せいじ:虫が三秋の季語。深更であろう。虫の音を聞きながら、ひとり仕舞湯に肩までつかり、全身の疲れを癒している。眠ってしまいそうなこの心地よさはどうしたことだろう。まるで浄土にいるようだ。湯の中で虫の音を独り占めし、至福の時を楽しんでいる。

あひる:虫が秋の季語。しまい湯と虫の音を結びつける俳句を目にしたことはありますが、中七の「肩の沈めば」という措辞に特に心が動きました。この瞬間を切り取ったことで句が生き生きとしてきたのだと思いました。

えいいち:「虫」が秋の季語。夜遅く仕事を終えて最後に入るお風呂にどっぷりと肩まで浸かっていると窓から秋の虫の音が浴室一杯に広がり疲れが癒されていくようです。外の積まれた薪や周囲に草木が生える子供の頃の我家の風呂場を思い出しました。

むべ:「虫」が三秋の季語。夜遅い入浴中に、作者は湯船につかりながら種々の虫たちの鳴き声を聞いています。もしかしたら、旅先の露天風呂かもしれません。「虫時雨」という季語もありますがここではなぜ「虫浄土」なのかを想像してみました。虫時雨というと、ややにぎやかに鳴き競うイメージがあるのですが、浄土ですから、死苦もないように競争もなく、虫たちは清らか、穏やか、静かに鳴いているのではないでしょうか。一日の働きの疲れをゆっくり湯におろしつつ、清らかな虫たちの音色に心も癒されていきます。