みのる:句意明快素敵な薔薇ガーデンの様子が浮かびます。薔薇の句は詠み尽くされていて類想になりやすいですが薔薇の卓、薔薇の椅子、薔薇の雨、窓の薔薇、等々上手に季語アレンジを工夫すると説明句や類想を避けられます。
よし女:山口県の玄関口「山口宇部空港」も薔薇が見事に育ちます。いまは来春に備えて手入れの時期なのでしょう。空港とは別の会社が運営しているのかと思ったらボランティア園丁なのですね。制服帽子、靴もそろえ頑張っておられます。このお句は「ばらの椅子」だけでみごとなバラ園が想像できます。貴婦人の役割がすばらしいです。
康子:茶目っ気があって少女のような純粋さが伝わる御句です。ばらの椅子、の五文字で色々なことが想像できます。薔薇園を楽しめるようにちょうど良い場所に椅子が置いてあり、座れば薔薇の香りに包まれる。まるで薔薇で彩られているかのような椅子。そして貴婦人気分!ということは、アンティーク調の椅子なのでしょう。もしカフェであればウエイターがアフタヌーンティーを運んでくるのかもしれません。その一瞬の素直な気持ちを捉えて、想像を膨らませて句にすることが大切なんですね。
澄子:薔薇園での一景。なんとも乙女な一句。休憩するため薔薇に囲まれた椅子に腰掛けたのでしょう。下五「ばらの椅子」という措辞省略がみごとだと思いました。薔薇をひらがなでひらいたのは「貴婦人」を際立たせたかったからなのか……思わずヴィクトリア的な情景をイメージしてしまいました。御句から薔薇の香が立ちあがってくるようです。
むべ:作者は薔薇の季節にイングリッシュガーデンのような場所を訪れたのでしょうか。「貴婦人」「ばらの椅子」により、アンティークな白い塗装を施した鉄製丸テーブルと椅子が難なく脳裏に浮かびました。背後や上部には、薔薇が咲き乱れ、テーブルには紅茶とスコーンの載ったトレーがあったかもしれません。アフタヌーンティーを楽しむ貴族の気分に、薔薇の香りはとてもお似合いですね。作者はちょっとはにかみながら、紅茶を一口。優雅な初夏(個人的には5月のイメージ)の午後の雰囲気が漂っています。