むべ:「秋の声」が三秋の季語。「吊橋の」という上五で渓谷にかかった橋を渡っている作者の姿が絵となって立ち上がってきました。一投足はわずかな動きとのこと、少し足を踏み出しただけで、秋の気配に取り囲まれたような気分になったのではないでしょうか。渓流の音、葉擦れの音、野鳥の声など…そして心に響く秋の声が聞こえてきそうです。

あひる:秋の声が三秋の季語。一挙手一投足と言いますが、吊橋では足にばかり気を取られますから、まさに一投足です。足に気を取られていると、板の隙間から遙か下に谷川が見えているのでしょう。その谷川から目にも耳にも肌にも感じられる秋の声が聞こえてくるようです。

えいじ:「秋の声」は、三秋の季語です。渓谷に吊られた吊橋に恐る恐る足を置いて進んでみると、風や川の流れの音、木々の擦れあう音、吊橋の軋む音も含めて、秋の気配を感じさせる様々な音が聞こえてくる。もう秋なのだという心持ちになってきました、という句だと思います。最初に読んだとき、「一投足」の意味を「一足飛び」と間違えて捉えていて、辞書で調べてみると「足をちょっと動かす」とあったのでびっくりしました。わずかな動きのなかで、季節は感じ取れるものなのですね。宜しくお願いいたします。

えいいち:秋の声が季語。吊橋のある渓谷で詠んだ句でしょうか。蔓橋のようなゆらゆら揺れる吊橋を思いました。吊橋をそっと一歩ずつ進んでゆくと徐々に空も開け色づく渓谷が見え始めます。風も流れ渓流の音や鳥の声も聞こえてくる。そんな身と包むような秋の山の自然の様子を感じます。

せいじ:秋の声が三秋の季語。秋の山の渓谷にかかる、比較的長い、かずらで編んだような吊橋を想像した。ためらいながらも、ほんの少し勇気を出して吊橋に一歩足を踏み入れてみると、すばらしいことに、渓谷の上からも下からも、さまざまな秋の声が聞こえてきましたよ。爽やかな句である。