あひる:一隻の船が作る航跡がどこまでも長く内海を二つに分けるように伸びていきます。爽やかな秋の日、波も穏やかな内海には太陽の光が満ち、空気は澄んで遠くまで見渡せます。秋晴なればこその光景が見えるようです。

むべ:「秋晴」が三秋の季語。高台から海を臨む景色を思い浮かべました。穏やかに凪いでいる湾内を、白い航跡波がきれいに分けていきます。きっとそれなりのスピードで、美しい引き波で、まるでよく切れる裁ち鋏で布を切るように。空は高く、秋の日差しで海面はきらめいていたことでしょう。

せいじ:秋晴が三秋の季語。作者はどこにいるのだろうか。高いところから海を眺めているとも考えられるし、船尾から航跡を間近に見ているとも考えられる。前者であれば航跡は一本の白く伸びる線に見えるし、後者であれば航跡の白く泡立つ波頭がくっきりと見える。航跡には動きがあるが、その航跡の動きを的確に写生することによって、秋の澄み切った空と波のない内海の静かさがさらに引き立ってくる。

えいいち:「秋晴」が秋の季語で秋特有のグンと上の方まで晴れ上がった青空と波ひとつないベタ凪の緑青の内海に一隻の船の航跡が真っ白く泡立ちそして真っ直ぐに伸びてゆく光景が目に浮かびます。「二タ分けす」の措辞でくっきり見事に海が分かれている様が想像できます。本当に穏やかないい天気です。内海というのは瀬戸内海の事でしょうか。