あひる:静かな秋の夜、読書に耽っていた作者の耳にかぼそい鈴虫の声が届きます。それは次第にリーンリーンと何匹かの輪唱となって聞こえてきます。読書は一時休憩と、静かに目を閉じ鈴虫の音色に集中していると、心が解きほぐされ、しばし鈴虫と自分だけの世界に浮かんでいる気持ちです。

えいいち:鈴虫が三秋の季語。作者はなぜ書淫としたのでしょう。ふと「百聞は一見に如かず」の諺が浮かんできました。秋の夜長に書を読んでいてもさっと目を閉じてしまえば読書は出来ない、しかし眼を綴じれば虫たちの鳴き声が聞こえて来て一瞬のうちに秋の気配の中に身を置くことが出来るではないか、こうやって無心に虫の音を聞いていると次第に自然と一体となったような気分になって書を貪り読むよりも心地よい、と言っているように思えてきました。作者は秋の虫の声を聞くために眼を閉じたような気がします。子供の頃よく唄ったむしのこえの童謡が頭に浮かび楽しい虫の音の輪唱が聞こえてきます。

せいじ:鈴虫が三秋の季語。読書に耽って疲れた目も、輪唱のように聞こえてくる鈴虫の美しい声におのずと閉じてきて、こころから聞き入ってしまう。鈴虫のなす自然の音楽に癒されつつも、頭でっかちのわれを鈴虫が戒めているかのようでもある。

むべ:「鈴虫」が初秋の季語。作者は少々長く読書をし過ぎたようです。疲れた目と脳を少し休ませようと目を閉じたところ、あちこちでリーンリーンと涼やかな鈴虫の鳴き声が……追いかけるように鳴いていること・あちこちから聞こえることが下五「輪唱裡」という措辞から想像できます。疲れが癒されていくような秋の夜です。

えいじ:「鈴虫」は、初秋の季語です。秋の夜長、読書にふけっていると、庭の片隅からだろうか、鈴虫の鳴き声がつぎつぎと聞こえてくる。読書の疲れを癒やすかのように眼を閉じて、人知の及ばない自然の呼び声に聴き入っている詠み手の姿が目に浮かんできます。まさに、この句はゴスペル俳句だと思います。宜しくお願いいたします。