あひる:夕焼が晩夏の季語。俳句に心を動かされるのは、やっぱり自分の経験の中から共感出来た時ではないでしょうか。神戸のホテルに家族で泊まったことがあり、大きな夕日が明石大橋のすぐ向こうに沈んでいくのを感動しながら見た覚えがあります。その後すぐ娘が転職して東京へ行った思い出も重なり、夕焼けは美しくももの悲しい感情を伴います。上五の「一湾の」はその一言で読み手のいろいろな感情に寄添うような措辞だと思いました。

えいいち:「夕焼」が晩夏の季語。作者は旅をしているのだと思いますが、夕日が沈む海べりのホテルか空港のロビーに居て湾を望む大きなウィンドウから夕日が差して海も空もロビーの床も壁も天井もすべてがオレンジ色に染まった綺麗な光景が浮かびました。また「一湾の夕焼に」という措辞でどことなく海水の冷たさや夏を惜しむような感じも受けました。

せいじ:夕焼が晩夏の季語。夕焼は美しい。湾に面したホテルロビーも夕焼の光に包まれている。何とゴージャスな夕暮れであることよ。

むべ:「夕焼」が晩夏の季語。海を臨むホテルやホールでしょうか、作者が立っているロビーそのものが、夕日を反射する海を映して、茜色に染まっています。その華やかで美しく、どこか切なくもある自然の色に圧倒されて生まれた一句ではないでしょうか。上五の「一湾の」がなかなか出てこない措辞、でもこの一語のおかげで、海と夕日が生み出す夕焼のシンフォニーを、味わう側は想像することができます。