あひる:蝉しぐれは真夏の暑さを連想しますが、夕かなかなのしぐれとなると、どこかのんびりした物悲しいような初秋の夕暮れを思います。しぐれが急なら、杣人の足も家路を急いでいることでしょう。杣人の背中を追いかけるようにかなかなかなと澄んだ声が追いかけてくるようです。

えいいち:「夕かなかな」が初秋の季語。蜩は夕方近くのある時間になると一斉に鳴き始めますのでそれを目安に杣人たちは帰り支度を始めるのでしょう。カナカナカナ~と涼しげな鳴き声はまだ日差しの強い日中に働き詰めた杣人の火照った体に沁み込んで行き癒される事でしょう。夕日に照らされた杣人の笑顔も目に浮かびます。

むべ:「かなかな」が初秋「蜩」の子季語。夏の昼間に賑やかに鳴く蝉と異なり、初秋のそれも夕方に鳴くのがかなかな。それも、下五に「しぐれ急」とありますから、あちこちで鳴いているのでしょう。杣人は一日の作業を終え、下山の支度に取り掛かります。なんとも味わい深い一日の終わり。このように働いてみたいものです。

せいじ:かなかなが初秋の季語。仕事を終えて山を下りようとしている杣人に、かなかなが一斉に鳴き出して、ご苦労さんと労っているかのようである。かなかなは高く美しい声でゆっくりと鳴くので、ほっとする感じであろう。「~急」には、帰心の募る杣人の気持ちも含意されているように思った。