やまだみのる

東京支部(?)の有志がお花見句会を兼ねて上野動物園に吟行されると云う。 そこで、動物園俳句、植物園俳句を作る上でのチェックポイントを書いてみました。

動物を詠むとき、それがアフリカの大自然にいる情景なのか動物園なのかが鑑賞する人に解るように 詠む必要があります。俳句の約束では何も説明がない場合は動物も植物も大自然の中で生息する 自然の情景を連想して鑑賞するのが基本です。

ゴリラが昼寝している・・ と詠めば、アフリカのジャングルの中で昼寝しているゴリラということになります。 動物園の情景であることを詠むには 檻のゴリラが昼寝している・・ と云わなければいけません。

具体的に、「檻の・・」と詠まなくても、前後の言葉によって動物園の情景だと解れば それでもかまいません。 飼育係、水槽、曲芸、サーカス、等々のことばがあれば少なくともアフリカの大自然の 情景でないことは解りますよね。

動物園の動物たちの様子を観察しながら、アフリカの大自然に生息している彼らの生活 ぶりを連想して、句に詠むことはかまいません。つまりこれは動物園で作った句ですが、 詠んだ内容は大自然のそれを詠んだことになるのです。

動物園で説明しましたが、植物園の花や植物を詠む場合でも気をつけることは同じです。 大切なことは、動物でも植物でも、対象物の特徴や習性というものの本質を確実にとらえることです。 象でも、熊でも、ライオンでも何でもよいような情景を句にしても共感は得られません。 花を詠むときでも、梅、桃、桜、どれに置き換えても意味が同じになるような作品がありますが、 これでは、「季語が動く」ことになります。

そういうことを意識すると、動物園俳句というのは案外難しいのです。 ぼくはどちらかというと動物園は苦手なのですが例句を幾つかあげておきましょう。

  • 大空を窺ふ鋭目ぞ檻の鷲
  • 柴高く積みしは鵲の巣なるべし
  • 老骨といはるる馬の肥えにけり
  • ペンギンの表敬並び涼しさよ
  • 反芻の牛を見ながら氷菓舐む
  • 百獣の王の尻尾が蠅払ふ

こうして過去の作品を振り返ると、動物園での吟行句なのに、 動物園ではなく自然の生活を連想した作り方になっていますね。 結論は動物園での情景そのものを詠むのは難しいと云うことかもしれません。

参考にしていただくつもりが、迷いの種をまいたかもしれません。おゆるしを・・ みなさんの、ご健吟お祈りしています。(*^。^*)

(2002年3月21日の日記より)