泡吹いて蜆つぶやく夜の厨

この作品への合評記事を投稿する。

修正はできませんが、削除・再投稿ができます。

  • みのる:ある記事に「買って来たしじみをざるに開けて塩水に浸け砂抜きにかかる。しじみはすぐに顔(?)を出しはじめ、ぷくぷくと泡を吐く。」という記述を見つけました。えら呼吸でも空気を吐くみたいです。明朝のしじみ汁になるのでしょう。澄子解にあるように砂抜きの準備をして布巾を被せておいたのでしょう。終い湯を浴びたあと念の為に厨に戻り順調であることを確認、安堵して寝床についたのです。 - 2024/02/13(火)
  • 澄子:一連の御句の作者としては珍しく擬人化されて 蜆が泡吹いてつぶやいて 下五「夜の厨」と締めくくりどこかユーモラスでエロティックな印象もします。汽水の環境を整えてやるとよく砂を吐き出すとも(私はだいたい砂抜きした貝を選んでしまいます)…………そのままだと辺りに水をまき散らすので 布巾を掛けているのかもしれません。一日の家事を了え ひっそりと灯を消した厨からの微かな命の音…………ちょっとゾクッとして妙にリアル…………ひらがなのつぶやくも効果的だと思いました。 - 2024/02/13(火)
  • えいいち:砂抜きしているのか、調理しているのか、料理をしたことの無い私には難問です。「夜」というと夕食は済んで遅い時間帯で暗い状況を思わせるように私は感じますので、明日の朝の味噌汁の具にと砂抜きをしているように思いました。私の思い出では(アサリですが)夜の薄暗い流しに置いた金盥の中でニョッキリと水管を出し蠢き潮を吹くに姿が印象深くあります。子供心にその姿にとても興味が湧いたものでした。作者は暗い台所で何やらガサゴソと音を立てながら泡を吹いている蜆に気が付いたのでしょう。蜆が僅かに開き泡を吹き何やらつぶやているようです。何と言っているのだろう、と興味が湧いてきて眺めていると、ふと哀れみを抱いたのが「夜の廚」の措辞から感じます。しかし上五・中七の写生から「美味しく頂きますよ」と蜆の生に感謝している気持ちを感じました。 - 2024/02/12(月)
  • 康子:「泡吹いて」とあったので酒蒸しをして口からブクブクと泡が出ているのかと思いましたが「つぶやく」の措辞に合わない。しかも「夜の厨」なので翌朝の蜆のお味噌汁の為の砂抜きの泡のことなのでしょう。その泡を「つぶやく」とした感性に感服しました。「夜」と「つぶやく」により静かな台所が浮かんできます。蜆と会話してるんでしょうか、台所俳句によりお料理も楽しくなりますね。 - 2024/02/12(月)
  • むべ:いわゆる台所俳句ですが、中七「蜆つぶやく」がとても印象的です。下五「夜の厨」は一日の主婦業が終わった後の台所ではないかと思いました。明日の調理のため、活きている蜆の砂抜きをしているのです。誰もいない灯りの消えた台所に入ってみると、砂抜きのためにバットに入れた蜆たちが砂を吐き、水に気泡が生まれています。春の夜、人のあずかり知らぬところで、蜆たちが「やれやれ、しょっぱくてかなわん!」とつぶやいているようだ…春の夜マジックという感じもあります。 - 2024/02/12(月)
  • かえる:最初は砂抜き中の蜆を詠んだのだと思いましたが、泡を吹いているので、すでに味噌汁になりかけている鍋の様子を詠んでいるのだと思い直しました。煮立たせないように火加減に気を配る鍋の中で、次々に蜆が口を開いて泡を吐く様は熱いと呟いているようです。作者は少しだけ罪の意識を抱きつつ、春の夜に美味しい蜆汁を拵えているのでしょう。 - 2024/02/12(月)