みのる:愉しい句ですね。蓮華は肥やしとして蒔かれますが犬ふぐりは雑草です。世界地図を描くほどまでに広がるのは複数年かかるでしょう。丈の草がはびこらないよう管理されているのでしょうが数年手つかずのままなのです。一見のどかな景ながら後継者がいないとか生産調整とかの煽りに苦闘する農家の暮しも想像できる。

澄子:いぬふぐりの犇めく水色を海に見立てたのですね……童心を忘れない作者を感じます。休耕田とはいかにも長閑で、萌えいづる草や土やお日様の匂いまで感じました。

むべ:下五の「世界地図」がすばらしい。実景を見て実感しないとこのような措辞は出てこないのではないでしょうか。みなさんと同様に、いぬふぐりの咲いている叢が海、咲いていないところが陸だと受け取りました。ひろびろとした休耕田の広がりと、暖かい日差しと、うれしそうに咲いているいぬふぐり。作者もきっと笑顔になっていたのではないかなと思います。

康子:いぬふぐりとは瑠璃色のおおいぬふぐりのことなのでしょう。這うように増え繁殖力が強いので休耕田にいつの間にたくさんの瑠璃色の花が咲いていた。「いぬふぐり」と「休耕田」の対比が面白い。いぬふぐりが海、そして土が陸、のように見えたのでしょう。それを「世界地図」と言い表した感性に感服します。常に無の状態で周りを見ていないとそんな措辞は浮かんで来ないのだろうなと思います。動詞は一つもないのに作者の感動の声が聞こえてくる気がします。

かえる:いぬふぐりの青を海に見立てたのでしょう。水の干からびた春の休耕田で、のびのびと勢力を拡げるいぬふぐりの景色が浮かびます。土色の大地と、海色のいぬふぐりの入り混じる様子を地球または地球儀と表現することもできそうですが、世界地図と表現されたのが秀逸だと思います。平面の地図だけに、より縦横の広がりが感じられます。

えいいち:いぬふぐりは今では数が少ない品種のようなので調べたら俳句では.おおいぬふぐりもいぬふぐりとして詠むそうなので休耕田におおいぬふぐりが群生して、世界地図とか人工衛星から見た青い地球のように見えたのだと思いました。土の黒や茶色が山岳地帯、草の緑が森林地帯、そして春になると緑の下草を押しのけて一番早く咲く、いぬふぐりの青い花の群生は大海海原に見えたのかと思いました。作者の「うわあ凄いわぁ」と春の訪れに心が弾んでいる感じがします。