2024.1〜2024.12の自選作品集です。
2024.1〜2024.12の自選作品集です。
幾万の綺羅の波延べ春の川
砲弾のごとき筍釜茹でに
玻璃窓をま白に叩く暴れ梅雨
電車いまビルの途切れて西日さす
畔ゆけば先へ先へと飛蝗飛ぶ
吊るされて阿鼻叫喚の唐辛子
朝まだき雲なき空に月高し
キャディーらの指呼せる秀枝帰り花
冬灯紙漉くやうに湯葉張りぬ
連鎖して逆立つ鴨の尻をかし
いつもありがとうございます。見て感じた私なりの俳句を詠もうとした一年間でした。みのる選からできるだけ季節ごとにまとめてみました。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
餅焼けば風神雷神猛るごと
通勤の電車朝寝の人ばかり
春空の果てへ消へたる飛行雲
靴擦れの踵を撫でる新社員
発進も停止も優し春のバス
手裏剣の如宙を切るつばくらめ
一太刀のバットに西瓜砕けたり
人形と見紛ふ稚児や鉾祭
静けさや秋気溶け入る禅の庭
御朱印の達筆凛と秋日和
10月から英語の通訳ガイドを始めた為、俳句は失速気味となりましたが、少しガイド業務も慣れてきたので、また頑張ります。
子ら去りて無口な夫になる三日
被災地の復興祈る宮焚火
どんど火に燻つてゐる狐面
雪催ひ紅茶に垂らすブランデー
愛のチョコ見せあひて食ぶ父子かな
眉のごと細き目で笑む土雛
梅が香の日溜りに腰下ろしけり
落椿関所めきたる峠道
竹林の風に押さるる遍路道
日の匂ひ土の匂ひの髪洗ふ
今年の夏の異常な暑さの中、俳句を生活の一部としてなんとか続けて来られたのは毎日句会のおかげです。二重投句をしてしまい呆け始めたかと思うことも・・・
気を引き締めて、細く長く楽しく続けたいと思います。
甑布干す酒蔵の庭小春
子午線の城に日時計風光る
幕末の戦場はここ花堤
天辺に巨岩鼻だす青嶺かな
診察の間にはや灼くる車椅子
残暑なほ西窓の戸は閉めつきり
叢雲をうてなに月の出でにけり
太陽の塔見下ろして昼の月
気動車に聞く国言葉冬ぬくし
極月やポストに不在連絡票
2024年は能登の大地震に始まる大変な年でした。復興もまだまだと聞いています。政治の世界も混迷を深めていますが、そのような困難な中にあっても、日々俳句と向き合いながら、希望を持って生きていきたいと思います。2025年もよろしくお願いいたします。
吹初の尺八に添ふ朱唇かな
太鼓打つポニーテールや節分会
やぐらへの小径誘ふ初音かな
祝福のごとく総身に花吹雪
トラックの下枝触れ行く夏木立
老犬の深く息吸ふ今朝の秋
やはらかき女将の訛り秋団扇
小夜時雨間遠となりぬ貨車の音
御神酒の香湯気ごともらふ蒸饅頭
船便で届くカードやクリスマス
仕事では大変な案件を抱えた一年でしたが、なんとか年内に目処がついてホッとしています。月一回武蔵野女子会のみなさんと吟行や句会ができ、また他のGHの方々ともお交わりいただいたことは本当に感謝でした。でもやっぱり古文は苦手です(笑)
底冷えのテニスコートにたたら踏む
野良猫に手向く寒夜の段ボール
足弱の夫励ましつ青き踏む
碧眼の人と並びて花下に佇つ
両手あげ拙き歩み花吹雪
風いなす蓮の大葉の裏返り
参磴に散らばる藍は蛍草
豊漁というに高値や初秋刀魚
庄屋門臥龍の松の色変へず
西方の落暉にま向く枯蓮
年齢を重ねるにつけ新鮮な感性が後退しつつあるようですが、細く長く俳句に携わって行きたいと念じています。
