みのる:寒月を詠んでも「季語動く」になりやすいのだけれど、措辞の斡旋が実に見事なので文句なしに頷ける。満ちて…は満月であることを暗示すると同時に、あたりを払うような明るさを連想させています。中天…は、"ぽっかり" という雰囲気で孤独感を演出しています。極めつけは、"しろがね" いかにも寒々しい感じを的確に伝えています。まさにことばの力!

えいいち:冬の凍てつく夜空のまん真ん中に上りきった銀色に照る満月、月光は白く冴え冴えとして冷たそうですが満月で辺りは明るい。季語を寒月ではなく寒の月としたことでその厳しい寒さ冷たさにクッションを置いたような和らいだ雰囲気も感じます。何となくですが・・哀愁と安堵感を感じます。誰かを偲んで懐かしさで胸がいっぱいになっているような感じの哀愁、安堵感です。冬の夜の寒さに堪えて身じろぎもせず、じっと月を見上げている作者の姿が浮かびます。

澄子:真冬の夜空を統べるかのような 冴え冴えと煌煌と白く輝く月を十七音で余すところなく描写。身を斬るような冷気が伝わってきます。

康子:中天に満ちた月があるので真夜中ですね。「しろがね」により月の銀色の美しさと共に寒さも感じます。秋の風情のある黄色い満月と違い、寒さの中に白々と銀色に輝く透明な月が浮かんできます。「満ちて」の措辞により空も明るく、作者を包み込んでいるかのようです。

かえる:寒の月は満月、もしくは満月に近く丸々としているのでしょう。冬の夜空を見上げれば、息を呑むような美しい月が冷たい光を放っている。空気が乾燥しているせいか、膨張せずにきゅっと締まって、幾分小さく見えます。月光は秋のような金色ではなく鋼のような銀色。たっぷりとした光量ながら冷たい輝きに満ち満ちて。その有り様をしろがね、で描き切っています。たった4文字で。作者の言葉の選択と表現力に脱帽です。

むべ:月といえば秋ですが、「寒の月」もまた、透徹した美しさがあります。夜空をふと見上げると、冬の満月が夜空全体を明るくしています。「しろがね」の措辞だけで、月の表面が銀色に光り輝いていることがわかり、ありきたりな動詞を使わなくても表現できることに驚きます。低い気温、澄んだ空気なども伝わってきます。「中天」とは、空を仰ぎ見たときに見える広い空間を漠然と指す語だそうで、中天を統治している月の存在感に、作者は感じ入ったのではないでしょうか。