2021年4月17日 | |
耳元を羽音かすめて烏の巣 | むべ |
鳥雲に今もどこかで戦あり | はく子 |
フェリーいま転舵してより水脈うらら | みのる |
城下町ふんわり包み山笑う | こすもす |
花万朶漫ろ歩きの小径かな | わかば |
つばくらや淡路瓦のいぶし銀 | うつぎ |
花万朶纏うは淡き日の光 | わかば |
リハビリの追いつ抜かれつ花筏 | かかし |
白玉椿これぞ清楚と言はずして | はく子 |
右に習い今年は早目八重桜 | こすもす |
野辺をゆく人に近しと菫草 | 隆松 |
落椿拾へば零る昨夜の雨 | うつぎ |
雪雫軒下渡しの字滲む | 愛正 |
のつたりと渚に果つる春の濤 | 凡士 |
巣燕や地下駐車場心して | むべ |
高牧のサイロの上の春の雲 | みのる |
引潮の浜に吸ひつく屑若布 | なつき |
花屑を句帳に挟む老夫婦 | かかし |
さはに生る親指ほどの実梅かな | せいじ |
ワイパーの掻き跡に砂つちふるる | 隆松 |
八重椿己の重さに枝垂るるや | はく子 |
松の芯駝鳥の伸びし首のごと | せいじ |
いつの間にベンチの荷物の落花かな | こすもす |
くわりんの花は少数精鋭ぞ | せいじ |
連翹や蕪村逗留したる寺 | 凡士 |
蒲公英の桟敷に野球応援す | みのる |
卓袱台に親子八人春の夢 | かかし |
渡良瀬川糸遊結ぶ三国境 | 愛正 |
夕飯の支度後散歩春夕焼 | こすもす |
かげろへる大吊橋のダンプカー | 素秀 |
カラフルな種袋振るカナダ産 | かかし |
招き猫七色並びうららけし | なつき |
小糠雨晴れて明るき花の昼 | わかば |
吾が面ふいに翳りて昼の蝶 | むべ |
老い長閑ゲートボールいまティータイム | みのる |
花盛り数枝休眠明けやらず | 愛正 |
沈丁香の誘ふ古刹や瞑想路 | 愛正 |
花冷えや目玉見開く踏まれ邪気 | 素秀 |
雪柳白の零るる程に揺れ | よし子 |
母が吹き子が追ひかけるシヤボン玉 | 小袖 |
山桜雨の疏水の音高く | わかば |
かよひ路の小さき石橋亀のなく | よし子 |
空の青飛花も落花も惜しみなく | よし子 |
列乱す園児帽子に花の屑 | かかし |
花びらに紛れて蝶の乱舞かな | うつぎ |
被爆樟二世の若葉艶めけり | なつき |
校門の守衛に桜蘂降りぬ | むべ |
百済観音その微笑みに朧へと | 凡士 |
公園の池広々と残る鴨 | はく子 |
連翹の咲く屋敷跡城下町 | よし子 |
眼帯の夫の退院夏近し | なつき |
テディベアリュックにのぞく花見の子 | なつき |
甲冑の武士の面差し春の闇 | うつぎ |
大池に三つ巴なる鳥の恋 | せいじ |
水温む木道ぬかる尾瀬ヶ原 | 愛正 |
篝火に浮き立つ宵や薪能 | 凡士 |
下山せし夫の土産や落し角 | むべ |
伯楽の牛を見る目で桃の花 | 素秀 |
永き日のコロナ自粛に倦みにけり | みのる |
鎭もりて苔むす苑や花の雨 | わかば |
春落葉散歩の坂道なすべりそ | よし子 |
蔦の芽の朱くいだけり巨石群 | 素秀 |
コロナ禍の止む兆し無く鳥雲に | はく子 |
歩を止めて乙女の見入るスイートピー | せいじ |
海鮮の生簀ゆうゆう桜鯛 | 素秀 |
公園の桜見せんと療法士 | うつぎ |
川の瀬に鷺ぽつねんと陽炎へる | 凡士 |
2021年4月10日 | |
偕老の杖とリュックで花見せん | かかし |
裸足ゆくアビイロードの陽炎へる | 凡士 |
