うつぎ:二つの床机に焦点が絞られた句です。二つの床机にそよ風が吹いている。芭蕉と去来が坐った二つかなと思わせます。吟行で今も二つ置かれている床机に座りました。作句に必死で芭蕉、去来に思いが及ばず素十さんのこの句で気付かされました。

素秀:落柿舎吟行を思い出します。あの庭なら何処に床几を置いてもほのぼの出来る気がします。まして優しい春の風のなかなら尚更です。

あひる:落柿舎の庭は、人をかしこまらせる端整で広々とした庭ではなく、さあお座りなさい…と人を招くようなおおらかで優しい庭だと思います。人が訪れにくい冬が終わり、二つの床几はまるで人を待っているようです。

せいじ:のどかで穏やかな春の風が吹く落柿舎の茶庭に、床几が二つ置かれている。見たままの景だと思うが、「落柿舎に」ではなく「落柿舎の」となっているから、「落柿舎の二つの床几」は、一気に読んで、芭蕉と去来を指し示しているに違いない。偉大な先達に敬意を表した挨拶句ではないかと思う。

豊実:落柿舎に床几があるだけでも絵になりますね。それも二つも。素十さんはその一つに座り、もう一つには誰も座ってない情景を想像しました。誰かのことを思っているように。