澄子:平明で最小限の言葉しか使われていません。卑近な庭の景から天上の星々へ………… 命、宇宙を感じる美しい御句と感嘆致しました。儚い命と永遠 天と地…………合唱は合掌……勝手ながらそんなことも想いました。

むべ:助詞の用い方が上手いなぁと思います。「満点の星」は天を「庭の虫」は地を想起させ、「星へ」という措辞は地から天へ向かって空間の広がりを感じさせます。そして「合唱」という措辞から、おそらく何種類かの虫…蟋蟀、松虫、鈴虫などの混声合唱なのだろうと推測しました。至福の秋の夜を過ごしている作者の満足感が伝わってきます。

かえる:雲ひとつない、空いっぱいに星の瞬く美しい夜なのでしょうね。虫たちが競い合うように鳴く様を合唱と表現されているのが素敵です。都会の夜は明るいので、星もぼんやりしてしまいます。作者は田舎のお宿で夜空を眺めているのかもしれません。以前に訪れた羅臼では、見たことがないほどたくさんの星が輝き、まさに海猫が合唱していました。それを思い出し、生き物の声以外に音のない、暗い夜に、静かに感じ入っている様に共感してしまいました。

康子:「満天の星へ」の「へ」の効果により、空に向かって虫の声が広がっている様子が伝わります。見上げれば満天の星、BGMのような虫の声。そして「庭」によりさらに幸せ感が伝わります。秋の夜長を楽しんでいる作者が浮かびます。写生句としての効果や余韻を感じました。

えいいち:虫たちが鳴きはじめ空気も澄み、夜空には小さな星々がきらきらと輝いています。虫たちの声は調べとなって天に上り星々の間に吸い込まれていくように流れています。そんな秋の夜長を天の星と地の虫たちと満喫している作者の姿が浮かびました。素敵な句だと思いました。