四季別俳句集・冬の句

やまだみのる

春の句 夏の句 秋の句 冬の句

猫の目のごとくに冬日ひろがりぬ

五指固く組みて祈れば悴まず

道化師の長き睫に風花す

主婦業に定年はなし冬支度

猫舌にのせし湯豆腐七転す

雲切れて電光石火冬日射す

三日月のひつかかりたる枯木かな

地団駄の靴がくずせし霜柱

照れば躁昃れば鬱白障子

切岸に仙人髭の氷柱かな

 冬の句 Vol.1

日溜りに干すトロ箱に冬の蝿

人垣を爪立ちのぞく年の市

フレームのBGMはハワイアン

訥弁の彼が焚火の火守役

枯芝のホースほつたらかされけり

おでん酒企業戦士の彼悼む

職退いて神学校へ入学す

十字架の血潮説かるる息白し

大空をうかがふ鋭目ぞ檻の鷲

汝は画帳吾は句帳や日向ぼこ

 冬の句 Vol.2

炉話は創造論はた進化論

金輪際寒の釣師ら不言

さきほどの雪うそのごと星明り

軒氷柱ダイアモンドの雫落つ

死後の世を論じて日向ぼこりかな

碧天に鉾を立てたる枯木かな

鴨突進恋の縺れと見たりけり

雪吊の縄の緊張感を見よ

逢瀬なる二人に卓の冬日燦

根釣人テトラポットを天狗とび

 冬の句 Vol.3

一塊の雲のからみし枯木かな

亀甲にひび割れて沼涸れなんと

日時計を囲みて日向ぼこりかな

存問の声をかけあふ息白し

日だまりのベンチに吾と冬の蝿

針山の如つんつんと物芽出づ

白息の一と声に競り落しけり

碧落に孤高の鳶や冬晴るる

枯山を登るは雲の影法師

魚を糶る呪文のごとく白き息

 冬の句 Vol.4

わたししか読めぬ句帳の悴む字

磐石に喝と一文字竜の玉

白息に誦す鎮魂の一碑あり

演説士握り拳をあてて咳く

フレームの中にぺちやくちや立ち話

逆縁の恨み辛みを炉に語る

冬晴の峰にひよろひよろ鳶の笛

出庫する電車に霜の線路かな

真っ赤なる頬の子並ぶ炬燵かな

工事場の朝の始まる焚火かな

 冬の句 Vol.5

念力の箍緩みたる嚏かな

兎見斯う見冬麗かに風見鶏

スケジュール目白押しなり春隣

土不踏さすりて老の日向ぼこ

玻璃窓をノックしてをる冬芽かな

蝿生る仁王の足の泣きどころ

刻打つや否やの退社日短

碧天に千手ひろげし枯木かな

寒紅の婦警鋭き目のくばり

改札は店のおばさん枯野駅

 冬の句 Vol.6

風花の乱心見よや山襖

時計台聖夜の針を重ねけり

室咲と窓際族に射す日かな

咳が咳よぶ通勤の電車かな

漣をさ走りて鴨翔ちにけり

砲列のカメラに潜く鴨遠し

墳寒し磊磊山と積みしのみ

抽んでて韋駄天走るラガーかな

心無きナイフ傷見る冬木かな

岬鼻のガードレールに大根干す

 冬の句 Vol.7

炉の埃の天井遊泳して落ちず

土に帰す花ひひらぎのこぼれかな

冬菜畑震禍の更地らしきかな

枯葦の揺るるは鴨の恋路かな

子供らはテレビの虜炉に寄らず

息を継ぐ間もあらばこそ鳰潜く

山を守る苦労話や薬喰

海苔ひびの方千畳に朝日射す

荒磯波騒ぐ北窓塞ぎけり

空谷の奈落へ朴の落葉かな

 冬の句 Vol.8

羽づくろひ余念なき鳩神迎え

小競り合ひしてをる鳩や神の留守

舌頭に千転せむと懐手

冬日しりぞきしベンチに我孤独

須磨の句碑初松籟を聞かんとす

吉兆の鯛福耳に触れにけり

双六の出世街道まっしぐら

膝撫ぜて満を待す手や歌がるた

初便り一筆箋に二三行

恵方へと傾く須磨の磯馴松

 冬の句 Vol.9

十田久の一筆富士や床の春

金屏に百寿ことほぐ墨書かな

巫女二人比翼の舞や初神楽

パチンコ屋不況知らずよ初戎

七種や長命の師を語り草

火花とぶ視線と視線うたがるた

蒼天に雲一刷けの淑気かな

食積を躊躇してをる箸のさき

福笹を提げて立喰そばすする

売れ筋は団地サイズの福の笹

 冬の句 Vol.10
 

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