添削と推敲

やまだみのる

作句の壺シリーズ

随分むかしの作品ですが、添削のことを説明するのに丁度適当な句があるので紹介しましょう。

原句> 花筏早瀬の波に躍りゆく

花筏というのは桜の落花があたかも筏のように固まって川などを流れていくものを言います。

よく見かける情景ですから掲句の情景説明は不要ですね。この作品を小路紫峡先生は次のように添削してくださいました。

紫峡先生の添削> 花筏早瀬の波にさしかかり

原句の情景は時間が流れてしまいます。

俳句は瞬間の驚きを写生するのが大切なんです。添削句では「いままさに・・・」という躍動感が感じられるでしょう。そしてやがて躍り去って行く原句の情景も十分連想できます。この違いわかりますよね。この句を紫峡先生の先生であった、今は亡き阿波野青畝先生の選に提出しました。青畝先生はさらに次のように添削されたのです。

青畝先生の添削> 花筏今や早瀬にさしかかり

そうです。早瀬といえば当然波は連想できます。

「今や」という言葉でより鮮明に瞬間写生になりました。この作品が良いとかどうとかということではありません。俳句はこういう風に作る、このように推敲(添削)するんだという見本として実にわかりやすい例だと思ったので書いてみました。

これが切れ味の良い、余韻のある作品をつくるコツです。でも、そんなことを考えながら作れるものではありません。吟行で作るときはとにかく無心で作句し、後で推敲すればよいのです。 推敲の仕方についてはまたの機会に書きますが、添削を受けた作品について、どこをどう直されたかをチェックすることで、やがて自分で推敲する力となって行くのです。

(2000年06月19日)

 
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