あひる:美しいばらに顔を近付けたら、不意に虻が飛び出した、キャッと言いたくなるような臨場感は「響きをたて」の措辞によるのだと思います。花虻は刺さないそうですが蜂に似ているので、思わずのけぞったかも知れません。

うつぎ:まるで虻がこの薔薇は誰にもわたさないと訴えてきているようです。自分に羽音をたてて来る虻であっても、いとけなきものの生命に対する慈愛に満ちた目を感じる句です。

素秀:薔薇の花を見ていたら花の中から虻が飛び出してきた。響きを立てて、は虻との距離がかなり近かったのでしょう。

むべ:「ばら」は初夏、「虻」は三春の季語ですが、ここではばらをひらがなにしているので虻が主ととりました。「響きをたてゝ我にとぶ」が面白いですね。きっと作者の顔に向かって飛んできて驚いたのではないでしょうか。音をたてゝではなく、響きをたてゝという措辞がさすがだと思いました。生き生きと虻が活動している様子が目に浮かびます。

せいじ:虻が春の季語。上五は「花虻の」としてもよさそうであるが、「ばらの虻」とすることによって、場面がより具体的になるのだと思った。虻がばらの用心棒のようにも見えるし、虻がばらを独占しようとしているようにも読める。客観写生は読む人の想像力を刺激し、人為を超えて人に何かを感じさせるようである。

豊実:薔薇の花を覗きこんだところ、虻が飛び出し自分に向かってきたのでしょう。薔薇をひらがなにして虻を主役として立てているように思います。