1 灰雲へ千手伸ばすや枯木立
2 外堀の曲線に沿ふ紅葉かな
3 静寂なる苔の磴美し紅葉燃ゆ
4 妻がゐて甘味タイムや庭小春
5 白龍のごとくに迅し秋の雲
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6 山家みな長者の構へ能勢時雨
7 冬うらら汐木アブストラクト像
8 風除も無く砲台の寂れやふ
9 格子影しるき小春の花頭窓
10 降りやまぬ色葉の杜に地蔵堂
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11 野点茶屋千客万来石蕗日和
12 長屋門鎮防火燭の札掲ぐ
13 遍路道のこる導と赤ポスト
14 銘石に寄り添ふごとく藪柑子
15 島々に潮の満ち引く冬の瀬戸
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16 水鳥の鳴き澄む昆陽池ただ広し
17 蔦紅葉遺産となりし赤レンガ
18 弾薬庫歴史の重み冬ざるる
19 空馳せる流れのごとく秋の雲
20 喬木の覆ふ磴道紅葉映ゆ
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21 弾薬庫へ暗き階段山眠る
22 こぼれ落つ屑否萩のしじみ蝶
23 廻りきて池半分の冬紅葉
24 畦道に広ぐ弁当野路の秋
25 曇天へ蔓纏繞の枯木かな
26 それぞれに枝垂れたわわの花梨の実
27 紅葉影抱擁したる一碑かな
28 枯蔓の雁字搦みや防護柵
29 寺苑統べ黄落やまぬ大公孫樹
30 前栽に大倒木や身にぞ入む
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31 杜深く鳩の遊び場木の葉雨
32 どんぐりの散らばっている弾薬庫
33 遊歩道静けさ破る冬の鵙
34 拾ひたる吾が手に余る朴落葉
35 竹小径風のさやぎも秋の声
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36 黄落に染まる寺苑の州浜かな
37 草の名に犬猫麒麟野路の秋
38 お茶入りましたよと声庭小春
39 百幹の竹も鎮もる寺の秋
40 四国見ゆ紀淡海峡小春凪
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41 木立透き小暗き磴へ冬日差す
42 子の手借り急磴下る冬うらら
43 柏手の澄むや勝運地蔵尊
44 冬萌えの靡く草叢風の浜
45 北風にたじろぎて出る露天の湯
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46 冬池にカメラ小僧の動かざる
47 鳥語降る大樹の杜の小春かな
48 砲台の歴史も知らず鵙猛る
49 山号を読みて紅葉の門くぐる
50 どんぐりを投げ合ふ夫婦深山道
51 小春日のシャワーをなせる竹の径
52 七度参りぼつくり願ふ冬ぬくし
53 秋草に囲まれ秘そと牛魂碑
54 立ち枯れて秋草高し追悼碑
55 辰鼓楼飾る一本冬紅葉
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56 城石垣アートの如く蔦紅葉
57 散りさうで散らぬ紅葉や時世句碑
58 庭仕事よくはかどりし石蕗日和
59 寒禽の身じろぎもなき池しずか
60 木の実拾ふ園児かしまし声響く
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