うつぎ:渓流沿いの林でよく聞きます。うるさい鳴き声ではないが結構賑やかです。姿は見えない。声を合わせて鳴き継いでいく蝉を感覚的に二つ三つづつと捉えられ松林の合唱を楽しんでいるようです。

せいじ:松蝉が晩春の季語。夏の季語とするものもあるようだ。春蝉の別称で、松林に棲み、四月ごろから六月ごろまでギーギーと鳴くらしい。私は残念ながら聞いたことがない。蝉の数を数えたわけでもなかろうが、声の調子から、独唱でも大合唱でもなく、二重唱または三重唱のようであった。それが松林のあちこちから、フーガのように、わずかの時間差をもって聞こえてきたのではなかろうか。

あひる:松蝉は晩春から初夏にかけて鳴くようですが、聞いたことはありません。生き物を俳句に詠む時、数え方に多少気を遣いますが、ここでは二匹三匹と言わずに、二つ三つと表現しています。松蝉の姿ではなく声に意識を向けて数えているからかも知れません。大合唱ではなく、少しづつ声がそろっていく様子を楽しんでいるようです。

素秀:ばらばらに鳴いていた松蝉が次第に声の調子を合わせていくようです。合唱に参加するように鳴き声も増えていきます。

むべ:「松蝉」は初夏の季語。本州では4月下旬くらいから鳴き始めるそうです。松蝉の松は松林に生息しているから、別名の春蝉は他の種に先駆けて活動開始するから、とのこと。YouTubeで鳴き声を確認しましたが、あまり聞き覚えがなく……なじみのある油蝉やミンミン蝉に比べると、低音で落ち着いた感じの鳴き声でした。数匹がタイミングを合わせるかのように鳴いている様子が「鳴き揃ふ」という一語でわかります。作者は林の中にいたけれども、もしかしたら松蝉の姿は見えなかったかもしれません。自然界のセッションは即興のジャズのようにその時その場だけ、二度と同じ演奏(共鳴)は聞くことができないのでしょう。

豊実:松蝉とは春蝉のことですね。私も六甲の森林植物園で聞いたことがあります。林の中で結構響いて聞こえます。二つ三つづつ鳴き揃ふなので、松林のあちらこちらから、結構たくさん聞こえているのでしょう。