みのる:藻の花で検索するとほとんど梅花藻がヒットしますが季語の藻の花は「湖沼や小川などに生えるさまざまな藻の花の総称」とあります。梅花藻は結構流れの早いところにあるので揚句の雰囲気とはちょっと違うように感じます。嫋やかに…の斡旋がうまいですね。鯉が過ぎる瞬間を写生していてかつそのあとの余韻も感じさせているところが非凡と思います。
えいいち:嫋やか、ゆらし、よぎる、という雰囲気のある言葉を使い読む者にゆったりとした雅な情景をしっかりと連想させてくれます。美しい日本画を見ているようです。
澄子:上五「嫋やかに」が雅で 鯉が花藻草を過る瞬間を捉えた御句…… 私にとっては既視感がありました。よく整備された遊水池に大小様々な緋鯉が舞っている情景で 水は澄み渡り目にも涼やかでした。梅花藻Wikipedia等調べるといろいろ出てきますが 西日本などでは上流や湧き水のある地域に分布域が限られ 清流でなければ育たないため、バイカモが育つ川はきれいな川の指標になるとも…………年間通し水温15度前後が適温だそうです。
康子:私も「藻の花」が分からず調べてみました。藻類の花の総称とのこと。YouTubeで「梅花藻」という種類を見てみましたが、なんとも可憐な花でした。梅の花に似ていることからその名が付いたのだそうです。綺麗な水のある場所でしか育たないので絶滅危惧種に登録されているとのこと。その藻の花に見とれていたところ、鯉がやってきて嫋やかに揺れた、まるで鯉が揺らしてくれたかのように。「嫋やかに」の表現が美しく、夏の澄んだ水をゆらゆらと棚引いている藻の姿や水の流れる音までが聞こえてきそうな句でした。
むべ:なんと優美な御句でしょうか。私も梅花藻の動画を拝見してみました。水の流れがけっこう早い動画でしたが、掲句からはもう少しゆったりとした、水流や鯉の動きを想像しました。そして鯉の流線形の体が藻に当たってゆらりと揺れる絵を描きました。涼やかで水の音も聞こえてきそうです。
かえる:藻に花が咲くことを知りませんでした。動画を拝見しましたが、ゆるゆるとお水の流れに身を任せている様が、なんとも可憐だと思いました。ここを無粋に過ぎるのは、姿の美しい錦鯉ではなく、よくいる黒い鯉のイメージです。涼やかで可憐な花を愛でて写真に収めようとしたら、鯉の黒い影が遠慮なく過ぎてシャッターチャンスの邪魔をする。それを繰り返すうちに可笑しくなり、句に昇華されたのではないかと想像いたしました。