みのる:自然を表す四字熟語として深山幽谷、山紫水明、春風駘蕩、一陽来復、千紫万紅、白砂青松、清風名月等々俳句ではよく使われます。一見格調高い読み方だと思いがちですが、よほどぴったり嵌まらないと言葉に溺れてとってつけたような句になるので難しいですね。燕の飛翔の形容としては一般的には「燕返し」ですが、揚げ句の場合は、一刀両断の袈裟懸け切りです。静と動の瞬間写生によって力強さが強調されています。

むべ:春の山は紫に霞み、川の水は澄んで、風景としてはこの世のものとは思えない美しさと清らかさなのですが、そこを上から下へ斜めに急降下する「つばくらめ」の飛翔が、生き物が活動する春の躍動感を得て、とても見事な一句となっています。「燕」「つばくろ」「飛燕」など多くの季語がありますが、「つばくらめ」と5音使うことで、季語の存在感が「山紫水明」という漢語に負けず、バランスがとれていると感じました。

康子:「つばくらめ」と「山紫水明」の措辞により、山や川の春らしい広大な景色が浮かびます。燕のことを少し調べてみました。燕は鳥の中でも翼面荷重(体重に対する翼面積の比率)が小さな翼をしているので小回りが効き機敏に方向転換できるのだそうです。そのため飛翔性昆虫を捕ることが得意で、小さなエネルギーで長時間飛び続けることが出来るのだそうです。その習性を理解すると大自然を袈裟懸けしている姿も納得できます。春らしさが伝わり季語の効果を感じました。

かえる:燕のスィーと飛ぶ様子を袈裟懸けと表現する俳句は他にも見かけますが、何を斬るかというところに、山紫水明を持ってきたところが非凡だと思いました。山あいの、水の豊かな里を、春の到来を喜ぶように燕が飛び交う様子が脳裏に浮かびました。