みのる選:2011年1月度

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2011年1月25日

1月16日~22日みのる選

[選評]

  • 寒の水指で垂らして包丁研ぐ  なつき  

    常に手入れを怠らない厳しい料理人の心意気が感じられる。水脈綺羅と往き交ふ船や沖の春 わかば ゆきかふ沖の水脈の煌きに春を感じた。瀬戸の一点景。

  • 保存食の期限確かむ冬篭  あさこ  

    保存食という言葉の斡旋によって新しさのある滑稽味が出ている。存問のこころに寒肥ほどこしぬ うつぎ  庭木を愛する人の優しい気持ちと、元気に育ってほしいという期待感がある。

  • 大寒もいとはずけふも妻外出  はく子  

    外の寒さもなんのその今日もいそいそと吟行?に出かける妻を温かく見守っている夫の目である。

  • 冬暁や紅筆刷きし山の稜  明日香  

    冬暁に染まる遠山の景を紅筆を刷くという女性らしい感性で雅な句となった。北風に背を向けて立つガードマン 英子  季語の斡旋がうまく写生の効いた佳句。ガードマンへの作者の温かい気持ちも感じる。

  • あひ互ひ恵比須顔なる初句会  ぽんこ  

    お互いにまた一年間よろしくという挨拶の気分があるので、初句会という季語が活きる。犬同士飼主同士なる御慶 せいじ  犬同士も挨拶をしているようだと感じたところが面白い。

  • 終ひ湯に至福を思ふ阪神忌  満天  

    震災当時の悲惨な生活を思えば、家事に追われながらの終い湯であっても平安が一番と思う。

  • 北国の子へ荷に入るるひび薬  すずかぜ  

    とおく北国でくらす子どもへの思いを込めて送るふるさと宅急便。

  • トンネルを出づるやいなや猛吹雪  こすもす  

    温かい都会からの旅の帰路、ひと山を越えると里山の天候は一変する。

  • 雪被く木々に表裏のあるごとし  三刀  

    吹雪のおさまった朝、木々を見ると少し偏りに雪が積もっている。表裏という措辞で具体的な景が連想できる。

みのる選

2011年01月22日
クレーン車いま凍空に直立す          よし女
凍てゆるむ夫に誘われ間歩の道        小袖
三角に尖る逆波大ならひ              なつき
探梅の径のはずれに畜魂碑            よし女
貸靴の癖にスケートままならず        なつき
供花の菊枯れて伏せ眼の地蔵かな      つくし
2011年01月21日
松籟に水仙郷の香りけり              宏虎
寒の水指で垂らして包丁研ぐ          なつき
受診待つ手の粛々と毛糸編む          花茗荷
大寒の玻璃戸曇らせ理髪店            うつぎ
水脈綺羅と往き交ふ船や沖の春        わかば
雪積んで紅の一輪藪椿                よし子
炎上のごと天守染む寒茜              菜々
保存食の期限確かむ冬篭              あさこ
前屈の体操手抜き寒うらら            満天
鉢物の配置変へもし日脚伸ぶ          明日香
刻みつつ一切れ味見紅かぶら          満天
2011年01月20日
竈に幣立てて今年も炭を焼く  雅流
湯気吹けばココアの匂ひみすず本      つくし
大寒や籠るまじきと紅を引く          百合
探梅行日向日蔭の遅速かな            三刀
存問のこころに寒肥ほどこしぬ        うつぎ
梅探る太閤うどん啜りもし            菜々
東に冬満月や帰宅道                  百姓
湾囲む舟屋に雪の堆く                小袖
持ちくれし見舞のシチュー温かし      ひかり
炭竈に温もりほのと杣見えず          雅流
大寒もいとはずけふも妻外出          はく子
またひとり天に召さるる寒の菊        あさこ
冬茜夕餉支度の窓を染む              有香
着ぶくれて犬の御供や吟行子          せいじ
2011年01月19日
春隣なのはないろに月は満ち          菜々
探梅の岨道ゆけば杣と会ふ            雅流
冬至梅咲きつぐ縁を開け放ち          きづな
厳寒の戸を出し一歩武者振ひ          わかば
梅探る太閤さんのおひざもと          菜々
遠き日のきのふのごとし火吹竹        三刀
首振りて雪のワイパーいま必死        こすもす
冬暁や紅筆刷きし山の稜              明日香
席入りの待つ間こげらの枯木打つ      わかば
獣径爪跡残し凍てにけり              宏虎
北風に背を向けて立つガードマン      英子
先導の旗が頼みや着膨れて            きづな
鮫の歯のやうなつららや舫い綱        すずかぜ
とんど折れ火の粉人垣崩しけり        あさこ
2011年01月18日
あひ互ひ恵比須顔なる初句会          ぽんこ
うららかや男の子手練れにブーケ組む  菜々
喧騒の巷を馳せて初句会              せいじ
寒林を縫ひて離陸す機影かな          とろうち
初茶会母の着物の合ふ齢              わかば
恙無き顔揃ひたる初句会              ひかり
2011年01月17日
初茶会有馬の里は雪化粧              わかば
犬同士飼主同士なる御慶              せいじ
寒餅を搗きしと友の訪ね来る          よう子
終ひ湯に至福を思ふ阪神忌            満天
塗箸を逃ぐる具多し闇汁会            有香
参道の磴不揃ひや笹鳴ける            きづな
雪晴れて一穢なき空鳶のもの          雅流
一掴み甘海老おまけ朝市女            花茗荷
白寿翁笑顔で歌ふ手毬歌              こすもす
北国の子へ荷に入るるひび薬          すずかぜ
2011年01月16日
姿見に写し背中に懐炉貼る           満天
外は寒波くもる玻璃戸に籠りゐし     よう子
審判の居ぬ草野球初喧嘩             せいじ
初電車席譲られてしまひけり         うつぎ
火吹竹ふきて心はふるさとへ         菜々
一筋の湯気食べ頃と牡蛎を焼く       ともえ
大絵馬の兎へ駈ける晴着の子         明日香
トンネルを出づるやいなや猛吹雪     こすもす
ご馳走は友とおしゃべり女正月       ひかり
雪被く木々に表裏のあるごとし       三刀
鼻息の白し荒しよ挽曳馬             はく子
火花散るごと飛び遊ぶ寒雀           すずかぜ