聖書カバー娘らに縫ふ春灯下 | むべ |
まる八を提げて朧の陶狸 | 凡士 |
芝桜ゲートロードを縁どりぬ | みのる |
鶯の谺返して磨崖仏 | うつぎ |
能勢路きて空美しや山笑ふ | よし子 |
花の影蜃気楼めく鏡池 | みのる |
春灯し忿怒やわらぐ不動尊 | 菜々 |
明治雛目鼻通りて優雅なり | 宏虎 |
山間の桜明かりの車窓かな | わかば |
花万朶我が町そぞろに吟行す | はく子 |
霾るや見晴るかす街朧なり | はく子 |
春眠を猫のパンチが連発す | かかし |
我が町の万朶のさくらに酔いけらし | はく子 |
花万朶人集まり来里公園 | わかば |
海棠や薄紅色に刺隠し | よう子 |
春陰や土偶の四股のどこか欠け | 凡士 |
杣小屋の板戸を塞ぐ蔦芽かな | 素秀 |
生け垣に色添えたるや落椿 | 愛正 |
チューリップ開いて閉じて呆けたり | よう子 |
先達に続く街道花吹雪 | うつぎ |
春闌けし蕊ふり積もる峠道 | 素秀 |
雪解風法衣はためく墓所 | 愛正 |
老いぬれば子に従ひて桜狩 | せいじ |
靄りたる空に気怠き春の午後 | 凡士 |
波の白際立つ青さ春の海 | こすもす |
花屑を巻上げて行くツーリング | よう子 |
靴跡も轍も消して田水張る | なつき |
彼岸過ぎ伽藍の造替急ピッチ | 菜々 |
彩窓の十字架透かす春日影 | むべ |
リハビリの予定を超へし花街道 | かかし |
日本人桜好きなるお国柄 | 宏虎 |
百千鳥この木なんの木かと仰ぐ | みのる |
橋立に股のぞきせり竜天に | 凡士 |
兄弟の子遍路始む鬼ごっご | なつき |
仏壇の太陽のごと土佐文旦 | うつぎ |
階段の最後はジャンプチューリップ | よう子 |
鶯や遠音近音と交はすなり | わかば |
海沿いの道は桜のトンネルぞ | こすもす |
葉ごと食ぶ祖母の流儀や桜餅 | むべ |
植えそびれ馬鈴薯の芽の林めく | うつぎ |
水鉢の揺らぐ花びら彼岸西風 | 愛正 |
上弦の月朧なり天守閣 | よし子 |
馬の背に綿雲浮かべ春の空 | わかば |
夕遍路岬間近に急ぎ足 | 素秀 |
山上の足湯へはらり散る桜 | 小袖 |
子遍路のジュース一気に飲み干せり | なつき |
後ろ髪引かれて見遣る花の雲 | せいじ |
名も年も忘るる人や花筏 | むべ |
シャンソンの別れの歌や花ミモザ | よし子 |
大和魂性格の合ふ桜かな | 宏虎 |
花見して悩める気持ち忘じけり | 宏虎 |
朱の橋の袂に分かつ花の道 | 小袖 |
山間を処処に彩る桜かな | わかば |
天井絵彩色あざやか花の寺 | はく子 |
花の雲本丸三百六十度 | みのる |
花吹雪く旧参道に茶屋の跡 | うつぎ |
孫娘の頬に映りぬ花万朶 | 宏虎 |
吹き溜まりの花弁宙に撒いてみる | こすもす |
日暮まで解けぬ問題万愚節 | よし子 |
黙々と漁網の修理春怒涛 | こすもす |
養花天伏し目にをはすマリア像 | はく子 |
両岸の花は連理の枝めきて | せいじ |
遊具へと一直線に青き踏む | なつき |
美容室笑まふ鏡の桜かな | よう子 |
潮吹の岬に咲ける浜大根 | 素秀 |
長堤を覆ひ隠して花の雲 | せいじ |
満開の桜にポッポ電車過ぐ | 小袖 |
寺通り野鳥飛び交ふ落椿 | 愛正 |
子はなぜと桃の咲き分けいぶかりぬ | せいじ |
池半分占めて揺らめく花筏 | こすもす |
散る桜貼り絵のごとき明り窓 | 愛正 |
花影を縮緬に織りさざ波す | みのる |
