むべ:「桑庫」が春の季語。桑の葉の保管庫のことだそうです。たくさんあった葉は出尽くして今はがらんと空いています。養蚕のいくつかの工程のうちのひと区切りがつき、養蚕農家のご夫婦が言葉少なに片付けか何かをしているところに作者はいたのでしょうか。少し気が抜けたような、ほっとしたような、ややさみしいような……いつまでできるかなぁ、私たちの代で終わりだね、という夫婦の会話が聞こえてきそうです。

あひる:春、桑の葉や桑の枝は桑庫に納められ、順次蚕の餌として与えられるのでしょう。それは桑庫の活気ある季節です。今、蚕は繭となり養蚕室も桑庫も静まりかえっているのでしょう。一組の夫婦ががらんとした空間で、ほっと一息ついているようです。淋しいような、嬉しいような。

素秀:養蚕の事はよく知りませんが農閑期的な時期があるのかと思います。桑庫も空になって次の準備に掛かっているのでしょうか。

せいじ:桑庫が春の季語。桑庫とは、蚕に与える桑を貯蔵しておく貯桑室のことだと思う。壮蚕の飼育には大量の桑を必要とし、五齢を過ぎるまで、桑切り(桑摘ではなく、枝ごと切る)→貯桑室(枝ごと貯蔵する)→給桑(コンバインのようなもので葉だけ取り出し蚕に与える)の工程を繰り返すが、熟蚕になると桑はいらなくなる。貯蔵した桑がなくなった広い部屋に佇んでいる二人。おそらく夫婦であろう。次は繭だ、もう一頑張りだなと、顔を見合わせているのでもあろう。

豊実:夫婦で営んでいる養蚕農家だろうと思いました。今年の桑の葉も消費してなくなり、手間暇かけた蚕が無事育ってくれて感謝。