うつぎ:か行の響きは鋭いです。きくきくきくは空を引き裂き光が折れながら走っていく稲光にぴったりのオノマトペだと納得です。頭から先まではっきりした長さだったのでしょう。

素秀:雷は落ちると怖いですが見るだけなら美しくも感じられます。稲光と言う事で音よりも視覚を重視したようです。折れ線のように伸びる様はきくきくの形に見えるなあと思えます。

あひる:幼子がクレヨンを持って画用紙に稲光の絵を描いているようです。雷は地面に落ちますから稲光も長いのです。作者はクレヨンではなく言葉を遣って、ペンを持って句帳に「きくきくきく」と稲光を描いています。「ぎざぎざ」という他人が遣う色遣いではなく、自分の色に仕上げたのでしょう。

せいじ:稲光が秋の季語。落雷は瞬間の出来事であるが、稲光は残像として脳裏に焼き付く。「きくきくきく」がスローモーな印象を与えるのはそのためであろう。折れ曲がりを観察できる時間があったことを「長かりし」と表現したのではなかろうか。稲光が消えたころ雷鳴がとどろいた。光ってから鳴るまでの時間も思いのほか長かったのかもしれない。

豊実:稲光の形をぎざぎざでもなく、かくかくでもなく、きくきくきくときくを三回繰り返して表現したところがおもしろいです。