みのる:木立縫う…は、ゆるやかに蛇行しながら杜の樹間を縫うように流れているよという意になります。俳句では比較的よく使われ、美しい影を落としている老松の道を歩くというような設定のときに「老松の影縫う」というように表現するとより風情がでますね。綴る、辿る、沿う、跨ぐ、等々も便利な措辞ですね。豊かな写生術のためにより的確な措辞を選ぶことは上級テクニックです。澄子さんは京都観光旅行に行かれたそうで、上賀茂、下賀茂あたりは作者の好みの吟行地だったので、「ならの小川」はビンゴかもしれないですね。
澄子:まさについ先日このような景色のなかに居ました。京都上賀茂神社境内を流れるならの小川は神事が催される小川ですが 螢が生息し子供達の水遊びも許されています。浅いけれど 瀬音をたてさらさらと流れていました。参拝後 こちらの名水で淹れた珈琲を味わいました。
かえる:縫う、と表現されていることから、名水が流れているのは糸を思わせるような小川、もしくはほっそりとした美しい用水路ではないかと思いました。でも、木立の光景を描かれているので、やっぱり川ですかね。水の豊かな里を訪れた際に、どこに行ってもいつも水の流れる音がすることにいたく感動しました。水そのものを見たり触れたりするよりも、音が水をより明確にするような不思議な感覚。きっと作者も名水の音に魅入られているのだと思います。森に囲まれた夏の避暑地の光景が浮かびました。
康子:木立を縫うとあるので曲水のような細い川、また縫ひ「ゆく」の動詞により遥か森の奥まで流れている様子が想像できます。名水とあるので場所は深い山林の水源地なのでしょう。「音涼し」には川の流れの音の他に鳥の鳴き声、葉擦れの音も含まれていると思います。マイナスイオンを浴びて深呼吸している作者が浮かびました。
むべ:「木立縫ひゆく」により、名水の生まれる山奥の源流を想像しました。調べてみると、兵庫県には名水がたくさんあるそうですが、その一つに六甲山を源流とする布引渓流という場所があるようです。平安時代の和歌にも登場するほどの歴史があり、またここで採水された水は腐敗しないと外国船の船乗りの間でも有名だったとか。掲句は七七三になるのでしょうか?あえて句またがりにすることで、川の長さや蛇行ぶりをイメージさせる気がしました。ザーザーという涼し気な音が今にも聞こえてきそうで、名水を産む森が地元の人々によって大切に守られている印象もあります。森のフィトンチッドと水のマイナスイオンを受け取って、生き返るような気分の作者を想像しました。