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2025年06月14日

梅雨の渓


岩噛んで根上りしたる樹下涼し

絵図の立つ歴史古道の樹下涼し

一渓の涼し瀬となり淵となり

岩襖からも水吐く梅雨の渓

十薬の埋めし賽の河原かな

老いし蟻仏足石をうろうろす

大師像望む遠嶺へほととぎす

我影へ馳せ寄す鯉の水尾涼し

万緑を嵌めて鎮もるバン字池

5月7日に池田市久安寺を吟行しました。

2025年05月18日

返し馬


返し馬涼しく踵返しけり

勝馬の騎手夏空へ拳あぐ

笑み涼し当たり馬券を見せあひて

蹄音の怒涛に汗すゴール前

鬣を撫でて勝馬ねぎらひぬ

パドックの人垣中に白日傘

ビギナーズラックの馬券汗涼し

騎手騎乗してより気合競り馬

背筋伸ぶ白馬の女騎手涼し

5月7日に尼崎市園田競馬場を吟行しました。

2025年04月13日

花の門


建学は聖書むねとす花の門

常盤木の落葉の森に神学部

神は愛なりと碑の立つ花の影

キャンパスにグリンチャペルや芽木芳る

媼どち少女顔して花下に笑む

セコイアの芽木高空の風いなす

変顔で仲間写真や卒業子

風なくば無聊や池の花筏

躊躇ひのやまざる蜷の道づくり

4月7日に関西学院大学上ケ原キャンパスを吟行しました。

2025年03月16日

雛まつり


目鼻なき豆雛らの愁ひかな

耳寄せて豆雛らの私語聞かむ

顎紐の結びあやしき古雛

御簾垂れて暗き玉座や雛の恋

袖合はすやに隣りあふ貝雛

立雛玉座は朱なる輪島塗

豆雛ドールハウスの奥座敷

雛御殿秘蔵の蔵も開張す

つるし雛厄除け魔除け犇めきて

3月11日に川西市郷土館の雛祭りを吟行しました。

2025年02月18日

西光寺の涅槃図


四世紀守りし涅槃図寺宝とす

焼失に克ちし秘仏や涅槃堂

木隠れに大河逆巻く涅槃絵図

日照るとき金色極む寝釈迦かな

障子明り寝釈迦醒めよと堂に満つ

欄間絵に飛天の舞へる涅槃堂

涅槃図に描かれぬ嘆き聞こえずや

我も斯く涅槃したしと見る寝釈迦

涅槃図に鼠ゐて猫見あたらず

2025年2月 池田市西光寺

2024年12月15日

枚方宿


寒禽の藪に呼びあふ古墳山

起伏野のごとたたなづく紅葉山

いまし火の坩堝といはむ庭紅葉

怪獣の凍てしごと立つ椋大樹

冬帝へ巨幹をよじる椋大樹

舟宿の雁木跡鎖す木戸寒し

資料館寒し千両箱は似非

たとふれば花柊は淑女の香

極月の路地へはみだす小商ひ

2024年12月

2024年09月28日

月の須磨


海凪ぎて土竜叩きに鯔の飛ぶ

月の須磨武者の如くに松の影

閉づと聞く老舗の洩らす秋灯

墨痕のかすれ涼しき大書かな

ひぐらしや杉の奈落に一末社

乱帙をわが城とせる昼寝かな

搾りたて牛乳避暑の牧至福

露の玉東雲あかり宿しけり

曼珠沙華山田錦の里埋む

2024年9月

2024年08月24日

流灯


ゆき悩む流灯を手で促しぬ

流灯の帯となりゆく遅速かな

水替へて吐息新たや水中花

鎮魂の海へ散華す大花火

白靴をぬぎて渚に遊びけり

時刻表枕に昼寝無人駅

朝蝉の調べは秋やデボーション

藍涼し真白き帯を胸高に

端切れめく水着の値札疑ひぬ

2024年8月

2024年07月25日

消息雑詠


連理して大緑陰をなせりけり

透明度百パーセント瀞涼し

目に涼し宇治の早瀬よ水音また

川風が攫ひし宙の糸とんぼ

青海波なす段丘の濃紫陽花

風涼し老舗暖簾の字の合はず

岩清水ひきて蹲踞奏でしむ

一条の日の輪のをどる泉かな

蓮の池車軸の雨に寧からず

5月〜7月

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