みのる:京阪電車が作者の住む枚方の高架に差し掛かると南の丘陵地帯に東洋一と呼ばれた香里団地や男山団地という大規模なニュータウンが見える。季語はおぼろであるから春、まだ昏れきっていない丘の上に数え切れないほどの団地の窓窓の灯が点り始めるのを感慨深く見たのである。その窓の一つ一つに家族が生活し団らんがある。希望に満ちた生活もあれば、戦いの中にある暮らしもあるかも知れない。おぼろに滲む団地の明りを眺めながらそんな瞑想をしている作者を連想した。「百棟」の措辞は実数の百ではなく「そのくらいたくさんの」の意です。九十九折、七曲り、七浦なども同じですね。

澄子:夕暮れ春の潤んだ空気に包まれた「丘」という大きな景に「団地百灯」と配され具体的な景 一枚の絵がみえてくるようです。丘陵に開発されたニュータウンを想像しました。春愁という感覚を呼び起こさせる雰囲気のある御句だと思いました。