みのる選:2011年1月度
みのる選:2011年1月度
[選評]
常に手入れを怠らない厳しい料理人の心意気が感じられる。水脈綺羅と往き交ふ船や沖の春 わかば ゆきかふ沖の水脈の煌きに春を感じた。瀬戸の一点景。
保存食という言葉の斡旋によって新しさのある滑稽味が出ている。存問のこころに寒肥ほどこしぬ うつぎ 庭木を愛する人の優しい気持ちと、元気に育ってほしいという期待感がある。
外の寒さもなんのその今日もいそいそと吟行?に出かける妻を温かく見守っている夫の目である。
冬暁に染まる遠山の景を紅筆を刷くという女性らしい感性で雅な句となった。北風に背を向けて立つガードマン 英子 季語の斡旋がうまく写生の効いた佳句。ガードマンへの作者の温かい気持ちも感じる。
お互いにまた一年間よろしくという挨拶の気分があるので、初句会という季語が活きる。犬同士飼主同士なる御慶 せいじ 犬同士も挨拶をしているようだと感じたところが面白い。
震災当時の悲惨な生活を思えば、家事に追われながらの終い湯であっても平安が一番と思う。
とおく北国でくらす子どもへの思いを込めて送るふるさと宅急便。
温かい都会からの旅の帰路、ひと山を越えると里山の天候は一変する。
吹雪のおさまった朝、木々を見ると少し偏りに雪が積もっている。表裏という措辞で具体的な景が連想できる。
みのる選
2011年01月22日 クレーン車いま凍空に直立す よし女 凍てゆるむ夫に誘われ間歩の道 小袖 三角に尖る逆波大ならひ なつき 探梅の径のはずれに畜魂碑 よし女 貸靴の癖にスケートままならず なつき 供花の菊枯れて伏せ眼の地蔵かな つくし 2011年01月21日 松籟に水仙郷の香りけり 宏虎 寒の水指で垂らして包丁研ぐ なつき 受診待つ手の粛々と毛糸編む 花茗荷 大寒の玻璃戸曇らせ理髪店 うつぎ 水脈綺羅と往き交ふ船や沖の春 わかば 雪積んで紅の一輪藪椿 よし子 炎上のごと天守染む寒茜 菜々 保存食の期限確かむ冬篭 あさこ 前屈の体操手抜き寒うらら 満天 鉢物の配置変へもし日脚伸ぶ 明日香 刻みつつ一切れ味見紅かぶら 満天 2011年01月20日 竈に幣立てて今年も炭を焼く 雅流 湯気吹けばココアの匂ひみすず本 つくし 大寒や籠るまじきと紅を引く 百合 探梅行日向日蔭の遅速かな 三刀 存問のこころに寒肥ほどこしぬ うつぎ 梅探る太閤うどん啜りもし 菜々 東に冬満月や帰宅道 百姓 湾囲む舟屋に雪の堆く 小袖 持ちくれし見舞のシチュー温かし ひかり 炭竈に温もりほのと杣見えず 雅流 大寒もいとはずけふも妻外出 はく子 またひとり天に召さるる寒の菊 あさこ 冬茜夕餉支度の窓を染む 有香 着ぶくれて犬の御供や吟行子 せいじ 2011年01月19日 春隣なのはないろに月は満ち 菜々 探梅の岨道ゆけば杣と会ふ 雅流 冬至梅咲きつぐ縁を開け放ち きづな 厳寒の戸を出し一歩武者振ひ わかば 梅探る太閤さんのおひざもと 菜々 遠き日のきのふのごとし火吹竹 三刀 首振りて雪のワイパーいま必死 こすもす 冬暁や紅筆刷きし山の稜 明日香 席入りの待つ間こげらの枯木打つ わかば 獣径爪跡残し凍てにけり 宏虎 北風に背を向けて立つガードマン 英子 先導の旗が頼みや着膨れて きづな 鮫の歯のやうなつららや舫い綱 すずかぜ とんど折れ火の粉人垣崩しけり あさこ 2011年01月18日 あひ互ひ恵比須顔なる初句会 ぽんこ うららかや男の子手練れにブーケ組む 菜々 喧騒の巷を馳せて初句会 せいじ 寒林を縫ひて離陸す機影かな