2011年1月17日

1月9日~15日みのる選

[選評]

  • いつの世も恋は変はらじ歌がるた  とろうち  

    世は移り変わり、電子メールや携帯電話などと時代の変遷は目まぐるしい。 しかし男女の色恋沙汰は、いつの世も変わらない。 

  • 初恵比寿人垣越しに賽が飛ぶ  ともえ  

    あまりの人出で、なかなか賽銭箱の前までは到達できない。 見たままを写生しているようであるが着眼点が良いので佳句となった。

  • ベビーカー覗けば小犬初詣  よし女 

    昨今はペットブーム。特に小型犬に人気があるらしい。 初詣の人並みに珍しくベビーカーを押している人がいた。 ふと覗くと可愛いワンちゃんが・・・ 

[みのる選]

2011年01月15日
寒紅の口一文字弓を引く      菜々
水煙に上がる風神どんど焼き    ぽんこ
狛犬の鼻をくすぐるしだれ梅    よし女
福笹の風に躍りし小判かな     雅流
薬湯に手足を伸ばす女正月     三刀
小豆粥好みし父へまづ供ふ     きづな
厨事夫に委ねて女正月       うつぎ
2011年01月14日
読書先づ眼鏡を磨き炬燵翁     あさこ
病癒へし友の笑顔や初句会     よう子
一病を養ひゐたりちゃんちゃんこ  うつぎ
2011年01月13日
いつの世も恋は変はらじ歌がるた  とろうち
煮凝りの逃げて塗箸役たたず    よし女
初鏡後に猫の覗きをり       有香
福笹を掲げ昼酒許されよ          雅流
2011年01月12日
玉砂利を鳴かせて夫と初参り    ひかり
真青なる空より湧きて風花す    せいじ
置物のごと堵列して浮寝鴨     よし女
初恵比寿人垣越しに賽が飛ぶ    ともえ
和太鼓に掛け声揃ふ寒稽古     満天
2011年01月11日
一筆箋添へて母より寒卵      菜々
霜晴れや畝きらきらと朝日燦    明日香
初戎灘の銘酒の御神酒受く     うつぎ
2011年01月10日
訃の電話北吹く夜道駈けにけり   すずかぜ
湯気立てて薬缶一句を急かしけり  うつぎ
翳し行く熊手福笹人の波      よし子
2011年01月09日
霜柱地団太踏みて物干しへ     あさこ
温かやロビーの時計楽奏ず     はく子
ベビーカー覗けば小犬初詣     よし女
月凍つる積み木の如きビルの影   菜々
悴みてもつれし糸のもどかしく   有香

2011年1月12日

12月30日~1月8日みのる選

[選評]

  • 無人市棚無一物山眠る  うつぎ

    里山の農道沿いによく目にする無人市、朝取れの新鮮野菜などが並べてあって、 道行く人が牛乳瓶などの入れ物に100円硬貨などを投げ入れる。 冬の間は収穫も少ないためか棚の上には何もない。周辺の状況は説明されていないが、 山眠るの季語の斡旋によって具体的な情景が浮かんでくる。

