客観写生の実際例

やまだみのる

作句の壺シリーズ

客観写生とは、「見たままを出来るだけ具体的に表現すること」

と説明すると報告の句になるのでは? と迷いが生じる。確かに客観写生と報告とは紙一重なのである。

初心の方々に、この極意をどう説明すれば理解して貰えるのだろうかと、日毎悩んでいました。

昨日、淡路島の著名な俳人「大星たかし」さんから、贈呈の小句集が届いた。その中のいくつかの作品をみて、「これだ!」と思いました。たかしさんの作品を示せば、愚かな解説を重ねるより一読瞭然?と確信したのでした。(笑)

原句>浜の家でて踊子の急ぎけり   たかし

これは四国阿波踊り吟行での作品で、海浜での踊りに加わろうと急ぐ踊子の姿を写生したものである。

このままでも客観写生の句として十分と思われるが、阿波野青畝先生は次のように添削された。

添削>浜の家でて踊子の走りけり   たかし

「急ぎけり」は主観、「走りけり」は客観である。

両者の躍動感の違いをよく味わって欲しい。 もう一句。

原句>ストーブに干物を焼きて教師酌む   たかし

たかしさんは中学校の教師でした。

今ならPTAがうるさいですが、放課後、生徒たちが帰ってしまったあと、漁師町の生徒からの差し入れの干しするめをストーブの上で焼き、ささやかな酒を酌みながらあれこれと教育論を戦わせる教師像が浮かびます。推敲に推敲を重ねた末、たかしさんが最終的に句集に載せた作品は次のようになっていました。

推敲句>ストーブに干物を反らせ教師酌む   たかし

教師酌む「焼きて」は説明ですが、「反らせ」は客観写生です。

ストーブの上の干物の変化が目に浮かぶようです。客観写生の壺を会得するのに格好の例句ですね。

(2000年08月09日)

 
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