みのる選:2022年12月度
2022年12月23日 | |
人影に居向き変へたる浮寝鴨 | なつき |
突風に冬帽飛んで田を駆けり | 千鶴 |
拗ねし子がこちら向くまで毛糸編む | ひのと |
愛犬も家に入れたる寒さかな | 澄子 |
双葉出づ畝まつすぐに春を待つ | あひる |
討ち入りの日や南座の陣太鼓 | もとこ |
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2022年12月22日 | |
湯豆腐のをどってをりぬ鍋の底 | 豊実 |
立ち退かぬ古家一軒寒灯下 | ひのと |
銭湯の脱衣所ゆずの香のこぼれ | 千鶴 |
代々の遺影の並ぶ冬座敷 | みきお |
実千両色なき庭を明るくす | 満天 |
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2022年12月21日 | |
外套を預け老舗の客となる | ひのと |
もの捨つる事に始まる年用意 | 澄子 |
蜜蝋を点し養蜂家の聖夜 | うつぎ |
祈る手に燭の火影や聖誕祭 | むべ |
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2022年12月20日 | |
凍星を閉ぢ込めてゐる観覧車 | ひのと |
湯上がりのタオルに柚子の香の残る | きよえ |
風花のわがてのひらにとどまらず | かえる |
人波に揉まれアメ横年の市 | 智恵子 |
六甲颪南京町を駈けぬけり | たか子 |
六甲の稜線しるく冬の晴 | こすもす |
目の慣れて燭のごとくに枯木星 | むべ |
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2022年12月19日 | |
鰭酒を飲み干してより武勇伝 | ひのと |
人気なき路地を抜ければ街師走 | たか子 |
一夜にして雪世界なる我が狭庭 | 明日香 |
着ぶくれて七人掛けが六人に | ぽんこ |
堂守の話好きなり年の暮 | なつき |
部屋内に籠もるひと日や外は雪 | 千鶴 |
蹲の小枝で突付く初氷 | うつぎ |
煤払い玻璃戸に息を子と競ひ | ふさこ |
立ち食いの解放感や街師走 | たか子 |
托鉢の僧門前に年の市 | なつき |
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2022年12月18日 | |
息詰めて第九のタクト待ちにけり | よう子 |
無精髭剃り退院す冬の晴 | せいじ |
寒風に指宥めつつ松を揉む | うつぎ |
雪片の涙とどめし寒牡丹 | 素秀 |
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2022年12月17日 | |
熱の子の瞳の中に雪降れり | ひのと |
ぴかぴかに磨きし窓に冬日燦 | かえる |
禁猟区知つてゐるやに浮寝鳥 | こすもす |
冬日受く背なぽかぽかと畑仕事 | 千鶴 |
試歩の距離すこし延ばしぬ冬日和 | たか子 |
病室の四人四様年の暮 | せいじ |
2022年12月16日 | |
トンネルへ貨車を呑み込み山眠る | 素秀 |
弁当といつしよに包む風邪薬 | ひのと |
鋤きたての土くれ転ぶ冬の畑 | 千鶴 |
存問の文添へ蜜柑届きけり | こすもす |
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2022年12月15日 | |
つま先で喧嘩してをる炬燵の子 | ひのと |
日向ぼこ馬鹿な青春語り草 | うつぎ |
湯豆腐や手酌がよろし湯治宿 | 澄子 |
頬染めて子らの聖歌の声透る | 素秀 |
鯛焼の匂ひに負けて後戻り | 豊実 |
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2022年12月14日 | |
冬落暉閉じし瞼に透けにけり | むべ |
北へ向く帰郷の舳先しぐれけり | ひのと |
良きことも少しは有りて日記果つ | うつぎ |
出で立ちは冬山装備畑に立つ | 千鶴 |
玻璃窓に納まりきらぬ大き虹 | せつ子 |
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2022年12月13日 | |
分校の長き廊下や日脚伸ぶ | みきお |
寒き夜のパズルに失せし一欠片 | ひのと |
忘れたり間違えたりや年用意 | たか子 |
不揃いの大根並ぶ「ご自由に」 | 豊実 |
絵硝子の聖母にやはき冬日かな | もとこ |
綾取りに継ぎ足す母の残り糸 | ひのと |
華燭され大樹聖樹となりけり | なつき |
失せ物を探しながらの煤払 | なつき |
たつ波を鎮めるごとく紙を漉く | 宏虎 |
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2022年12月12日 | |
あれこれと老いの手抜きや年用意 | 董雨 |
生涯をこの地と定め雪囲ひ | ひのと |
汝れ偲ぶ追悼句集帰り花 | たか子 |
クッションの窪みに沈み冬籠 | 素秀 |
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2022年12月11日 | |
遠火事のサイレンに止む口喧嘩 | 素秀 |
雑巾はかつての襁褓煤はらひ | ひのと |
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2022年12月10日 | |
冬晴の浜辺は児等の運動場 | きよえ |
茶の花の垣根ぬけゆく御廟かな | なつき |
摩天楼ビルを直撃寒落暉 | せいじ |
白き尻見せ合ひ潜る鴨をかし | もとこ |
眠れる手そつと蒲団に仕舞ひけり | ひのと |
差し伸べる手の如空へ大冬木 | こすもす |
