四季別俳句集・夏の句

やまだみのる

春の句 夏の句 秋の句 冬の句

朴咲くと青天井を指さしぬ

杉の秀の雫と落つる蛍あり

鳩時計月下美人に鳴きにけり

子燕の嘴は喇叭のごとひらく

ブランデーグラスはレンズ水中花

大玻璃に一太刀くれし雷火かな

バス涼しスカイラインをまつしぐら

バラ剪りしときの手傷と覚えけり

雷鳴に度肝抜かるる厠かな

ひた走るドミノ倒しの音涼し

 夏の句 Vol.1

牡丹百雨気におびたる憂ひかな

といふ間に蜥蝪瓦礫に紛れけり

鎌振れば蟷螂指揮者めきにけり

移り気の虻落ち着かず花ポピー

噴水の乱れて鳩を翔たせけり

読みすすむ聖書日課や薔薇の雨

水輪蹴る推進力や水馬

大粒の雨に四散す水馬

メーデーの空へ向けたるスピーカー

立ち仰ぐ嶮磴百段青あらし

 夏の句 Vol.2

柳絮とぶ水上バスは青天井

フェリーの灯はや外海となり涼し

孑孑の動きはエアロビクスかな

蟇の声夕闇池を包みけり

端居して一と雨ほしき夕べかな

寧かれと供花を挿したる登山道

蟻の列右往左往や山雨急

汐騒にまどろみゐたり籐寝椅子

地団太や蝿一匹に嬲られて

ケビン出て灘の西日をまともにす

 夏の句 Vol.3

ペンギンの表敬並び涼しさよ

雁行に似たる歩板や花菖蒲

雲怒涛なして梅天寧からず

雷火一閃篠突く雨となりにけり

水ゆれて読めぬネオンや船料理

手花火のこれからといふ玉落つる

鳰をかし一つ潜けばわれもわれも

風意地悪噴水我を洗礼す

一掬の風鷺草の動きけり

屹立す島のホテルや明易し

 夏の句 Vol.4

遣り水の玉とぞまろぶ苔涼し

一穢なき蒼天滝を落としけり

登山バス凸凹道に尻振りぬ

嶮競ふ水平線の雲の峰

一刷の風に凹みぬ真葛原

キャンプの火煽るは魑魅か魍魎か

足弱の杖となりもし避暑散歩

滝の巌一刀彫りのひび走る

銀婚の妻へ感謝の薔薇贈る

百丈の巌も裂けよと滝激つ

 夏の句 Vol.6

緑陰の棋士は王手をさしにけり

黙祷の一分間や蝉時雨

杉の秀の雫と落つる蛍あり

早鐘を打つは蜥蜴の喉袋

あめんぼと雨との水輪混乱す

蝶涼しグリンシャワーの樹間縫ふ

百合清楚ソロモンの雅歌思ひけり

売らるるときく豪邸の茂りかな

不意打ちの波舟虫を攫ひけり

曝しつつ初心に返る一書あり

 夏の句 Vol.7

大樹海涼しき月を上げにけり

震災に拾ひしいのち更衣

鏡とすその為人墓洗ふ

一門の墓所なる茂りかな

託されし一語を誓ふ展墓かな

一詩碑によき木陰なす大樹かな

右左樹齢を競ふ夏木立

下闇や顔に触れしは何の蔓

碑の師父に語りかけもし草を引く

蓮の池立錐の余地なかりけり

 夏の句 Vol.8

大胆に高足を組むサングラス

千万の影狂ほしき誘蛾灯

薔薇薫る黄色の屯緋の屯

フェニックス涼し翼下に遊子われ

西日中しかめつ面の羅漢かな

身じろぐと見るや一擲蟻地獄

山門の一歩に仰ぐ青嶺かな

パジャマ着て月下美人の開く待つ

落つる日にシルエットなるヨットかな

観覧車いま天辺や雲の峰

 夏の句 Vol.9

一湾の夕焼に染まるロビーかな

漁り火の星と散らばる夜涼かな

灰皿と見しは貝がら卓涼し

異な草と抜きて吾妹に叱らるる

帆を揚ぐる二の腕太き日焼けかな

妻の愚痴馬耳東風よビール干す

動揺を隠せぬ扇使ひかな

渾身の反身筍掘りにけり

星涼し洋上三百六十度

池の鯉涼しく向きを変へにけり

 夏の句 Vol.10
 
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