えいいち:遣水が玉となって苔を転がる様子を見て苔はさぞかし涼しいだろうな、と感じました。そうして清々しい気分で爽やかな朝の木漏れ日と凛とした空気が漂う庭園を想像しました。実際には苔生した盆の水遣りかもしれませんが、大きな庭の片隅の朝の光景が目に浮かびました。

あひる:遣り水という措辞から、小さな人工の水路が苔の庭園の中を流れている様を思いました。水際では苔に水玉が宿り涼しげです。あるいは、苔に水を打ってその水が玉となっていることも想像できます。どちらにしても、あおあおとした苔と透き通った水玉が涼しさをより感じさせてくれます。

せいじ:涼しが三夏の季語。遣り水とは何か。広辞苑には、①寝殿造の庭園などに水を導き入れて流れるようにしたもの、②植込み・盆栽などに水を与えること、とある。②もあると思うが、「玉とぞまろぶ」が王朝文学っぽいので、ここは①としてみよう。庭園の遣り水の周りに青々と茂っている苔、これだけでも涼しげであるが、いろいろに工夫された遣り水のほとばしる水が水辺の苔の上にかかって玉のように転がっているのを見ると、さらに涼しく感じられることよ。「苔涼し」はいつか使ってみたい。

むべ:「涼し」が三夏の季語。庭で水遣りの最中に、水が玉となりころころ苔の上を転がっている、視覚的に涼し気な光景です。苔の種類はわかりませんが、地表を広く覆って撥水効果をもたらしているのでしょう。「苔涼し」とはなかなか思いつかない措辞ではないでしょうか。また「打水」ですと季語が二つになってしまうところ、庭木や草花に水をやる「遣り水」ならば大丈夫ということも発見でした。