やまだみのる

茲十日萩大名と謂ひつべし 青畝

青畝先生の作品を鑑賞していると、いろんなことが思い出されて胸が熱くなります。

結社『ひいらぎ』の事務をお手伝いをしていたころに何度か、かつらぎ庵にお邪魔して先生のお話をお聞きしました。かつらぎ庵のお庭には萩がたくさんあって、盛りの頃のそれは実に見事だったそうです。あるとき青畝先生から思いがけないお言葉をいただきました。

これからの俳諧のために、あなたのような若い作家が頑張って欲しい。みのるさん恃みますよ…

というような意味のお話でした。

自分の耳を疑いましたが先生は真顔でした。今でもそのお言葉は脳裏に焼きついています。なぜ若輩の私にそんなことを言われたのか、それが何を意味するのかは今もよくわかりません。けれども、このお言葉を忘れない限り私は俳句を愛しつづけるでしょう。

青畝先生には野心という言葉は全く縁なく、俳句を愛し、弟子を愛し、そして俳諧を愛し、後進の指導を使命としてひたすら献身的な生涯を全うされました。

"多くの弟子の中で最も先生に愛されたのは自分かも…"

先生の謦咳に接した誰もが、そう思うくらいに親しみやすく慈愛に満ちたかたでした。

満面に汗して酬もとめざる 青畝

まさにこの句のとおり、先生の確とした姿勢は誰にも真似の出来ないものと思います。

作品は勿論ですが、青畝先生の残された多くの 「俳句のこころ」 は大切な遺産です。

みのるさん恃みますよ…

青畝先生のあたたかい励ましに応えるためにも、決して「ゴスペル俳句」の運営を誤ってはならないと思うのです。

萩焚いて先師のこころ温づねけり みのる

(2002年12月14日の日記より)