やまだみのる

野見山朱鳥という俳人が著書の中で興味ある一文を記していたので要約して転載します。

関東の優秀な俳人で村上鬼城という人がいた。ときに関西にきて句会の指導をよくしたが、
席上鬼城は選外となった作品の欠点について詳細に解説するのが常であった。
その論があまりに的確であったので座の人々からため息が漏れるほどで、
それを機に鬼上に教えを乞う人が沢山出た。

一方高浜虚子先生の場合は入選した作品の良いところを指摘して誉められるだけであった。
かくして虚子先生の弟子からは雲の湧くごとく次々と優秀な俳人が出たが、
鬼城からは一人の俳人も生まれなかった。

欠点を指摘されても、それを気にして臆病になるだけで上達はせず、
誉められればだんだん自信をつけて成長に結びつく。
これは子育ての原理と同じである。

欠点や弱点は案外自覚しているものだが、長所はというと本人には見えていないことが多い。虚子先生はこの原理がよく解っておられたのだと思う。 ところで、世の教育ママがこの一文を読んだら、どう反論するのだろう。

(2000年06月01日の日記より)