むべ:「釣瓶落とし」が三秋の季語。外の景色が見えるいわゆるシースルーエレベーターに乗り込んだ作者は、上階に行くにつれ、まるで目の前の沈みゆく夕日の上に乗っかるような感覚にとらわれたのだと思われます。エレベーターの上るスピードと太陽の沈むスピードの速さも感じます。二つのベクトルの交点に作者はいたのではないでしょうか。

せいじ:釣瓶落としの日が三秋の季語。外の見えるエレベーターで、秋の落暉を見ながら、上へ上へとのぼって行くと、釣瓶の一方に落暉が、もう一方にエレベーターがあるごとく、エレベーターが、沈む落暉に引っ張られてのぼっているかのように感じたのではないだろうか。なかなか面白い着想である。

えいいち:「釣瓶落としの日」が秋の季語。秋の夕日は釣瓶落としのように落ちてゆきすぐに暗くなってしまいますが、日が落ちて始めても盛んにエレベーターは上って行きます。その光景を眺めていると都会の夜はこれからだ!と言わんばかりの秋の夜長を楽しむ世情を感じるのであります。

あひる:釣瓶落としが三秋の季語。ビルの外側にガラス張りのエレベーターが、時折キラリと光りながら上り下りしているのを見ることがあります。作者はこのエレベーターに乗って、みるみる沈んで行く夕陽を見ながら、自らは上昇しているのかなと思います。遊園地の乗り物に乗っているかのような、ちょっと楽しいひとコマです。