  • 雲切れて天使のはしご初御空  花茗荷

    雲の切れ間から降り注ぐ光芒を天使の梯子と形容する。 折角のお正月なのにあいにく空には厚い雲が覆っている。 突然その雲が切れて切れ目から降臨のごとく鋭い光芒がさした。 瞬間写生に力強さを感じる作品である。初御空の斡旋もよい。

  • 巫女の舞鈴振る方が恵方かな  よし子

    巫女が舞う神楽を見ていて、作者はふと恵方という季語を連想した。 詳しいことはわからいけれど、きっと鈴を振り翳す方向が恵方なのだろう。 

  • 夫の靴磨き初めたる四日かな  とろうち

    三が日が過ぎて、夫は今日四日から初出勤。 今日からはいつもの主婦業に戻るのだなという思いとともに、 今年も元気で働いてね。というやさしい妻の思いやりも感じる。 元日、ニ日、三日という季語の使い方はよくあるが、 四日をうまく詠みこんで秀句となった。 

  • ユーモアの多き法話に初笑  満天

    法話というと堅苦しいイメージがあり、長々と続くとつい居眠りなどしてしまう。 けれどもこのお坊さんはなかなかの話し上手。 ユーモアを交えた法話に大笑いして気分のよいお正月である。 

  • 蒼天に網を張るごと大枯木  ひかり

    大樹の落葉樹が細枝を網のように広げている。 曇天のときはそう見えなかったが、雲ひとつない蒼天だけに 枯木の梢の白さがひときわ目立っている。

[みのる選]

2011年01月08日
寒波来る朝のゴミ出し小走りに    あさこ
寒凪を滑るがごとく船戻る        よし女
歓声や達磨となりし初日の出      治男
無人市棚無一物山眠る            うつぎ
初春や畝よりのぼる土の息        明日香
2011年01月07日
初鏡母の齢を越えにけり          百合
食細き母これならと薺粥          ひかり
2011年01月06日
雲切れて天使のはしご初御空      花茗荷
白粥の花と綴じたる寒卵          菜々
パック詰なる七草の売られけり    満天
葱剥いて白なまめかしとぞ思ふ    とろうち
初笑ひめく里山の鴉かな          英子
2011年01月05日
ゆがみたる自家製大根洗ひけり    あさこ
金色の波を畳みし寒夕焼          せいじ
初風呂の入浴剤は草津の湯        よし女
通院の患者同士の御慶かな        うつぎ
三輪山の光背となり初日出づ      明日香
雪をかく姐さんかぶりもその中に  こすもす
炊きたてに煮凝り躍る朝餉かな    すずかぜ
雪に振る道路工夫の赤き旗        花茗荷
巫女の舞鈴振る方が恵方かな      よし子
リビングに日の燦燦と今朝の春    はく子
詫助や掃き浄めたる裏鬼門        有香
2011年01月04日
いただきし節料理にて足るふたり  せいじ
お年玉領収証は子の笑顔          宏虎
潮焼けの漁師の笑みや浜焚火      花茗荷
凍てし田に打ち捨てられし大根葉  明日香
夫の靴磨き初めたる四日かな      とろうち
漆黒に寒オリオンのしるきかな    百姓
瞬くは飛行灯らし冬銀河          うつぎ
子は銀婚夫は傘寿の屠蘇祝ふ      よし女
2011年01月03日
蹲踞や掬へば崩る初氷            あさこ
子等去にて一息入るる三日かな    ぽんこ
初御空日の丸高く揚げにけり      三刀
満天星のマッチ棒めく冬芽かな    うつぎ
ユーモアの多き法話に初笑        満天
深山路線画のごとき枯木かな      有香
2011年01月02日
寒風に踊りだしたる濯ぎもの      はく子
どっぷりと傘寿沈まむ初湯かな    宏虎
新しき句帳に一句年始め          小袖
枯木立高枝は雨に煙りけり        明日香
雨晴れて葉牡丹に珠ひかりをり    満天
パン屑を口いっぱいに初雀        ぽんこ
耐へ兼ねて雪落としたる大樹かな  こすもす
柏手に飛び立つ鳩や初詣          うつぎ
2011年01月01日
冬山の天辺に消ゆ送電線          せいじ
祖母と孫背くらべして初写真      あさこ
一番機飛び立つみ空初明り        うつぎ
子ら入れて少しのぼせし初湯かな  有香
2010年12月31日
風邪の夫厨をそっとのぞきけり    満天
冬山に樹を打つ斧の遠谺          花茗荷
三世代揃ひ屠蘇酌む我が家かな    三刀
2010年12月30日
蒼天に網を張るごと大枯木        ひかり
老二人年の用意はそこそこに      はく子
どことなく生まるる水輪浮寝鳥    とろうち
年用意セピア色なるレシピ手に    満天