願掛けのかわらけ投ず花の谷 | 小袖 |
ぐぜり鳴く鶯若し薄曇り | むべ |
羽繕ふ放生池に一羽の鵜 | なつき |
鳥を追ふ双眼鏡に花吹雪 | かかし |
ヘルメット脱ぐ長髪や花の風 | よし子 |
遅桜源氏祖廟へ続く道 | 小袖 |
新社員背広姿に見紛ひぬ | かかし |
遍路笠あげて少女の顔となり | 素秀 |
2021年4月3日 | |
洗へども洗へど墓に花ふぶき | 凡士 |
新聞紙敷きつめし車庫つばめ来る | こすもす |
蜃気楼浮き沈みせん淡路島 | かかし |
蘖の我一番と背くらべ | うつぎ |
春灯の裏木戸暗し通し土間 | 素秀 |
初燕三時に閉まる道の駅 | よう子 |
松の葉を被る春蘭里の山 | 愛正 |
長靴の花屑洗ふ在宅日 | むべ |
手作りの種案山子吊る園の庭 | かかし |
鰐口を空打ちしをる春疾風 | うつぎ |
声高に猫を探すや朧月 | 小袖 |
満水の疎水にキッス柳の芽 | せいじ |
ゴンドラの人が手を降り山笑ふ | みのる |
岬端船で巡りて島桜 | 素秀 |
つちふるや目利きの友と陶器市 | なつき |
雪洞のやうな日輪霾れり | 凡士 |
低き山日本一とて笑ひたる | 素秀 |
壺に挿さん触るれば零る雪柳 | はく子 |
春の雨模糊とし船の影薄く | わかば |
久に訪ふ京の旅情や花の雨 | たか子 |
風一陣草むら起ちて雉の声 | 愛正 |
切り込みし風の横波青柳 | 愛正 |
怒涛ともなだれ吹雪きてゆきやなぎ | はく子 |
海沿ひの私鉄沿線花万朶 | せいじ |
枝垂梅石の臥牛にふれんとす | みのる |
虎吼えて遠足列の乱れたる | 素秀 |
杉山の峪を埋めて山桜 | うつぎ |
門に辞す道は朧となりにけり | みのる |
赤ん坊授かる如く種袋 | かかし |
散歩道また新しき落椿 | 愛正 |
京駈くる俥夫の背(そびら)に花の雨 | 凡士 |
花満ちて格のいや増す南禅寺 | たか子 |
うららかや開演前の長き列 | むべ |
ナナハンの縦列駐車して花見 | うつぎ |
ビヨヨンと笑ひを誘ふ石鹸玉 | 小袖 |
無地の傘いつの間にやら花模様 | こすもす |
桜並木の天蓋なせるインクライン | こすもす |
雪柳夕べの風に吹雪たる | はく子 |
長土塀(ながどへ)を加賀のことばの春袷 | 凡士 |
花菜畑どこまでつづく夕日かな | 凡士 |
粗削り木喰仏ののどけしや | かかし |
昨夜雨に散りつくしたる雪柳 | はく子 |
まんぽとはトンネルと知る京の春 | こすもす |
すれ違ふ人の余韻や春日傘 | 小袖 |
引潮に現るる断層磯遊 | なつき |
峡の田の蝶戯れる耕運機 | よう子 |
蝶もつれ一の谷へと落ちにけり | みのる |
京の街縦横流る春の水 | たか子 |
春の雨参道あちこち名入傘 | 愛正 |
ひと片を肉球につけ花筵 | むべ |
舟溜まり結ぶレールに花の屑 | たか子 |
海光に五分の渡船長閑なり | 小袖 |
花見とて小学生を助手席に | せいじ |
鳥帰る大空の道迷ひなく | わかば |
民宿の庭に五竿の若布干す | なつき |
とりどりの傘も桜に色を添え | こすもす |
卒寿てふ杖をうっちゃり春耕す | かかし |
散る花の古木の洞を寝床にす | むべ |
抽んでし京都タワーや春霞 | せいじ |
教室に追試の二人春休み | 素秀 |
草に寝ね夢膨らます春の空 | わかば |
端切れめく捨田に渡す鯉のぼり | なつき |
幾星霜春光拒み水路閣 | たか子 |
