素秀:晩春の季語。本山の鐘は何時のものでしょう。苗代の頃の寒戻りだとしても夕方かなあと思えます。そろそろ仕事も終わる夕暮れに鐘の音を聞いて腰をあげるのかと。

うつぎ:寺を訪ねた時正午の鐘をつき始めていた。苗代にいる人達にもうお昼になりましたよと知らせる鐘だと説明を受けたことがあります。この句とぴったり重なりました。寺は仏事ばかりでなく福祉や文化など村人に寄添う役目も担っている。

あひる:お寺の鐘は時刻を知らせる他、集会や行事を知らせることもあるようです。苗代寒の頃に何か行事があったのかも知れません。少し肌寒い中で、鐘を撞いたのは修行僧でしょうか。鐘の音が、重々しくも温かい音色で家々や苗代の上を響いていく様子を思いました。

豊実:春になり、苗代の苗が育ってきたが今日は冷え込んだ。本山の鐘が響き、今年の稲の豊作を願う気持ちを感じる。

せいじ:苗代寒が春の季語。村を統べる大寺の晩鐘が鳴っている。鐘は定刻につくのだろう。苗代を作るこの季節はときにまだ寒い。晩鐘を聞きながら、今日は寒かったなあと一日をふりかえる。自然と共に生きる農村の日々の営みを思う。ミレーの「晩鐘」の日本版のような趣である。