みのる:京都の上賀茂神社や奈良の春日神社で見たことがあります。「粛々」で婚の列が連想でき、「笛」を持ってきたことで聴覚的にも雅な雰囲気を連想します。ことばの斡旋の巧みさは作者の特徴です。「爽やか」も又よく晴れた秋の空気感を感じさせます。でもこうして改めて鑑賞すると「爽やか」の季語はやや動くような気もしますが、当時みのる選で採った句です。菜々さんごめんなさいm(_ _)m

澄子:季は秋 清々しく澄み切った大気のなかを静々と歩む美しい白無垢姿の花嫁の姿が浮かびました。祝事を寿ぐように流れる雅楽の音……なんとも厳かな景です。作者が耳にしたと思われる縦笛の篳篥と笙 横笛の龍笛をYouTube で確認してみました。いずれも耳に親しく 龍笛は二オクターブの音域があるそうです。確認出来なかったのですが 横笛の高麗笛はもっと高くピッコロのような感じだそうです。雅楽のようなペンタトニックは西洋器楽を聞き慣れた耳には 音階も不安定に聞こえます。でも今はその揺らぎを心地よいと感じる年齢になりました。作者もこれら笛の音を聞きつ 社全域が震え浄められてゆくように感じられたのではないでしょうか。 

かえる:気候の良い秋は婚礼シーズン。紅葉の樹木に、花嫁の白無垢がよく映えてさぞかし美しいでしょうね。ここに雅楽の調べが加わったら、厳かな気持ちが高まり、たまたまそこに居合わせただけの人であっても足を止めてしまいそう。若い新婦の幸せに輝くような美しい肌、衣装の白、空の青さ、お社の赤、目に見えるもの、耳にするもの全てが美しい。その場を共有した皆の幸せが凝縮されたような御句だと思いました。

えいいち:雅楽はきちんと生演奏で聞いたことが無いのですが映像や録音できいても厳かな雰囲気で気持ちが落ち着きますね。作者は秋晴の良き日にどこかの神社に御詣に行き、偶然にも神前での結婚式出くわし雅楽の笛の音を聞いたのでしょう。粛々と執り行われる婚礼の儀式とその厳かさを笛の音に感じ、見上げれば爽やかな秋空が祝福しているかのように感じられます。

康子:まず「爽やか」の秋の季語により神社の清々しい空気を感じます。その中で挙式が執り行われており雅楽が奏でられていた。粛々の措辞により、厳かにゆっくりと時が流れているのを感じます。白無垢姿や赤い番傘、巫女さんの赤い袴や赤い鳥居、玉砂利の音…などなど限りなく光景が浮かびます。静かに微笑みながら見入っている作者が想像できました。そして後から「爽やかに」の季語に戻り、若く初々しい新郎新婦が浮かび、読み手に爽やかな空気が伝わり季語の力を感じる句でした。

むべ:「宮」という一字から、神社で授かった御句とわかります。「粛粛」という言葉にはいろいろな意味があることが今回調べてわかりました。ここでは厳かなさまを表していると思います。作者は参詣または吟行で神社を訪れたところ、神前式の結婚式が執り行われていました。神楽殿の方向から聞こえてくる雅楽の調べはなんとも優美かつ神聖。笛は三管の鳳笙、篳篥、龍笛など想像しますが、結婚式で吹かれるのは龍笛が多いそうです。境内を吹き渡る風は秋を奏で、新郎新婦の将来を寿いでいるようです。15年ほど前に一度だけ神前式の結婚式に出席したことがあります。やはり爽やかな秋でした。