咲き初める堰の水面の朝桜 | よう子 |
昼網や一番競りは桜鯛 | うつぎ |
自転車のカバー新し菜種梅雨 | よう子 |
谷沿いに渚のごとし雪柳 | 小袖 |
山並みや見下ろす谷の江戸彼岸 | よう子 |
燈明の闇に浮かびて修二会かな | わかば |
高瀬川堤を統ぶる花菜かな | せいじ |
麗かやゆるりと浮かぶ飛行船 | わかば |
門川に筏となりて雪柳 | はく子 |
飛び石の一つぐらつき野芹摘 | なつき |
国生みの島削られて身にぞ入む | みのる |
裏木戸に友の差し入れ春の暮 | むべ |
2021年3月27日 | |
三椏の花咲きしまま鉢もらひ | むべ |
一握りほどの初摘み庭の蕗 | 小袖 |
蹲にうつぶし浮かぶ椿かな | みのる |
延々と続く墓地なり春しぐれ | はく子 |
穴の列隅に残りし大根咲く | よう子 |
陽炎や非通知電話又もくる | よし子 |
万蕾のさくらさくらの並木道 | 小袖 |
春山を鉢巻のぼるハイキング | みのる |
三椏の群生模糊として閑か | 小袖 |
炙られて鰭ちりちりと干鰈 | 素秀 |
兵役の無き國に住み大石忌 | 宏虎 |
ウォーキングコースは桜あるところ | こすもす |
燕来る始発駅舎に丸ポスト | 小袖 |
夕影に白浮かばせて花辛夷 | わかば |
ほの白く川辺突き出る猫柳 | 愛正 |
蹴り損ねボール転転うららけし | せいじ |
一輪車肥料を積みて春耕す | かかし |
有馬筆ながめておれば芽木の風 | 小袖 |
流れゆく飛機の灯りや春の闇 | 凡士 |
墓の場所問ひて小さき春日傘 | 素秀 |
待人にすっぽかされて茎立し | よし子 |
しみじみと法事の膳に蜆汁 | 素秀 |
春宵の白き巨船に旅ごころ | 凡士 |
男雛のみ残る土雛への字口 | なつき |
田楽の串に重たき堅豆腐 | 素秀 |
柳の芽水面綾なす用水路 | 愛正 |
山路来て走り根に座す百千鳥 | かかし |
主なき浅茅が宿の梅花かな | 愛正 |
蒲公英の絮毛な付けそ野に遊ぶ | せいじ |
細りつつ捨てじゃが芋の芽吹きをり | よう子 |
初花や夫と子の墓詣でけり | はく子 |
ふらここやマスク一緒に空仰ぐ | はく子 |
木蓮の花掃く音や朝の路地 | むべ |
春塵や電動都市の交差点 | よし子 |
藻畳をしとねとしたる落椿 | みのる |
掃くに惜し苔の茶庭の落椿 | みのる |
蔵の街柳芽揺らす高瀬舟 | 愛正 |
戦無く國境なきを鳥帰る | 宏虎 |
薔薇の芽やとぼそ開ける教会堂 | むべ |
夕まぐれ瀬戸は菜の花明りかな | 凡士 |
小舟など出でて山湖のうららけし | よし子 |
框より赤き毛氈雛飾る | なつき |
辛夷咲く並木懐かし通勤路 | わかば |
囀りは木々の揺らぎの間より | よし子 |
家飲みのレシピ片手に山椒和 | かかし |
カメラマン菫を避けて膝つけり | よう子 |
雪舟の濃淡の墨初燕 | かかし |
動画撮る揺るる柳を背景に | こすもす |
軽トラに上着を放り春田打つ | 凡士 |
春塵のサドル拭きたる手の黒し | むべ |
小糠雨朱の芽色づき現れり | 宏虎 |
早咲きの桜に目見ゆ車椅子 | わかば |
春山の天辺に沸く子らの声 | みのる |
東北の痛みに潤む春の星 | むべ |
時として奔放に活け梅の花 | 宏虎 |
吊し雛金の屏風に丸き影 | なつき |
雲雀野や力任せにボール蹴る | せいじ |
時折はれんげの原に眠りたし | 宏虎 |
海鳴りの間遠となりぬ笹鰈 | 凡士 |
