冬籠り十七文字をよるべとし | たか子 |
花鉢の混み合つてゐる縁小春 | うつぎ |
法事果て小春の縁にいとこ会 | むべ |
影曳きて人と犬ゆく雪の路地 | 澄子 |
養生の芝に降り積む落葉かな | なつき |
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2023年11月27日 | |
緋毛氈敷きしごとくに散紅葉 | 満天 |
腕に寝る四千グラム日向ぼこ | 豊実 |
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2023年11月26日 | |
叩かずに目こぼししたる冬の蝿 | かえる |
乗り遅れ待つも一会や冬満月 | もとこ |
橙に色差しきたる寒さかな | 澄子 |
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2023年11月25日 | |
睦まじく寄り添ふ浮寝鳥の二羽 | 素秀 |