とろうち 初茶会母の着物の合ふ齢 わかば 恙無き顔揃ひたる初句会 ひかり 2011年01月17日 初茶会有馬の里は雪化粧 わかば 犬同士飼主同士なる御慶 せいじ 寒餅を搗きしと友の訪ね来る よう子 終ひ湯に至福を思ふ阪神忌 満天 塗箸を逃ぐる具多し闇汁会 有香 参道の磴不揃ひや笹鳴ける きづな 雪晴れて一穢なき空鳶のもの 雅流 一掴み甘海老おまけ朝市女 花茗荷 白寿翁笑顔で歌ふ手毬歌 こすもす 北国の子へ荷に入るるひび薬 すずかぜ 2011年01月16日 姿見に写し背中に懐炉貼る 満天 外は寒波くもる玻璃戸に籠りゐし よう子 審判の居ぬ草野球初喧嘩 せいじ 初電車席譲られてしまひけり うつぎ 火吹竹ふきて心はふるさとへ 菜々 一筋の湯気食べ頃と牡蛎を焼く ともえ 大絵馬の兎へ駈ける晴着の子 明日香 トンネルを出づるやいなや猛吹雪 こすもす ご馳走は友とおしゃべり女正月 ひかり 雪被く木々に表裏のあるごとし 三刀 鼻息の白し荒しよ挽曳馬 はく子 火花散るごと飛び遊ぶ寒雀 すずかぜ
[選評]
世は移り変わり、電子メールや携帯電話などと時代の変遷は目まぐるしい。 しかし男女の色恋沙汰は、いつの世も変わらない。
あまりの人出で、なかなか賽銭箱の前までは到達できない。 見たままを写生しているようであるが着眼点が良いので佳句となった。
昨今はペットブーム。特に小型犬に人気があるらしい。 初詣の人並みに珍しくベビーカーを押している人がいた。 ふと覗くと可愛いワンちゃんが・・・
[みのる選]
2011年01月15日 寒紅の口一文字弓を引く 菜々 水煙に上がる風神どんど焼き ぽんこ 狛犬の鼻をくすぐるしだれ梅 よし女 福笹の風に躍りし小判かな 雅流 薬湯に手足を伸ばす女正月 三刀 小豆粥好みし父へまづ供ふ きづな 厨事夫に委ねて女正月 うつぎ 2011年01月14日 読書先づ眼鏡を磨き炬燵翁 あさこ 病癒へし友の笑顔や初句会 よう子 一病を養ひゐたりちゃんちゃんこ うつぎ 2011年01月13日 いつの世も恋は変はらじ歌がるた とろうち 煮凝りの逃げて塗箸役たたず よし女 初鏡後に猫の覗きをり 有香 福笹を掲げ昼酒許されよ 雅流 2011年01月12日 玉砂利を鳴かせて夫と初参り ひかり 真青なる空より湧きて風花す せいじ 置物のごと堵列して浮寝鴨 よし女 初恵比寿人垣越しに賽が飛ぶ ともえ 和太鼓に掛け声揃ふ寒稽古 満天 2011年01月11日 一筆箋添へて母より寒卵 菜々 霜晴れや畝きらきらと朝日燦 明日香 初戎灘の銘酒の御神酒受く うつぎ 2011年01月10日 訃の電話北吹く夜道駈けにけり すずかぜ 湯気立てて薬缶一句を急かしけり うつぎ 翳し行く熊手福笹人の波 よし子 2011年01月09日 霜柱地団太踏みて物干しへ あさこ 温かやロビーの時計楽奏ず はく子 ベビーカー覗けば小犬初詣 よし女 月凍つる積み木の如きビルの影 菜々 悴みてもつれし糸のもどかしく 有香
[選評]
里山の農道沿いによく目にする無人市、朝取れの新鮮野菜などが並べてあって、 道行く人が牛乳瓶などの入れ物に100円硬貨などを投げ入れる。 冬の間は収穫も少ないためか棚の上には何もない。周辺の状況は説明されていないが、 山眠るの季語の斡旋によって具体的な情景が浮かんでくる。
雲の切れ間から降り注ぐ光芒を天使の梯子と形容する。 折角のお正月なのにあいにく空には厚い雲が覆っている。 突然その雲が切れて切れ目から降臨のごとく鋭い光芒がさした。 瞬間写生に力強さを感じる作品である。初御空の斡旋もよい。