満開の花を啄む鳥の群れ | わかば |
甲虫のごとき艶あり山椒の芽 | せいじ |
桟橋を掠めてもどる燕の子 | なつき |
堤行けば耳にウグイス空青し | こすもす |
まっすぐに畝立つ畑や春の雨 | はく子 |
春雷や川原飛び立つ群雀 | 愛正 |
青空へ紅きグー解く牡丹の芽 | よう子 |
風光る海峡眩し船の影 | わかば |
故郷の水の匂ふや蕨餅 | 素秀 |
鉄棒の子マスクと共にくるくると | はく子 |
蝶生れし野菜畑の空真青 | かかし |
チェンバロに梢の芽吹く昼下がり | よう子 |
獅垣にあらず猫除け豆の花 | なつき |
砲台場跡てふ石碑山笑ふ | せいじ |
2021年3月20日 | |
亡き人は辛夷の空の風となり | よう子 |
検査終へふと窓に見る春夕焼 | 凡士 |
啓蟄に鶏冠を立ててあとじさり | みのる |
春塵をつま先に乗せ配達夫 | 素秀 |
車庫の陰あと一息の連翹かな | こすもす |
涅槃図を善男善女見詰めけり | 宏虎 |
押寿司の木型を濡らす春の昼 | 小袖 |
春雨や合羽目深に渡し守 | 素秀 |
鎧戸の隙間拡げて春の風 | 素秀 |
太陽の光の粒や花ミモザ | むべ |
佐保姫をいざなふ寺のライブかな | 凡士 |
赤べこの影の首振る春の雷 | 素秀 |
春疾風黄旗見守る通学路 | かかし |
城跡に空向き凛と落椿 | 宏虎 |
北窓を開きて口に「早春賦」 | 凡士 |
割烹着の試食販売木の芽和 | かかし |
正門に十五の春を送り出す | 小袖 |
子雀の集まり東遊園地 | うつぎ |
空瓶の首振りやまぬ春の汐 | みのる |
雀の子もうお帰りとベンチ立つ | よう子 |
鍵盤に踊る十指や春の昼 | かかし |
花盛り友丹精の春の庭 | こすもす |
見るよりも先に触れたし猫柳 | 愛正 |
春うらら餌付け禁止と言はれても | せいじ |
土手の草混じるや子らの土筆摘み | なつき |
藪椿落ちて色さす苔の上 | わかば |
春禽のどこか浮き浮きしてをりぬ | せいじ |
おほどかにほぐるる大地もの芽出づ | わかば |
花の香に歩を緩めたり春の闇 | 愛正 |
ランドセルに夢を詰め込み入学す | かかし |
春の色まわるよメリーゴーランド | 小袖 |
山里は近くて遠し木の芽道 | 愛正 |
唐南天病院裏を明るうす | むべ |
木蓮のまたひと片や散り急ぎ | むべ |
芽を摘まれ楤また棒に戻りけり | みのる |
決め顔の前が良し卒業写真 | むべ |
チューリップ風車の丘を埋め尽くし | せいじ |
焼きか煮か聞かれて料る桜鯛 | うつぎ |
一両車窓いっぱいの野梅かな | うつぎ |
橋桁の消えて現る春の川 | 宏虎 |
春匂ふインク緑のエアメール | 素秀 |
孫は皆成人したりつくしんぼ | はく子 |
摘むことの出来ぬ古墳の土筆かな | 小袖 |
名草の芽引きて後の妻の声 | よう子 |
苦労して運び来る毎燕来る | 宏虎 |
初音かな鍬を休めし老夫婦 | かかし |
電線の垂るる路地裏春の宵 | よう子 |
子が摘めば煙吐きたるつくしんぼ | なつき |
廃線に残る駅舎や山笑ふ | なつき |
野地蔵の頭をなづる枝垂れ梅 | 愛正 |
旅にみる享保の雛や脇本陣 | 凡士 |
彼方此方へ一人吟行山笑ふ | 宏虎 |
紅梅の紅さす一枝満車札 | 愛正 |
春うららカメラ向くるも鷺逃げず | せいじ |
花支度ぽかぽか陽気に大根も | 菜々 |
掛筒の椿一花に和むなり | わかば |
