うつぎ:インカの国では創造神、太陽と雷光が常に最高の権威を持っていたと書かれています。夜の稲妻、神の顕れに恐れおののいているのか、有り難く享受しようとしているのか解りませんが闇の中での祈りを感じさせます。

むべ:「稲妻」が秋の季語。海に近い首都リマではめったに雷は発生しないようですが、山岳地帯ではインカの民、ケチュア族が太陽神とともに雷神をも祀ってきたそうです。きっと落雷による人身事故もあったことでしょう。灯り(地方電化はまだまだという時代?)を消して息をひそめてやりすごす、民の祈り心も感じる句です。

素秀:雷にへそを隠す、みたいな事なのでしょうか。稲妻に灯を消して祈る風習があるのでしょうか。

あひる:アンデス地方に根強く残った自然崇拝の信仰に、素十さんが触れた際の俳句かと思います。時代がどんどん変わる世界の中で、時間が止まったかのようです。雷の轟きがインカの民の家々に被さってくるようです。

せいじ:稲妻が秋の季語。インカでは雷や稲妻は天の神の姿の一つとされていたようである。この句の「インカの民」は先住民のことであろう。神の怒りを避けるために灯も灯さず身をひそめる。先祖のならわしを今も継承していることに作者は何かを感じたのではないだろうか。

豊実:インカ帝国では稲妻を天の神の姿として信仰していたようです。稲妻の夜に、ペルーの人たちが街の灯を消して天を拝んでいたのではないでしょうか。