巫女が舞う神楽を見ていて、作者はふと恵方という季語を連想した。 詳しいことはわからいけれど、きっと鈴を振り翳す方向が恵方なのだろう。
三が日が過ぎて、夫は今日四日から初出勤。 今日からはいつもの主婦業に戻るのだなという思いとともに、 今年も元気で働いてね。というやさしい妻の思いやりも感じる。 元日、ニ日、三日という季語の使い方はよくあるが、 四日をうまく詠みこんで秀句となった。
法話というと堅苦しいイメージがあり、長々と続くとつい居眠りなどしてしまう。 けれどもこのお坊さんはなかなかの話し上手。 ユーモアを交えた法話に大笑いして気分のよいお正月である。
大樹の落葉樹が細枝を網のように広げている。 曇天のときはそう見えなかったが、雲ひとつない蒼天だけに 枯木の梢の白さがひときわ目立っている。
[みのる選]
2011年01月08日 寒波来る朝のゴミ出し小走りに あさこ 寒凪を滑るがごとく船戻る よし女 歓声や達磨となりし初日の出 治男 無人市棚無一物山眠る うつぎ 初春や畝よりのぼる土の息 明日香 2011年01月07日 初鏡母の齢を越えにけり 百合 食細き母これならと薺粥 ひかり 2011年01月06日 雲切れて天使のはしご初御空 花茗荷 白粥の花と綴じたる寒卵 菜々 パック詰なる七草の売られけり 満天 葱剥いて白なまめかしとぞ思ふ とろうち 初笑ひめく里山の鴉かな 英子 2011年01月05日 ゆがみたる自家製大根洗ひけり あさこ 金色の波を畳みし寒夕焼 せいじ 初風呂の入浴剤は草津の湯 よし女 通院の患者同士の御慶かな うつぎ 三輪山の光背となり初日出づ 明日香 雪をかく姐さんかぶりもその中に こすもす 炊きたてに煮凝り躍る朝餉かな すずかぜ 雪に振る道路工夫の赤き旗 花茗荷 巫女の舞鈴振る方が恵方かな よし子 リビングに日の燦燦と今朝の春 はく子 詫助や掃き浄めたる裏鬼門 有香 2011年01月04日 いただきし節料理にて足るふたり せいじ お年玉領収証は子の笑顔 宏虎 潮焼けの漁師の笑みや浜焚火 花茗荷 凍てし田に打ち捨てられし大根葉 明日香 夫の靴磨き初めたる四日かな とろうち 漆黒に寒オリオンのしるきかな 百姓 瞬くは飛行灯らし冬銀河 うつぎ 子は銀婚夫は傘寿の屠蘇祝ふ よし女 2011年01月03日 蹲踞や掬へば崩る初氷 あさこ 子等去にて一息入るる三日かな ぽんこ 初御空日の丸高く揚げにけり 三刀 満天星のマッチ棒めく冬芽かな うつぎ ユーモアの多き法話に初笑 満天 深山路線画のごとき枯木かな 有香 2011年01月02日 寒風に踊りだしたる濯ぎもの はく子 どっぷりと傘寿沈まむ初湯かな 宏虎 新しき句帳に一句年始め 小袖 枯木立高枝は雨に煙りけり 明日香 雨晴れて葉牡丹に珠ひかりをり 満天 パン屑を口いっぱいに初雀 ぽんこ 耐へ兼ねて雪落としたる大樹かな こすもす 柏手に飛び立つ鳩や初詣 うつぎ 2011年01月01日 冬山の天辺に消ゆ送電線 せいじ 祖母と孫背くらべして初写真 あさこ 一番機飛び立つみ空初明り うつぎ 子ら入れて少しのぼせし初湯かな 有香 2010年12月31日 風邪の夫厨をそっとのぞきけり 満天 冬山に樹を打つ斧の遠谺 花茗荷 三世代揃ひ屠蘇酌む我が家かな 三刀 2010年12月30日 蒼天に網を張るごと大枯木 ひかり 老二人年の用意はそこそこに はく子 どことなく生まるる水輪浮寝鳥 とろうち 年用意セピア色なるレシピ手に 満天