居留地に瓦斯灯烟る枯木道
白き馬柵つづる菜の花明かりかな
見るほどに心浮き立つ花ミモザ
七色に灯る架橋の春の宵
花万朶妣いまさばと思ひけり
思わざる友と再会イースター
父母を恋しと思ふ蛍の夜
敗戦忌核なき世をと祈りけり
平安を偲ぶ境内桔梗咲く
小春日の州浜に松の威風かな
書き出すほどの句はありませんが吟行句を交えて何とか十句出すことができました。みのる様、GHの皆様大変お世話になり感謝申し上げます。新しい年 も良いお交わりをと願っております。
ゐ並びて柏手揃ふ初詣
新地湯は令和の今も路地ぬくし
植木屋も農夫も給仕大根焚
城山に見下ろす淀の花堤
初鰹ひと振り土佐の天日塩
我が影に侍るがごとく草を引く
連発の余韻の煙花火果つ
眠られぬ臥戸に激し稲光
落蝉の乾ききつたる軽さかな
払はれし電話ボックス残る虫
皆様の牽引力に縋り今年も楽しく(時には苦しく)俳句を続けることができました。10句を抜き出しているとやはり俳句は生活の支えになっているのだ と感じます。来年もよろしくお願い致します。
手料理をあひ持ち寄りて女正月
水平線曖昧模糊と春霞
藤棚の下に人垣将棋盤
故郷のイベント目当て娘ら帰省
サービスに西瓜振舞う村のカフェ
妹が欲しと願う子星まつり
オムレツに朝採れトマトトッピング
早逝の夫と祝はむ敬老日
故郷の民謡に秋惜しみけり
おしゃべりのお茶がわりなる蜜柑かな
今年もなんとか続けることができましたが我ながら低調だったと反省しております。吟行句の少ないこと、もっとあちこち出かけなくては〓でも不思議 と嫌いにはならないので少しずつでも前を向いて頑張りたいと思います。
皿洗ひ夫にまかせて春炬燵
茅渟の海見えて遥けし梅の丘
蝉生れて東雲に翅乾きゆく
またもとの瀬石へ戻る糸蜻蛉
獅子唐のにぎやかに爆ぜフライパン
小鳥来る聖書輪読せる窓に
宣誓は白寿の母や運動会
太陽の塔は碧眼秋の空
お茶室は千客万来庭小春
暖房を効かせて四肢に化粧水
毎日句会では毎朝みなさまと挨拶を交わしているような温かい気持ちになりました。吟行句会では関西地区の方々と楽しい時を持つことが出来ました。 GHのみなさまとのふれあいをとても感謝しています。これからもどうぞよろしくお願いいたします。
節分の豆添ひくれしパン屋かな
球児らの声高らかや芝青む
公園の子供列車に花ふぶき
水脈引きて行き交ふ船や風ひかる
山法師真白きベール纏ふごと
伸び代は有ると励ます夏期テスト
バスのごと一両車輌行く青田
夜の更けて風鈴チリンと鳴りにけり
雨の夜居間に炬燵の出でにけり
咳の吾に美容師そっと飴ひとつ
写生句がなかなか詠めず苦吟の一年でした。来年は、もっと観察力や感動する心を養いたいと思っています。よろしくお願いいたします。
初春や白面の富士泰然と
蕉翁の石像冴ゆる中尊寺
船頭の舟唄雪の最上川
津波禍の原野のままに冬枯るる
まほろばの川音高き里の春
宇治川の堰たぎり落つ涼しさよ
幾重にも連鎖して爆ず揚げ花火
爽涼や貴船の川床に瀬のたぎち
柳川の水郷めぐる小春かな
御所の砂利母娘で踏んで冬ぬくし
毎日句会に投稿し始めて4年目になります。あっという間に月日が経ち今年も師走を迎えています。この一年何をしたのだろうとみのる選を辿ってみる とあちこち旅行したことが句材となって載っています。楽しかった旅の思い出がよみがえり、早速十句選びました。
