あひる:葛の蔓は逞しく伸びていきます。秋の陽の光も露も雨もどんどんと成長の糧として、道路脇の岩肌を覆い尽くす勢いです。けれども、その葉は風に揺れ、岩肌の厳しい表情を秋の風景と変えてもくれます。自然の厳しさと優しさを感じます。

えいいち:葛が三秋の季語。秋の山道の落石防止ネットに葛が絡みつき茂り緑の壁のようになっているがその壁から幾本もの蔓が先行してネットに巻付いている、そんな光景が浮かびます。どんな悪条件でも生き抜こうとする自然の力に感動します。

せいじ:葛が三秋の季語。「落石防止網」の一言で、葛の蔓がよじ登っているところが、山道のそばの落石がよくある断崖であることがわかる。そして、こんなところにも葛の蔓が…と、葛の繁殖力に対する驚きが感じられる。風が吹くと、葛の大きな葉っぱの裏白が見えて美しいことであろう。

むべ:「葛」が三秋の季語。葛はとても旺盛で、夏には一日に30cmから100cmも蔓が伸びるそうです。落石防止網があるということは、山を削った切通のような道の法面ではないでしょうか。防止網はおそらく葛葉で覆われ、やや大きい網目は蔓を巻き付けるのにちょうどよく、ぐんぐんと登っていくように這っています。葛の生命力や繁殖力に目を見張る作者の驚きを感じます。