紅白の八重花桃に会いに行く | はく子 |
つくしんぼ袴脱がされ裸んぼ | はく子 |
置きざりの見開き雑誌春炬燵 | 小袖 |
摘み頃を逃しぬ坪の蕗の薹 | うつぎ |
茶舗の棚茶筒と並ぶ土雛 | なつき |
芽ぐむ薔薇アーチ繕ひはじめけり | みのる |
燭台の白き炎や花辛夷 | うつぎ |
初物と父土筆煮を喜べり | なつき |
煙吐く摘まんと土筆に触れたれば | はく子 |
大量の三又分けて句会果つ | こすもす |
春水にかがむ園児の好奇心 | みのる |
鳥雲に入りて二時四十六分 | むべ |
咲き初めし花を啄む雀どち | せいじ |
雨かさね風なほ重ね沈丁花 | 凡士 |
春寒し黒光りなす蔵の梁 | わかば |
燕来る旧居留地の百番館 | よう子 |
卒寿翁へ祝ふ言の葉暖かし | わかば |
山笑ふ麓の竹に撫でられて | 菜々 |
2021年3月13日 | |
木の芽道樹種を記せる道しるべ | みのる |
露天風呂来る道赤く垣椿 | 宏虎 |
啓蟄や天地返しの花丸日 | かかし |
何処へでも連れ立つ夫婦山笑ふ | うつぎ |
海風を纏ふ浜辺の暖かし | わかば |
春光や檜皮一束奉納す | よう子 |
犬と座す背ナの広さや鳥雲に | 小袖 |
鳥帰る北への旅路無事なれと | わかば |
遍路道胸突き八丁踏みしめて | よう子 |
靴飛ばしボール蹴る子や春の芝 | 素秀 |
啓蟄や近づく夫の誕生日 | こすもす |
陽炎の中より電車現れぬ | 宏虎 |
声もなし坂東太郎霞立つ | 愛正 |
春うらら額の眼鏡失念す | せいじ |
金継ぎの夫婦の湯呑み春炬燵 | かかし |
園児らのはないちもんめ草萌ゆる | かかし |
凍解けて畑の長靴足取られ | かかし |
春耕や畝間深々掘り下げて | せいじ |
春の雨はじく工事を終へし道 | せいじ |
春眠の手元より落つ句帳かな | みのる |
おのが名を覚えはじめし仔猫かな | みのる |
無造作に山独活くるむ新聞紙 | 素秀 |
強東風に逆らひて待つ夜半の駅 | むべ |
蕗の薹広ぐ香りの厨かな | わかば |
ゆくりなく雲雀の鳴きぬ交差点 | むべ |
揚げ雲雀空の深さを教へけり | 小袖 |
色づいて蕾立ちゆく紫木蓮 | 素秀 |
黄水仙咲きて塞ぐる猫の道 | むべ |
頬つぺにキスしたるを知らず春眠す | みのる |
雛人形欲しいと泣いた弟よ | よし子 |
阿羅漢の泣くも笑ふも春埃 | うつぎ |
朝霞群峰のみの八ヶ岳 | 愛正 |
野梅咲く礎石のみなる廃寺跡 | はく子 |
牛車の輪はずれしままに雛飾る | よし子 |
手術了春眠覚めぬごと寧し | みのる |
春光や寺に男の子のすくすくと | はく子 |
孔のみのまなこの埴輪春おぼろ | はく子 |
蕾のままの風折れ無念桜かな | こすもす |
朝霞合間に見ゆる渡し跡 | 愛正 |
剪枝して棒がし棒に戻りけり | せいじ |
老木の梅花一輪塔頭寺 | 愛正 |
初大師手すりすがりて奥の院 | なつき |
啓蟄やお好み焼が上手く焼け | こすもす |
先端の開き初めおり白木蓮 | こすもす |
街路樹の木の芽膨らみ晴れ渡る | 宏虎 |
目薬師に子ら並び撞く鐘朧 | なつき |
啓蟄やカルチャー講座申し込む | よう子 |
白木蓮(はくれん)の下に待ち人来たらずや | むべ |
大霞カルデラに浮く榛名富士 | 愛正 |
通し鴨羽根繕いて安住す | 宏虎 |
たんぽぽや話相手の犬を撫づ | よう子 |
朝散歩摘み頃思案の蓬かな | こすもす |
