みのる:かつて豆腐の大きさは地域によってさまざまだったので豆腐を数えるのには、一丁、二丁という確定した単位ではない言い方をしたと思われます。昨今はスーパーでパック詰めで売られるので形状も正方形に近づいています。十字に切ったものをさらに…だと小さくなりすぎるような気がするので、大家族か来客の接待料理とかで何丁かを続け様に十字切しているのかなと思いました。
康子:手の上に豆腐を乗せて「十字♪十字♪」と言いながらサッサっと切り、磨き上げたガラスにそっと乗せ、家族が座る食卓に…という粋な動作が浮かびます。「十字十字」のリズミカルな措辞により楽しんで家事をしている様子が伝わり、またご家族への愛も感じます。切ったばかりの冷たいお豆腐が見えるような表現方法に感服です。
むべ:お豆腐を左掌にのせ、右手の包丁をそっと入れる…そんな光景がありありと浮かびました。ガラス鉢や青竹を器にしたものに並んだ賽子型の真っ白な絹漉し豆腐に、おろし生姜や刻み大葉を載せて。食欲の落ちやすい暑い夏の献立としては、食べやすく、目にも涼しい一品。愛するご家族のためにキッチンに立ってさまざまな工夫をこらしている作者を想像しました。
かえる:夕飯のおかずに冷奴を用意している。4人家族の食卓ならば、十字に切って4つの小鉢に盛り付けますけれど、今日はお客さんがいらっしゃっているのでもう一度十字を入れて小さく切り分け、皆に行き渡るようにしている、そんな光景を思い描きました。お箸で十字に切って口に運ぶ、というのも考えましたがそれだと切り口がぐずぐずになってしまうので、冷奴の涼やかさな様子が欠けるような気がして。包丁で切り口をぴんとさせた冷奴は目にも涼しく感じられ、夏の食卓の描写に相応しいように思いました。