あひる:門前の小僧習わぬ経を読む、ということばを思い出しました。門前で焼き栗を売っているこのおばさんは、いつしか身につけた寺縁起の知識を、生来の話し好きと人懐っこさも手伝って、おおいに商いに活かしているのではないでしょうか。栗が焼けるのを待ちながら、作者も楽しんでいるようです。

せいじ:栗を焼くが晩秋の季語。このおばさんはこのお寺の住職の奥さんではないだろうか。あとで分かったのかもしれないが、住職の奥さんがおばさん然としていたところに面白みを感じたのではないかと思った。有名なお寺ではなく、栗山のそばにある小さなお寺のような気がした。

えいいち:栗が晩秋の季語。寺の参道沿いの焼き栗の店で栗を試食しながら焼いているおばさんと寺の縁起や由来などを聞いて立ち話している楽しい旅のひと場面が浮かびます

むべ:「焼栗」が晩秋「栗」の子季語。「栗を焼くおばさん」が秀逸です。お寺をお手伝いしている檀家さんのおひとりでしょうか、地域・お寺の歴史にも詳しくて、焚火で焼いている栗が爆ぜないように気を付けながら、参拝客にお話をしている様子が目に浮かびました。観光地をただ巡るだけではなく、地元の方々との交流は旅を味わい深いものにしてくれます。