藪椿小枝に鳥の動く影 | わかば |
薬師仏朧の中の胸二つ | なつき |
啓蟄や木の根あらはの切通し | はく子 |
燕来る日なり新居に若夫婦 | 素秀 |
地虫でてコロナ感染心配に | よし子 |
真すぐな雨まっすぐに名草の芽 | よし子 |
春眠し電車の揺れに身をゆだね | うつぎ |
本棚に紙雛飾る立子の忌 | よし子 |
市朧メリヤス売りを素通りに | なつき |
啓蟄や噴火に増ゆる島陸地 | はく子 |
菜の花の丘に沖向く忠魂碑 | よう子 |
前髪を垂らし遍路の顔見せず | なつき |
春陰のせせらぎ抜けて通院す | むべ |
憂ふことまだ知らぬ子の雛あられ | 素秀 |
音高く用水路ゆく春の水 | せいじ |
客として訪ふ生家彼岸寒 | うつぎ |
朝摘みの庭の一輪水仙花 | 小袖 |
磐座へ辿る岩山落椿 | わかば |
春の雷一瞬ひかり街照らす | 宏虎 |
籠り居の欲る春愁の捨て処 | うつぎ |
ユーターン荒む田面を耕せり | かかし |
2021年3月6日 | |
一服の抹茶しみじみ二月尽 | 小袖 |
奉納す檜皮の束や風光る | よう子 |
木の間より射す陽光や春の湖 | よう子 |
青空に舞入る如く春の雪 | はく子 |
貝寄風に能島の根城渦を巻く | 凡士 |
目口描き吾子に似たりし絵付け雛 | なつき |
チエンソーの音止み間なし春の宮 | こすもす |
ジョンガラもロックありて室の花 | よし子 |
一本の紅白梅の香りかな | わかば |
多摩川の堤や犬と青き踏む | むべ |
図書館に捩り鉢巻受験生 | かかし |
公園は砂塵嵐や春疾風 | せいじ |
隧道を出れば海峡東風強し | うつぎ |
鰆東風鳶に注意のアナウンス | うつぎ |
尾を付けて凧となりけりレジ袋 | 素秀 |
巡り来し春三月の磨崖仏 | 小袖 |
遠霞伴侶なく翔ぶ鷺一羽 | 愛正 |
裸婦像の肩が気に入り雀の子 | よし子 |
梅の香垂るる一枝を手繰り寄す | 愛正 |
荒東風にハンドル固く握りしむ | うつぎ |
クロッカス咲いて引戸の時計店 | 素秀 |
春障子おうすの茶碗小ぶりにて | よし子 |
山盛りの水菜小鍋に二人分 | 素秀 |
ひとときを梅花に舞て春の雪 | はく子 |
剪定の庭の日差しの眩しかり | よし子 |
野焼きせし香の立ちたる田園地 | 愛正 |
自転車もスピード落とす梅見かな | むべ |
蕗味噌や白きが眩し割烹着 | 凡士 |
竹筒に百円硬貨春野菜 | かかし |
豪商の軒に古巣のつながれり | なつき |
鎖樋乾きしままや梅日和 | こすもす |
二月尽胸突き八丁踏みしめて | よう子 |
鳥影の飛び移りゆく梅の苑 | わかば |
梅日和万年寺古墳は丘の上 | はく子 |
山茱萸の黄へ柔らかき日差しかな | わかば |
庭先にいぬのふぐりやゆめ踏まじ | むべ |
うららかや水輪のをどる深庇 | みのる |
春めくや一つ増えたるサッカー台 | せいじ |
防火用バケツも転ぶ春疾風 | せいじ |
春耕やラジオはみゆき流しをり | 凡士 |
手を浸し心も洗ふ芹の水 | むべ |
梅寒し人影まばらの山田池 | はく子 |
春暁の開門待つや伊勢神宮 | 愛正 |
梅が香に足止めされし家路かな | むべ |
真つ直ぐに進まぬカート冴返る | うつぎ |
石仏のお顔数多に里の春 | 小袖 |
百年てふ支へ数多も梅八分 | かかし |
発掘の土掻く箆や山笑ふ | 凡士 |
木蓮の嘴少し開きけり | せいじ |