康子:「千手ひろげし」の表現が面白く木が大きく横に広がっている様子が伝わります。そしてバックグラウンドの「碧天」により背丈も高い「枯木」が浮かびます。三冬の季語「枯木」が「碧天」と「千手」の措辞によって立体的になり寒いなか凛々しく堂々と立っている状況が想像できました。

あひる:枯木が三冬の季語。碧天の碧は緑がかった美しい青色とのこと。ただの透き通るような青ではなく、深い味わいのある冬空の色だったのでしょう。そこへ千手のように掲げられた大樹の枝。それだけで十分な美しさだと思います。作者の目はその冬空と大樹の枝にだけ向けられた、というか、そこを切り取ったのだと思いました。

澄子:「枯木」が三冬の季語。色は青と黒……明晰で平明な絵画的な一句。中七の「千手ひろげし」……空に向かって扇型に拡がる樹形が美しい欅大樹をイメージしました。冬の美しさをを捉えた簡潔な一句だと思いました。

かえる:枯木が三冬の季語です。間近に立って下から見上げると、青空いっぱいに葉のない枝を伸ばしているように見えます。思い思いの方向にほっそりとした枝を広げる様はまるで千手観音のようです。暖かい時期は葉に隠れていますが、葉を落とし切った樹木はほっそりとしてスタイルの良いこと。生命力の溢れる碧天と、飾りをそぎ落とした枯木が互いの美しさを引き立てているように感じます。

えいいち:枯木が三冬の季語。良く晴れた冬の空を幾本もの手を広げ仰ぎ見る様な枯木の様子です。幾本もの上向きの枝を千手とすることで枯木が天に祈る人々のように見えますし、厳しい季節を踏ん張って生き抜く人生への思いも感じます。

むべ:「枯木」が三冬の季語。葉を落とし枝と幹だけの樹木。樹種はわからないものの、中七「千手ひろげし」で欅のような樹形ではないかな、と思いました。千本もありそうな枝は、青空に向かって大きく広がっています。冬のキーンと冷えた空は明るく、寒いけれど気持ちの良い大気に包まれる感じがします。

せいじ:枯木が三冬の季語。葉を落とし尽くした落葉樹が、雲もなく冴えわたった青緑色の冬の空に、千手のような枝を目いっぱい広げている。枝の先端のこまごまとした形も目に浮かぶ。枯木の下から空を見上げたローアングルの構図が美しく、また、色目も、空の碧色と枯木の黒色がお互いを引き立てあっている。冬の寒さをひしひしと感じさせるような景であるが、一方で凛とした清らかさを覚える。