えいじ:キャンプは、晩夏の季語です。キャンプファイヤーをしていると、山や川の化身が、その火を揺り動かしているように見えた、という句だと思います。魑魅とか魍魎というと「ばけもの」とか「怪物」など、恐ろしいイメージが強いですが、ここでは、人の手の及ばない、人知を超えた神に近い存在として表現していると感じました。宜しくお願いいたします。

えいいち:その夜は月も星も無く暗い空とさらに黒い木々の影に囲まれてその中に怪しく燃える炎と微かに人影を写している、そして今にも妖怪が出てきそうな光景がこの句から思い浮かびます。でも何回か読んでいると何故か怖いもの見たさというのか、そこに行ってみたくなる楽しみも感じてきます。火を煽る魑魅魍魎に会ってみたい気もします。

あひる:夏の夜、一つの焚火をみんなで輪になって囲むキャンプファイヤーは一番の思い出となりそうです。炎に照らされた楽しげな顔、顔、顔が目に浮かびます。けれどもその背中側には静かな闇が広がっています。焚火の薪が爆ぜたり、崩れて炎が上がったりした時、ふと魑魅魍魎の存在を感じてしまうかも知れません。作者の五感が自由に開かれているようです。

せいじ:キャンプが晩夏の季語。夏の野外活動でするキャンプファイアーは楽しいが、火が猛ると怖ろしくもある。炎が悪鬼の舌のように感じられたのかもしれない。背後に広がる暗闇の中に魑魅魍魎が棲んでいて火を煽っているのではないか。そんなはずはないのだが、ふとそんな気がするほど、火の勢いがすさまじいのである。

むべ:「キャンプ」が晩夏の季語ですが、ここは「キャンプの火」を子季語「キャンプファイヤー」と同じとみなしたいと思います。作者の目の前で赤赤と燃えている焚火を想像しました。時折炎が大きく立ち上がったり、パチパチと何かが爆ぜたりします。焚火の周囲に何かうごめく存在を感じ取り、それらがいたずらをしているようにも思えるのです。冬の季語「焚火」が平地で人の営みを感じさせるものならば、「キャンプの火」は山で獣たち、また目に見えないものの存在を感じさせるものなのかもしれません。亡夫はとにかく焚火好きでした。よく燃える木と燃えにくい木の見分けを教わりましたが、ちゃんとメモを取っておけばよかったです。