みのる:えいいち解にあるように断熱対策と防音対策とは根本原理が違う。防音は比重の高い部材で仕切る必要があるが気密性というのも大事。作者は気密性の高い二重ガラスなら防音効果も期待できるはずと思いこんでいたので「あれっ!」となったのであろう。蝉は種類によって「鳴く温度の範囲」が大体決まっており、熊蝉は早朝から啼き始めお昼時にはピタリ啼きやみます。油蝉は昼間の高い気温の時間帯に鳴きますし、蜩は夜明けと日没近くの低い気温の時に鳴きます。

むべ:人工物である二重窓を通り越し聞こえてくる「せみしぐれ」。大きな音というだけでなく、音域なども関係しているかもしれません。作者は漏れ来る蝉の声に思わず窓辺を確認、うん、たしかに閉まっているわね…と思い、その時あら、ここ二重窓なのね、と気づいたのかもしれません。蝉時雨から早朝や夕方ではなく、日中であることも予想でき、屋外のジリジリと照る太陽の射熱や、もわっとした湿めりけを含んだ空気、いろいろなシチュエーションを想像できました。

澄子:二重窓に完全な遮音効果は期待出来ないそうですが……それでも戸を閉めるだけでも音は緩和されるものです。ですが 二重窓すら役にもたたぬ程の蝉の大音響大合唱。木立につつまれたお宅の瑠璃戸から緑一色の景を眺め 蝉時雨という 自然の迫力に圧倒されている作者の姿を想像しました。

えいいち:二重窓なのに蝉の声がよく聞こえてしまうのですね。住宅の二重窓は断熱効果が主で遮音効果はあまり期待出来ません。音を遮断するにはガラスをうんと厚くすると遮音性が上がります。蝉時雨は中高音の成分が大きくてとても煩いのですが、夏には付き物なので私は外の景色が見えて聞こえてくる窓が好きです。作者はこの時、蝉の声を聞きたかったのか、静かにして欲しかったのか、どう思ったのでしょう。気になるところです。

康子:蝉しぐれの声の大きさを「二重窓」で表現していることが面白いです。作者は部屋の中にいて、二重窓なのにこんなに大きな音?と驚いている。日常にこんなシーンはありそうですが、それを俳句に出来ることが素晴らしいと思いました。

かえる:せみしぐれという字面や音感は美しいのですが、実際はうるさいこと。ただでさえ暑い夏の体感温度を1-2度上げるような勢い。関西方面だと、最近はクマゼミが増えているので、体感温度は3-4度上がるような心地でしょう。防音性の優れているはずの二重窓をものともせず、室内にいても鳴き声が漏れ聞こえ、辟易とされているのだと思います。作者の嘆き節が聞こえてくるようです。