春寒し病床六尺読みてより
お前もか眠れぬ夜の浮かれ猫
ちりちりと古傷痛む余寒かな
曇天に読経くぐもる花御堂
息凝らし螢火そつと幼な手に
双子なり泣く子笑ふ子花柘榴
仏手柑置きてしつらふ京町家
玉眼に見透かされゐる秋思かな
叡山の白く尖りし師走かな
年忘れ師の隣席をはばからず
今年は病気で始まった年でした。入院生活の中で、今まで積読だった病状六尺を心から感じる事ができたことが不幸中の幸いかなと思います。いつ何が 起こるか判らないと思い知らされたことで、今日一日と一期一会という言葉が身に沁みます。俳句もその思いが沁み込む作品ができれば良いのですが、 難しいです。みのるさん、皆様、来年も宜しくお願い致します。
久闊を叙す緑陰の一墓碑に
鴨帰る白砂の浜に潮目跡
草を引く隣家の影の失せぬ間に
新茶注ぎ下戸の佛に二タ三言
磯料理刺身は萩の瀬付き鯵
狛犬の小鼻膨らむやに大暑
似顔絵師涼しき眼より描き初む
デイサービス愁思もて乗る送迎車
熟柿もぐ玉子のように手渡しに
斯く太き大根貰ひどうしやう
長年お世話になっております。ある年から数年間は俳句もパソコンからも遠ざかり忘れておりました。一人暮らしになり家中の片付けを一応終えた頃みのるさんと皆さんにお会いしたい気持ちで一杯になり、お誘いを受けお仲間に入れていただきました。でも俳句にはならずそのうち介護保険問題が発生して、デイケアやヘルパー等割れそうな頭を抱え細々とした日々ですが、あと何年かを明るく笑って過ごしたく思っております。よろしくお願いいたします。
襤褸市に座すヒマラヤの佛かな
野ざらしの古壺に宿る余寒かな
卯の花の籬に憩ふ乳母車
方丈に座して青葉を眩しめり
空馳せる雲の白さや大夏野
風見鶏向き変へ秋の来てゐたり
沖はるか稲妻奔り艇庫閉づ
小鳥来る教室ごとに世界地図
道ゆきの祠に供ふ木の実かな
ひと枝にこえの集ひし冬桜
皆様のおかげで又一年頑張ることができました。来年は写生というものを捉え直してゆく一年にしたいと思います。よろしくお願いします。
舞ふ豆に挙ぐる千手や節分会
初蝶の虚子のやぐらを存問す
試歩の母饒舌となる花の道
大書せし孫の命名墨涼し
寝息立つ老母へ優し扇風機
隣家より風鈴の音もらひけり
青空に呑み込まれゆく秋の雲
一と匙の粥は新米離乳食
安産を願ひ腹帯干す小春
生かされしことに感謝や新日記
俳句を始めて一年が経ちました。皆さまの新鮮な御句に日々刺激を受けております。みのるさんはじめ優しいお仲間達に囲まれ、GHのメンバーでいられることを心から幸せに思っております。2025年もどうぞよろしくお願いします。
シングルの姉妹となりて女正月
春水を湛ヘ影置く浮見堂
花冷えや阿修羅の頬に残る紅
平安の鼓動千年若葉雨
振り向けば出航の街大夕焼け
瀬戸内の海を焦がして大花火
就農子手作り野菜盆供とす
松手入女庭師の赤鋏
紅葉且つ散る草庵の檜皮葺
年忘れかって舟屋と云ふ広間
おずおずと西宮のGH句会を訪ねてからほぼ十年。今や俳句生活が私を支えてくれて、上手く詠めない日ももうお手上げという日も何日かすると又詠み出している自分がいます。
何を隠そう、涙の句ばかり作ってたらアカン!とのお言葉には気色ばみましたが其れもいつかしら薄紙を剥がされ詠んでしまっています。この先も作句に助けられる事と思っています。