2022年12月09日 | |
一年のよかつた探しする柚湯 | よう子 |
また一人着ぶくれの来る更衣室 | ひのと |
窓口にポインセチアや町役場 | 素秀 |
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2022年12月08日 | |
イマジンも遠くなりけり開戦日 | もとこ |
宅急便濡れ手で受くる師走かな | なつき |
奥琵琶の小さき番屋氷魚炊く | あひる |
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2022年12月07日 | |
着膨れて横歩きなるかづら橋 | よう子 |
白息く遺愛の花に語りかけ | うつぎ |
まづ雪の深さを記す日誌かな | ひのと |
新雪をホップステップして烏 | 明日香 |
花舗の土間ポインセチアが席巻す | たか子 |
乱れ髪一つに束ね冬帽子 | きよえ |
柊の香に振り返る散歩道 | 豊実 |
ひつじ田の近江平野はうすみどり | せいじ |
吊されて疲れ肩なるコートかな | 澄子 |
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2022年12月06日 | |
夕映にしばし華やぐ枯野かな | はく子 |
悴む手打ちて干し物手のしする | たか子 |
少年の細き拳や寒稽古 | かえる |
炉火を守る若き女将の粉挽き唄 | よう子 |
昇進の夫を労ふ柚子湯かな | なつき |
肩ならべ寒の芹摘む母娘かな | あひる |
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2022年12月05日 | |
不揃ひは命のあかし寒卵 | ひのと |
寒風裡間遠過ぎゆく救急車 | 満天 |
人声の真つすぐに来る枯木道 | うつぎ |
アメ横にダミ声ひびく師走かな | 智恵子 |
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2022年12月04日 | |
遠国の酒取りよせて冬篭 | 澄子 |
人気なき陸軍墓地に黄落す | ぽんこ |
このへんに生家ありけり冬木立 | みきお |
凩に声飛ばされて下校の子 | うつぎ |
波音の間遠に沖の冬夕焼 | きよえ |
厨の灯黄身に映りし寒玉子 | あひる |
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2022年12月03日 | |
尻餅に破顔一笑大根引 | みきお |
悴めど指が覚えてゐるピアノ | ひのと |
柚子湯から柚子ごと嬰を受け取りぬ | ひのと |
目を凝らし見れば増えゆく冬の星 | あひる |
2022年12月02日 | |
炭俵風除けに積む杣の軒 | みきお |
大根の干されて仁王立つ大樹 | あひる |
コロナ禍の電車遠慮の咳ひとつ | あひる |
父息子言葉交はさず海鼠噛む | ひのと |
果ててなほ仄と温もり焚火跡 | みきお |
大根の透けて煮上がる夕厨 | たか子 |
江戸前の染工房や冬の川 | 澄子 |
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2022年12月01日 | |
漆黒の海に打ち上ぐ冬花火 | 千鶴 |
両の手で悴む児の手包みけり | なつき |
神木の根方へ返す落葉掻 | なつき |
着膨れに更に一枚割烹着 | うつぎ |
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2022年11月30日 | |
菜園の今年一番冬大根 | 明日香 |
実習船より手を振れる冬帽子 | ひのと |
葉葉して空つつぬけの大銀杏 | 満天 |
叱るとき男言葉や頬被り | ひのと |
冬ぼうし褒められて出る面会室 | あひる |
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2022年11月29日 | |
花びらのやうに足袋干す石の上 | ひのと |
凩や頬赤き子が鬼の役 | なつき |
漫画読む子がはみ出せる炬燵かな | ひのと |
ケアバスに乗る母の背に銀杏散る | せいじ |
老い母に添ひて傘さす冬の雨 | あひる |
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2022年11月28日 | |
棟上の御幣のうへに冬銀河 | 素秀 |
売り文句韓語や日語や市小春 | むべ |
方丈の明け放たれし小春かな | 澄子 |
木の葉髪まさか身長縮むとは | 満天 |
後ろ手に閉める障子や通夜の席 | ひのと |
紺碧の空展けたる木守柿 | うつぎ |
薪割りの音冴え渡る一山家 | かえる |
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2022年11月27日 | |
観音像後光さすごと寒夕焼 | 智恵子 |
枯菊の刈られし後の日の匂ひ | うつぎ |
なるがままとて心決め落葉踏む | たか子 |
一羽来て一羽飛立つ木守柿 | こすもす |
丸々と畝に肩だす小蕪かな | 豊実 |
辣韮の花野の先に水平線 | 素秀 |
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2022年11月26日 | |
名を呼べば子らが這ひ出る炬燵かな | ひのと |
雑炊の匙は栗の木荒削り | 素秀 |
流木に潮騒を聞く浜小春 | せいじ |
足湯いま女四代湯治旅 | 澄子 |
立話尽きぬ二人に銀杏散る | あひる |
本州の山並みはるか島小春 | せいじ |
ブルーインパルスの過ぎる枯野道 | なつき |
セピアなるり庭華やぐや実千両 | 董雨 |
冬迎ふ花柄の杖伴侶とし | たか子 |
冬うらら螺髪に挟むお賽銭 | やよい |