みのる:空が傾くことはないのですが横一列に棹をなして渡ってくる鳥が右に左にと傾くのであたかも空が傾いているように感じるということですね。「傾く」という措辞は「差しかかる」というような意味にも使われることもあり「初電車須磨の汀に傾きぬ」「一両車谷戸の代田に傾きぬ」というような表現があります。鉄道線路はカーブではカントと呼ばれる緩い勾配をつけますので実際に傾いているケースもあります。
澄子:秋早朝の大きな景です。北国からの渡り鳥の群れが緩やかに大きく旋回しやや下降気味にゆく様子を中七「空傾けて」と大胆にお詠みになったように思いました。雁や白鳥の群れをイメージしました。翼に当たる朝日の角度や風を受けて変化する隊列の様子等空の景の印象は又違って見える事でしょう。東雲の空刻一刻の移り変わり 風の向き強弱 朝の冷気等……様々な事を想像致しました。
えいいち:明けゆく空をリーダーを先頭に渡鳥の群れが斜め一直に並び飛んでいる光景を想像しました。地平線に対し斜めに一直線に見えますが鳥の群れを垂直に立てて見れば・・なるど空を傾けて渡鳥は飛んでいます。そうやって目線を変えてみると今まさに明けようとする大空を力強く飛んでいく渡の群れが断然にリアルに見えてきます。作者の着眼点、描写力に感服いたしました。
康子:空が傾く…の意味が分からなくてずっと考えていたのですが「東雲の空」「傾けて鳥渡る」と切って読んでみたところようやく少し分かってきました。背景には茜色に染まり始めた東雲の空があり、そこに渡り鳥が群れをなして斜めに飛んでいる。その悠々とした美しい姿を表しているのかと思いました。そう考えると「傾けて」の措辞の効果を感じます。茜空をバックに渡り鳥の黒い影の美しさを詠んでいるのかと思います。
かえる:渡り鳥の群れが、一斉に方向を変えた瞬間でしょうか。実際に姿勢を傾けているのは鳥の方ですが、目の錯覚で、まるで空そのものが傾いているように見えた光景を切り取られたのだと思いました。夜が長くなり出した秋の朝。徐々に明け初めた空に浮かぶ鳥の群れのシルエット。幻想的でどこか物哀しい美しさを感じます。
むべ:国語にかなり自信がないのですが、この句のすごいところは、「傾けて」ではないでしょうか。鳥が一羽にしろ群れにしろ体を傾けて飛んでいると詠むなら普通です。ところが、鳥の飛んでいる姿勢によって、まるで明けゆく東の空のほうが傾いているようにも見える、ということを詠んだ御句ではないかと思うのです。まるでヨーロッパの錯視を利用しただまし絵のように…徐々に明るんでゆく空は、その色を太陽の位置とともに刻々と変えていき、北国からやってきた鳥たちというアクセントをもって、作者の眼前に展開していったのではないでしょうか。かなり長時間見ておられたのかなと思います。