1 モニターに当たり仰向け黄金虫
2 項垂れし紫陽花に水すくと立つ
3 元気かな元気を出せと雨蛙
4 テニス後冷やし珈琲に和みけり
5 朝凪の浜に戯る犬と彼
||||||||||||||||
6 はたた神一撃喰らひ街は闇
7 ビル群を射抜くごとくに稲光
8 散りてすぐ群れし魚影や渓涼し
9 水撒きの水追ひかける子どもかな
10 赤蜻蛉バス降りし吾を先導す
||||||||||||||||
11 天神さんビルを背の遠花火
12 分けつの進む植田や水澄めり
13 眼の覚めて首筋拭う汗の跡
14 船降りれば穴子焼く香桟橋に
15 蟷螂や鎌そのままに蛻たる
||||||||||||||||
16 梅の実のただ一つ浮くゼリーかな
17 夕立後行き交ふ声も潤ひて
18 赤松が陰なす石の庭涼し
19 ゲリラ雨右往左往のはたた神
20 鰻重の蓋から覗く身の厚み
||||||||||||||||
21 孫の掌みどりの響く子蟷螂
22 涼風をグラスに刻む江戸切子
23 髪洗ふ今日の芥は捨てるべし
24 若衆は浪速の祭り好きやねん
25 鮎の骨一気に抜きし父の技
26 朝暁の鴉一声天を突く
27 青みどろ蔓延る水路流れ遅々
28 函谷鉾ギリシャ神話のタペストリ
29 殻をいま脱ぎしみどりの子蟷螂
30 広報を配る当番ホテイ草
||||||||||||||||
31 畦道にハツチバツクや青田風
32 タワークレーン入道雲に挑むかに
33 朝焼けや東雲色に稲染まる
34 手入れせぬ庭に顔出し茗荷の子
35 広池にいまし展ごる蓮浄土
||||||||||||||||
36 野薊のわた一斉に青空へ
37 盛夏にて無沙汰を詫びる葉書来る
38 夏の朝天上雲の早や生まる
39 トマト支柱触らばぽたぽた黄金虫
40 横断歩道かた影まるで無きを行く
||||||||||||||||
41 向日葵や伸びきりついに蕾出づ
42 食べごろを教ふる桃の柔き尻
43 猛暑日の白雲動くことのなし
44 吹きいでし汗ブラウスに塩となる