むべ:「萩」が仲秋の季語。『ホトトギス季寄せ第三版』。萩の屑という上五がとてもすてきです。「萩散る」「こぼれ萩」などの子季語がありますが、ここでは萩の屑ですので、散って地面にある花弁にフォーカスされています。さらにそこを急な雨が流していく……という場面を想像しました。「山雨となりにけり」でああ、流れてしまう、地面にあるのも美しいのになぁ、という少し残念な気持ちを感じました。

えいいち:萩の屑というのは散って地に落ちた花弁だろうと思いますので句の詠まれた季節は仲秋の頃かもしれません。こぼれ萩という季語がありますが写生の対象を具体的に萩の屑としているので美しく地を包む花弁の情景がくっきりと目に浮かびます。そして中七下五の措辞でその美しい花弁が流れてしまう山雨が降りだし残念に思っている作者の心境を感じました。

あひる:萩が初秋の季語。こぼれ萩が静かに地面を覆っている庭を思いました。山で降り始めた雨が、その庭にも迫って来て萩の花屑を押し流し始めたようです。薄い紅紫の花屑の動きが見えてくるようです。

せいじ:萩または萩の屑が初秋の季語。山雨とあるから、山の麓にある萩の寺を想像した。山の天気は変わりやすく、萩の花や屑で埋まった境内を散策していると、山の方から俄かに雨が降り出してきたのだろう。萩の屑が流されたらと思うと残念でしかたがないが、それもまたよしの気持ちもあるような気がする。