門に立つ不許葷酒の碑梅香る
一坪の庭をはみだし豆の花
子らの靴散らばる土間に春の泥
瞬かず鹿は遠目や花吹雪
弁当屋土堤の桜を知り尽くす
隣り合ひお国はどちら花の下
老鶯の禊のごとく朗詠す
過疎の里休耕田に雉子鳴く
石蕗日和清談弾む茶席かな
舟宿の淀の光の射す障子
6月に手の甲を骨折をして自分の間抜けに気力を失い長い失速を続けていました。句友に励まされた何とか続けています。かろうじて十句書き出すこ とができました。来年もよろしくお願いします。
啓蟄や試歩の病棟幾まはり
里人に笑ひ初めたる四方の山
朝窓を明るうしたる春の雪
オクターブ上げて啼きつぐ匂鳥
後の月隠して雲の華やげり
芋の露小さき宇宙を閉じ込めて
一穢なき空の青さや文化の日
七五三裳裾はだけてスニーカー
秋冷の高野参道石畳
闘病の夫に見せたき冬銀河
今年は早々の入院手術に始り、色々と試練の一年でした。投句を振り返ってみると随分俳句に助けられたと思います。これも毎日句会に参加し、句友の皆さんの刺激とみのるさんのご指導のお陰と感謝しています。
白椿逆縁の子の忌を修す
ポストまで軒下づたひ春時雨
この道や鳥語も喜喜と梅日和
日の当たる床几をえらび梅見小屋
翠巒の雨烟りして走り梅雨
一庭の涼し悟りの窓越しに
紅葉散る池に水漬きし小舟かな
紅葉影乱して鯉の跳ねにけり
紅葉愛づ紅絨毯に寛ぎて
極月や病院食の遅きこと
何も分からず俳句を始めましてから五十年になりますが句会はおしゃべり会の様に集まって楽しく過ごしました。
俳句の方はあまり勉強しなかったので、みのる様にお世話になるようになってから俳句の難しさ、奥の深さを知り俳句の本当の良さが解るようになりました。
医師にもう寿命の無い年齢だと言われ慌てておりますが、何とか俳句を作りつづけたいと願っています。どうぞ宜しくお願い致します。
田水張る高き信濃の空映し
卯の花の古道を辿る伊勢路かな
清流に開く画帳や夏帽子
尖塔の町を自在につばくらめ
木も家も傾く登山電車かな
苔むせる岩の実生も照葉かな
舞へるとも吹かれをるとも秋の蝶
金の鈴空より降らむ楝の実
掃かず置く友待つ庭の散り紅葉
コート着るチェロの残響包みつつ
初めてみのるさんや皆さんに句を選んでいただいた時の感激が昨日のことのように思い出されます。
GHとの出会いに、温かく迎えてくださった皆さまに感謝です。これからもよろしくお願いいたします。
口づけのごとく寒紅酒を利く
岩窪の祠ほとけは銀竜草
風涼し老舗暖簾の字の合はず
流灯の帯となりゆく遅速かな
蓮の池車軸の雨に寧からず
水替へて吐息新たや水中花
閉づと聞く老舗の洩らす秋灯
色鳥の一擲したる池鏡
いまし火の坩堝といはむ庭紅葉
冬帝へ巨幹をよじる椋大樹
2024年度作品集へのご協力をいただき心より感謝します。
皆様の素晴らしい作品を拝見しながら、今年もまた自らの作品の不甲斐なさを覚えます。選者として恥ずかしくない作品を目指してさらなる精進をしなくてはと猛省いたしました。
メンバーの高齢化とともに応募者数も年々減少傾向にあるのは詮無きことですが、今年度は新しいメンバーも多く与えられ転換期に差し掛かっているかと思います。 は結社ではありませんので先人後人といった気遣いは全く無用です。どんどん若い世代のメンバーがリードしてくださって大いに盛り上げていただきたく、よろしくお願いいたします。